さよなら渓谷 (新潮文庫)

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著者 : 吉田修一
  • 新潮社 (2010年11月1日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (245ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101287546

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さよなら渓谷 (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

  • 薬丸岳さんの【死命】を読んだ後、この本を読んだからでしょうが…
    しんどかった…

    大学時代レイプ事件の加害者だった男性と被害者だった女性。
    贖罪の気持ちを抱き続ける男性。
    忘れたい、忘れようとする被害者の女性。
    気持ちはどこまでもすれ違っているのに…

  • 前作の「悪人」は、読んだあとでいろいろ考えてしまう作品でしたが読み応えはあった。

    今回は東北の女児殺人事件をモチーフにはされているんですが、ストーリーはそれが本題ではない。

    記者の渡辺は自分の息子を殺した母親の取材のために何日も市営団地の前に張り込んでいる。
    ターゲットである立花里美の隣家に住む夫婦とも顔見知りになったが、ふとしたきっかけでその夫婦の秘密を知ることになり・・・

    仕事仲間の須田が偶然現場で尾崎を見つけて声をかけているところを目にしたことから渡辺は尾崎夫婦の秘密を知ってしまう。

    隣に住む尾崎夫婦は実は夫婦ではなく、ある事件の加害者と被害者。
    須田も実は事件の加害者の一人。

    15年前に起きたその事件に加担した加害者のうち人生が変わった者もいれば、さほどマイナスになった者もいないという、人の運の不公平が出ていて何ともやりきれない気持ちになる。

    被害者だった尾崎の妻は事件がきっかけで両親ともうまくいかず、人生をやり直す意味で結婚にふみきろうとしてもやはり事件が原因で結婚直前までいった彼と別れることになる。
    やっとその傷も癒えて結婚しても今度は夫から事件のことを責められてDVを受けて入院したりと転落の人生の一途を辿っていて・・・

    一方の尾崎は社会的な制裁を受けたけれども、先輩に引き抜かれて一流の会社に入り、会社でもそのことを非難されることなく着実に出世の階段を登っていた。

    罪を犯した自分がこういう人生を送ってもいいのかと自問自答しながら被害者に対して後ろめたい思いで、彼女が今幸せにしていればいいと都合のいいことを思いながら日々を送っていた尾崎。
    そんな彼が、あるとき偶然に被害者だった女性に出会う。

    尾崎が想像していたよりも遥かに悲惨な人生を送ってきた彼女をみて、『自分は幸せになってはいけない。彼女のそばにいなければいけない』と思う尾崎。

    尾崎は彼女がイヤがるにも関わらずそばにいるようになり、いつしか二人は「(自分は)幸せになってはいけない」という気持ちで結ばれ、一緒に暮らすように・・・

    読んでて切なくなった。
    記者の渡辺が二人にかけたい言葉を私も言いたいところですが、それを言ってしまうと何だか二人の絆が別のものになってしまうようで・・・

    彼女が尾崎と一緒にいて幸せだと感じてしまうことは、尾崎を赦すことになり、そしてもう尾崎を縛り付けておくものは何もなくなってしまう。

    ラストで彼女は一つの選択をするんですが、それは尾崎との関係を大切に思って行動したんじゃないかなと思います。

    読了感はまあ悪くないです。

  • 胸にがつんときました。

    「私は、私を許してくれる人が欲しかった。」
    「私たちは幸せになろうと思って、一緒にいるんじゃない」

    呪わしい過去が引き合わせた男女の間に生まれたものは一体何?
    俊介のもとを去った「かなこ」の想い。夏美の選択に切ないとも儚いとも悲しいともいえないなんとも苦しい気持ちになります。

    「……あの事件を起こさなかった人生と、『かなこ』さんと出会えた人生と、どちらかを選べるなら、あなたはどっちを選びますか?」

    胸がぎゅっとつぶされるような問い。

    ぬらぬらといた夏の暑さの描写が作品の狂おしさに拍車をかけています。
    それに対して河原での最後の場面。静かに切り取られた感じ、俊介の静かな決意が印象に残りました。

