さよなら渓谷 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (245ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101287546

感想・レビュー・書評

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  • 幼児殺害事件が主題と思いきや、その隣家に住む男女の話が主題となり物語が進行して行く。
    自らが犯した過去の過ちに、ずっと苛まれ続ける尾崎俊介。
    渓谷のある街で、揺れ続ける被害者と加害者の関係性。
    人間の深層心理の「負」の側面を描く吉田修一の世界観がとても現れている作品だったと思います。

  • 積ん読チャレンジ(〜'17/06/11) 23/56
    ’16/11/17 了

    真木よう子主演で映画化され、映画を観る直前に購入した作品。
    映画も胸に傷を残す作品だったが、小説も一口で飲み込むことの出来ないような作品。

    都内からほど近い渓谷で起こった殺人事件。
    母親による息子殺し、という導入からどんなストーリーが紡がれていくのかと思ったら、いつの間にか視点はその家族と隣の部屋に住んでいた若い男女に向けられる。
    知らぬ間に過去にある事件を起こした男と、そんな男と同居している女性の過去と今を紐解き、繋いでいく物語へと変容を来していく。

    そのすり替えの巧みさと、胸に一物を残す独特の読後感。
    ページ数も少なく、読みやすい作品。

    ------------------
    気に入った表現、気になった単語


    「許して欲しいなら、死んでよ」


    「非難もできない、礼も言えない。
    たぶん、それが自分たちの関係なのだと、改めて思い知らされる。」(P217〜218)

    【狷介(けんかい)】
    [名・形動]頑固で自分の信じるところを固く守り、他人に心を開こうとしないこと。また、そのさま。片意地。「狷介な人」「狷介不羈(ふき)」

  • こういうこともありか、と。
    自分が幸せになると、相手を許してしまうことになる。だから、幸せにはならない。
    最初に出てきた子殺しの女はこの二人とは全くの無関係だったのが残念。
    かな子が被害者だということはだいぶ前から想像できたが、この子殺しの女も事件に関係あるのかと思っていたのに。

  • 引き込まれてすぐに読み終えた。2人の関係を最初に知るとありえないと思ったけど、読むうちにありえるだろうと思わされた。

  • 読み終わって、しんどかった。

    許されない、逃れられない過去。
    逃れられない者同士、幸せになることを恐れて。

  • きっかけは隣家で起こった幼児殺人事件だった。その偶然が、どこにでもいそうな若夫婦が抱えるとてつもない秘密を暴き出す。取材に訪れた記者が探り当てた、15年前の“ある事件”。長い歳月を経て、“被害者”と“加害者”を結びつけた残酷すぎる真実とは――。『悪人』を超える純度で、人の心に潜む「業」に迫った長編小説。


    なかなか先が読めない流れで、あった。どのような生き方をするかといった内容の本だった。悲しい過去を持った者達が、どのように生きていくか非常に悲しい内容であった。暗くなる本である。

  • あらすじを読んで重そうな内容だと覚悟を決めて読み始めた。
    話の展開、登場人物の関係性などが思っていた通り重く、息苦しく感じた。

    かつて起きた集団強姦事件の被害者と加害者が現在一緒に暮らしている意味は何なのか。
    強姦に遭った被害者がそのようなことをする理由は何なのか。
    それに対しての加害者の罪の意識はどうなのか。
    被害者はその後に出会う人たちがもっと違った価値観や考え方を持っている人々だったならこのような人生を選ばずにすんだのだろうなと思うとともに、たとえそのような人々と出会ったとしてもまた違った苦しみがあるのではないかとも考えた。
    結局被害に遭った時点で彼女の人生は狂わされてしまっているし、家を出て行くことが加害者への赦しということであっても、赦しというよりは清算せざるを得なかっただけのように感じた。

  • 映画「悪人」が好きだと言ったらおすすめされた作品。情景描写が豊かで、真夏のうだるような暑さと、気付いたら理性では説明できないもので動かされていく様がとてもリアル。何が正義かとかは関係ない。人の心なんて理性では説明できない。「こういうことってあるだろうな」と思わされて、ぐいぐい引き込まれた。

  • おもしろいねぇ。読み終わったあと、二、三十分は引っ張られるぐらいの重さ。今、その状態。たぶんあと、十五分ぐらいは引っ張られる。

    この人の隙間をついてくる感じ、ほんまにすごいよね。

  • 猥雑な中にある、ごく一瞬光るもの。
    でもそれは、目を凝らした瞬間にはもう消えている。
    そうするほかなく、どうしようもなく、どうにもならないふたりの、頑なまでの生と性。
    泥沼を這いまわるように生きて、一瞬の何かに突き動かされて、積み上げたものをあっけなく手放すのも、泥沼にもどるのも。。。どちらも人生。
    モヤモヤしたし、ざわざわした。

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著者プロフィール

1968年長崎県生まれ。法政大学経営学部卒業。1997年『最後の息子』で「文學界新人賞」を受賞し、デビュー。2002年『パーク・ライフ』で「芥川賞」を受賞。07年『悪人』で「毎日出版文化賞」、10年『横道世之介』で「柴田錬三郎」、19年『国宝』で「芸術選奨文部科学大臣賞」「中央公論文芸賞」を受賞する。その他著書に、『パレード』『悪人』『さよなら渓谷』『路』『怒り』『森は知っている』『太陽は動かない』『湖の女たち』等がある。

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