日本文学100年の名作 第1巻 1914-1923 夢見る部屋 (新潮文庫)

制作 : 池内紀  松田哲夫  川本三郎 
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (490ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101274324

作品紹介・あらすじ

第一次世界大戦が勃発し、関東大震災が発生――。激動の10年間に何が書かれていたのか。荒畑寒村「父親」 森鴎外「寒山拾得」 佐藤春夫「指紋」 谷崎潤一郎「小さな王国」 宮地嘉六「ある職工の手記」 志賀直哉「真鶴」 芥川龍之介「妙な話」 内田百閒「件」 長谷川如是閑「象やの粂さん」 宇野浩二「夢見る部屋」 稲垣足穂「黄漠奇聞」 江戸川乱歩「二銭銅貨」

感想・レビュー・書評

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  • どの短中編も明るくて面白かった。1914-1923年ごろ、大正時代の頃の世間の様子や文学の流行りを代表的な作家の作品で紹介しているような趣があった。このあと続くシリーズも読んでいきたい。表題作の夢見る部屋が特に面白くて、現代にも通じるものがあった。

  • 父親 / 荒畑寒村 著
    寒山拾得 / 森鷗外 著
    指紋 / 佐藤春夫 著
    小さな王国 / 谷崎潤一郎 著
    ある職工の手記 / 宮地嘉六 著
    妙な話 / 芥川龍之介 著
    件 / 内田百閒 著
    象やの粂さん / 長谷川如是閑 著
    夢見る部屋 / 宇野浩二 著
    黄漠奇聞 / 稲垣足穂 著
    二銭銅貨 / 江戸川乱歩 著

    著者:荒畑寒村(1887-1981、横浜市、労働運動家)、森鷗外(1862-1922、島根県津和野町、小説家)、佐藤春夫(1892-1964、新宮市、詩人)、谷崎潤一郎(1886-1965、中央区、小説家)、宮地嘉六(1884-1958、佐賀市、小説家)、芥川龍之介(1897-1927、中央区、小説家)、内田百閒(1889-1971、岡山市中区、小説家)、長谷川如是閑(1876-1969、江東区、ジャーナリスト)、宇野浩二(1891-1961、福岡市中央区、小説家)、稲垣足穂(1900-1977、大阪市、小説家)、江戸川乱歩(1894-1965、名張市、小説家)
    編者:池内紀(1940-、姫路市、ドイツ文学者)、川本三郎(1944-、東京、評論家)、松田哲夫(1947-、東京、編集者)

  • ​池内紀・川本三郎・松田哲夫さん編集のセレクト。みなさま1940年代生まれ。その年代が微妙に影響していて、同年代わたしの好みの短編が集められていることになるのはもっともだ。
    ひとつひとつ、うなずきながら読んだ。

    その中でも一番印象的なのは、やはり宇野浩二『夢見る部屋』

    書き手のこだわりや好みが変わっていて、ちょっとめんどくさい性格。と読めるのだが、誰にでも思い当たるところのある心理でもあるなあと思う。

    売れない作家が家を一軒借り、自分だけの部屋を持つのだが、それを誰にも見せたくないけれども、妻もいれば、お手伝いさんもいるのでおちおちできない。

    すごく見せたくない事にこだわっているのだけれど、最初は人に見せられない事情があるのでもないよう。「閉じこもり」的な自分空間の夢想らしい。

    ところが、しばらくするとこんどは外部にひと部屋を借りる算段をする。
    短編にこんな文章がある。

    ​「この世で何が一番好き」かと聞かれれば私は「山と女と本」と答える、と。​

    あらら、本音はそこか?ではそこで逢引きするのね。と思いきやその借りた部屋に女性を招くのでもないのだ。
    山の絵をかざり、本棚に好きな本を並べ、お茶を自分で入れ、万年床で原稿を書いたり、本を読んだりするだけで悦に入っている。狂ったように楽しんでいる。