    どうかどうか、幸せになってほしいです。

  • 汗がとめどなく流れる夏、隣に住む立花里美は4才になる息子が失踪したと届けを出した。風光明媚な渓谷に打ち捨てられた萌君の遺体。マスコミはセンセーショナルに子殺しの犯人として美里を追った。逮捕された美里は赤いワンピースを着、豊かな乳房を誇示しパトカーに乗せられていった。

    隣室に住む尾崎俊介は、契約社員として工場で働く傍ら少年野球の雇われコーチをし生計を立てている。化粧っ気は無いが色気のある妻、かなこと2人暮らしている。
    そんな中、逮捕された美里は俊介との肉体関係を供述し、かなこはそれを裏付けるような証言をする。

    俊介は大学野球で将来を嘱望される野球選手だったが、大学時代にチームメイトと共謀し女子高生を集団レイプした過去を持っていた。その後大学を退学し、伝手を頼り就職するが過去に犯した犯罪から逃れる事は出来なかった。
    たまたま今回の萌君殺害事件の取材で運転手として雇われていた須田は、俊介のチームメイトでレイプ事件の首謀者の一人であった。須田からその情報を得た雑誌記者の渡辺は、俊介の犯罪への関与への確信を深めて行く。
    渡辺は記事にすべくレイプ被害者の女性の足取りを追うが、その後の彼女の人生は幸せなものでは無く、渡辺はのうのうと生きて隣人と情事にふけっていた俊介への怒りを深めて行く。
    被害者の女性はその後失踪し足取りがつかめていない。
    俊介は殺害に関与しているのか?俊介の被害者女性は一体どこへ消えてしまったのだろうか?


    読み始めから超ブルーで、「ああ、後味悪そうな話じゃのう・・・」と意気消沈して読んでいました。電車に乗る前に本が読み終わってしまったので、古本屋で時間ぎりぎりで手に取ったこの本、さよなら渓谷という爽やか目な題名だったので安心して買ったのにですよ、なんですかこのどんよりした雰囲気は。超憤慨!!と、思っていましたらばそんな事有りませんでした。
    最後まで読んだ時の悲しみと爽やかさと希望が同居する心内には渓谷の風が吹き抜けます。

    ちなみに僕が一番嫌いな犯罪の一つに強姦がございます。どういう言い訳をしても絶対に許してやらないと心に誓っております。もしも死刑でないのであればちょん切ってしまえと心から思っております。やり過ぎ?イヤイヤそれぐらいやらんと分からんでしょう

  • あらすじを読んで本当に『横道世之介』を書いた人と同じなのかと思っていたが、読了して同じ人だと染々感じた。読み終わった後の何とも言えない虚無感が全く同じなのだ。「悪人」は映画しか見てないけど、あの作品を見た後も同じ気持ちだったのを思い出した。 物語の内容はあらすじに全て書かれており、本を読んでもそれ以外に特に何も驚くような展開は書かれていないのに、読み終わった後本を読んだ満足感はある。『横道世之介』は好きじゃなかったけど、これは面白かった。

  • むむーん・・・幼児殺害事件がメインかと思いきや・・・。
    なかなか複雑なお話であったな。。。

  • 吉田修一だもんな、やだな、どう持ってくんだろって先入観たっぷり持ちながらもやっぱり最後の一行、どうしてくれんだようという終わり方。
    苦しく悲しく悔しい物語。人には説明のつかない生活をしているなんて当たり前。それを見せないように暮らしているんだから。みんなみんな。少しでも幸せに近づけますように。誰だって幸せに手を伸ばしていいのだから。幸せになることを恐れないで。

    日本語学校バザー ¢20

  • 映画を観る前に原作を読んでおきたかったので。

    内容は映画の予告でなんとなくわかってはいたが、あまりにも残酷で救いがない。

    ただ、他の方のレビューのように、人物の心理描写や情景(特に夏の不快な描写)がありありと思い浮かび、作品にのめり込めた。

    フィクションだが、性犯罪の加害者である尾崎の『事件を世間から許されている感』はとてもリアルに感じた。
    まだまだ、これが今の日本の性犯罪への世間感だろうと思うとやりきれない。