    自分の好きなことを、心行くまでしてみたい。それが出来れば苦労はないよ。
    人間だれしも持っている孤独癖や現代の人間心理はそういう傾向になりそうで気になるなあ、という展開がおもしろい。

  • p.384 宇野浩二「夢見る部屋」
    どんな俗な、どんな下等な、ものでも、それが音楽と名のつく限り、世に音楽ほど人の心を誘うものはない。

  • 個人的に宮地嘉六「ある職工の手記」がすごく面白かった。佐賀出身なので、大正時代の佐賀ってこうだったんだとか、武雄から長崎まで歩くとかすごいなあとか、小さなことに驚きがあり、もっと宮地さんの短編が読みたい。

  • 佐藤春夫、谷崎、江戸川乱歩あたりがよかった。二銭銅貨はどこかカラスの親指を思わせるどんでん返し。あと、稲垣足穂を初めて読んだが、この独特な世界観はすごいなぁ。ギリシャ牧野もそうだが、大正時代ってこういった幻想風味の作品がけっこうあるんだよなぁ

  • 新潮文庫100年を記念して出されたシリーズ。100年を10年ごとに分け、その年に書かれた作品を収録したアンソロジー。第1巻は1914年〜1923年。収録作家は荒畑寒村、森鴎外、佐藤春夫、谷崎潤一郎、宮地嘉六、芥川龍之介、内田百閒、長谷川如是閑、宇野浩二、稲垣足穂、江戸川乱歩。
    代表作と呼ばれるものが収録されている訳でなく、そのためもあって初めて読む作品が多かったです。それどころか初めて読む作家も。それがこのアンソロジーの魅力にもなるでしょう。活字も大きめで組まれているので、全体的に贅沢な雰囲気が漂います。
    10年という時代を切り取っているので、時代の持つ空気感も収められています。鬱々とした自分語りが多く目に付くのは、そういうものなのでしょうか。しかしそんな鬱々としたものも読まされてしまうのです。これが小説の持つ力なのでしょうか。
    そんな中、足穂の「黄漠奇聞」のキラキラと煌びやかな幻想世界が印象に残りました。これもきっと時代の空気なのでしょう。
    また長谷川如是閑の「象やの粂さん」は物寂しさとカラッとした明るさが同居した感じがあり、悪夢のようなのに思わず笑ってしまうような内田百閒の「件」、独裁者的才能を持つ子どもの怖さが静かに迫る谷崎潤一郎の「小さな王国」、久々に読み返してその面白さを改めて感じた乱歩の「二銭銅貨」が印象的でした。

  • 新潮文庫100年出版企画ということで、1年につき1作品を選んで100作を全10巻でまとめるよ!という趣旨のアンソロジーです。有名なのもあるし、聞いたことない作家のもあるし、有名な作家だけどあまり知られてないのもあるし…と色々つまってます。
    まず、言いたいのは字が大きい。最近のは大きくて読みやすいらしいですが…なんか損した気分にもなるような…
    谷崎潤一郎の「小さな王国」は面白かったですが、どっかで読んだような記憶も。表題作「夢見る部屋」は、名前こそほのぼのしてますが、正直この男はちょっとはっきりいってクズでは…いや、ふとんでゴロゴロしながら栗饅頭食べて本読んで暮らしたい、というあたりにはすごく共感しましたけど…。まあ、100年近く前の話なんで…

  • 明治、大正、昭和の香り。有名な作家でも読んだことがない、あるいは遠い若い頃に読んだもののあまり記憶にないという作家とその作品。そのような作家と作品に出会うよいきっかけになった。

  • 大正時代の小説が楽しめる.「寒山拾得」は既読だったが、他の10本は始めてだ.谷崎の「小さな王国」では、教師の貝島が沼倉の動きに取り込まれる.百間の「件」は幻想的で独特の雰囲気が楽しめる.乱歩の「二銭銅貨」は推理過程の描写が素晴らしい.なかなか読めないものばかりなので、第2巻以降を期待する.

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