    だからこそ、最後に微かでも夏美に光が欲しかった。

  • 映画化されて、主演の真木さんが役作りで感情移入しすぎて激ヤセしたと何かで見ました。それで興味を持って(映画は見ていませんが)小説を買った次第です。
    内容は「呪わしい過去が結んだ男女の罪と償いを通して極限の愛を問う」と背表紙には書かれています。
    その男女の関係が本来ありえるか(実在として)、と考えると、どちらとも言えない関係ですが上っ面だけでは語れない物語だと思いました。
    それぞれの罪悪感、後悔、孤独。愛とはなんだろう。
    日常生活の中でも許す、許さない、は軽いものから深刻なものまでさまざまだろう。許すのが簡単かと言うと簡単ではないし、だからと言って許さない、と言うのも結構しんどい。
    個人的にはどちらかと言えば許す方が気持ちが軽くなるし、許さないというのを継続するのは体力がいる。
    幸せの形、愛の形、人それぞれだけど、全ての人が幸せになるのは難しいから、時には自分だけのことを思ってもいいのかもしれない。

  • 一気読み!テンポ良く話が進むのでページをどんどん繰ってしまいます。


    中盤から、ちょっとづつわかる謎。そこから自分なりに予想しながらよみましたが、外れた。単純なミステリーではなく、複雑な人間ドラマ。


    『幸せになりそうだったんですよ。』

    この言葉が切なすぎて、いつまでも余韻に浸ってしまいそうです。

  • 確かに小説を読んでいるのに、気がつくと映画を観ているような感覚に苛まれる。普段の読書とは一味違う読書体験ができる作品。映画化されるらしいが、主演の女優の演技で如何様にもなってしまう作品になりそうな予感。これかなり難しいだろうなぁ〜。
    でもその演技を確かめるために、きっとまた映画も観に行ってしまうんだろうなぁ…。

  • うまかった。

    特別な期待もせずに読み始めたのですが途中からグイグイ引き込まれました。

    吉田修一は不毛な関係を描くのが本当にうまい。

    次はどの作品を読んでみようか。
    今から楽しみです。

  • 苦しく、切ない。

    俊介のしたことは許されることではない。
    実際にこんな事件が起きれば、自分が被害者でなくても恐ろしさと怒りで震えるだろう。

    でも、だ。

    「許せない」と「許してはいけない」は別物だ。
    かなこが俊介を愛していたなら、
    「許してしまう」自分を、許してあげてほしかった。

    どんな形であれ、被害者が一日も早く癒されることが一番だと思うのは、綺麗事なのか。

    幸せに、なってもいいじゃないか。

    私も渡辺と同じように、そう思った。

  • レイプ犯の大学生と、レイプされた女子高生。その後の2人の人生が思いがけず交差する。。。予想外の結末だった。なんだかしっくりこなかった。

  • 集団強姦の加害者と被害者が一緒に暮らす、というあらすじから興味を持った作品。
    幸せになりそうだったから出て行ったかなこの心情をもう少し知りたいと思った。

  • この先を読みたくないと思う。思うのに読ませる吉田修一の凄さよ…。なんなんだろうこの引力。
    発表当時、もしかしたらそれを奨励しているとして叩かれたりもしたのかな…。「私の男」を読んだときの、納得しがたい、いっそ嫌悪にも似た感情を思い出した。それでも読んでしまった。読んでしまったのだ。いやもうほんと、なんなんだろう、すごい、吉田修一。

  • 中学時代の塾の恩師に進められ読む。うーん古田氏の本かぁと思うが、読むとしっかりした文調。そうだ「怒り」を読んだときから、古田氏の評価を変えていたのだった。いつから重量感ある文体になったのでしょうかね。

    隣の家の息子さんが亡くなり、その母に容疑が、最初は関係ないと思われていた、その家の隣に住む男性が主人公。記者の目で話は語られ、その男性の過去が明らかになっていく。

    読み終わって、ふーむこの様に展開していk物語は初めてかもね。でも過去に犯罪を起こすと、何年経ってもついて回るのだなあと改めて思う。若い頃の悪ふざけが、多くの人をそして自分を傷付ける。物語の運び方とかも変わっており、一読の価値ありですね。

  • 文章は結構好きだから
    おもしくなるかなーとおもって最後まで読んだけど
    盛り上がりもなく、結末も微妙。
    人物像も全く浮かばない!

  • この人の描く男女は切ない。そして暗い。
    業と業をぶつけ合うかの様な関係。

  • 重かった。若者の集団ののりとアルコールで一生苦しんでいく加害者と被害者。身近に彼らがいた場合、自分はどう行動するのか?読者に疑問を投げかけている。こういう事件は今も後をたたない。何か啓発できないのかな?

  • 過去に囚われ一歩も動けなくなってしまった男女の物語である。
    好き嫌いがはっきりと分かれる物語のような気もする。
    正直に言えば、この手の物語はとても苦手だ。
    無意識にどこかに救いが見えないかと探してしまう。
    何でもいいのだ、俊介の中にでも、かなこの中にでも、ほんの少しの未来が見える瞬間があれば救われた気がしたと思う。
    そんな薄っぺらな感情などあっけなく潰されてしまうほど、物語は容赦がない。
    かなこが本当に望んでいるのはいったい何なのだろう?
    破滅と未来、相反するものへの渇望がかなこの中に渦巻いている気がして辛くなってくる。
    すべて壊してしまいたい。何もかも失くなってしまえばいい。
    どうせ何処へも行けないのだから。どうせ無かったことには出来ないのだから。
    諦めと祈り。
    幸せになんてなれない。どうせ私なんて…。
    かなこに一番必要だったのは、過去の自分を許してあげられる自分になること。
    そんな気がしてならない。被害者にどんな過失があろうとも、そんなものは関係ない。
    誰が何と言おうと犯罪を実行した者が悪いにきまっている。
    俊介のように「場に流された」だけだとしても、人生の中でいずれそのツケを払わなければならない、払ってほしいと思う。
    傷を癒してくれるはずの家庭すら、かなこにとっては再生の場所にはならなかった。
    狭量な父親のせいで…。
    かなこが最後にした選択が正しかったのかどうかはわからない。
    でも、かなこは歩き出そうとしたのだ。
    俊介と離れて、ひとりになって、生きていこうと決めたのだ。
    お願いだからもう放っておいてやって。
    俊介にそう言いたくなるようなラストだった。

  • 幼児殺害事件が主題と思いきや、その隣家に住む男女の話が主題となり物語が進行して行く。
    自らが犯した過去の過ちに、ずっと苛まれ続ける尾崎俊介。
    渓谷のある街で、揺れ続ける被害者と加害者の関係性。
    人間の深層心理の「負」の側面を描く吉田修一の世界観がとても現れている作品だったと思います。

  • 積ん読チャレンジ(〜'17/06/11) 23/56
    ’16/11/17 了

    真木よう子主演で映画化され、映画を観る直前に購入した作品。
    映画も胸に傷を残す作品だったが、小説も一口で飲み込むことの出来ないような作品。

    都内からほど近い渓谷で起こった殺人事件。
    母親による息子殺し、という導入からどんなストーリーが紡がれていくのかと思ったら、いつの間にか視点はその家族と隣の部屋に住んでいた若い男女に向けられる。
    知らぬ間に過去にある事件を起こした男と、そんな男と同居している女性の過去と今を紐解き、繋いでいく物語へと変容を来していく。

    そのすり替えの巧みさと、胸に一物を残す独特の読後感。
    ページ数も少なく、読みやすい作品。

    ------------------
    気に入った表現、気になった単語


    「許して欲しいなら、死んでよ」


    「非難もできない、礼も言えない。
    たぶん、それが自分たちの関係なのだと、改めて思い知らされる。」(P217〜218)

    【狷介(けんかい)】
    [名・形動]頑固で自分の信じるところを固く守り、他人に心を開こうとしないこと。また、そのさま。片意地。「狷介な人」「狷介不羈(ふき)」

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さよなら渓谷 (新潮文庫)の作品紹介

緑豊かな桂川渓谷で起こった、幼児殺害事件。実母の立花里美が容疑者に浮かぶや、全国の好奇の視線が、人気ない市営住宅に注がれた。そんな中、現場取材を続ける週刊誌記者の渡辺は、里美の隣家に妻とふたりで暮らす尾崎俊介が、ある重大事件に関与した事実をつかむ。そして、悲劇は新たな闇へと開かれた。呪わしい過去が結んだ男女の罪と償いを通して、極限の愛を問う渾身の長編。
2013年に映画化!

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