- Amazon.co.jp ・本 (279ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101292342
感想・レビュー・書評
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しんみりしたい時には川上弘美
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『ニシノユキヒコの恋と冒険』読了。
ニシノユキヒコの女性遍歴はいつまで続くのかとニヤニヤしながら読んだ。
面白いのが女性からニシノを捨てていく場面が圧倒的に多かったこと。多分、ニシノを介して女性たちは変化していったんだなと思った。
そして、読んでていつになったらわたくしもオトナになるのやらと痛感。布団の中で読んでて。部屋を見渡したらなんか変わってるのは部屋だけでその部屋を使用してる人間はさほど変わってないなーと。
この本が特に部屋で何かする場面が多かったからかそう思ったのだ。
2015.10.25(1回目) -
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ミツキさん、はじめまして!
関西出身で東京在住、
読書は勿論、映画と音楽と猫には目がないプロボクサーです。
遅くなりましたがリフォ...
ミツキさん、はじめまして!
関西出身で東京在住、
読書は勿論、映画と音楽と猫には目がないプロボクサーです。
遅くなりましたがリフォローありがとうございました(^o^)
僕もどこか官能的な川上さんの文体が好きです。
そしてニシノユキヒコ!
ホンマどうしようもないヤツだけど、
僕の亡くなった親友も同じタイプだったので
なぜか憎めないのです。
コレ、映画も観に行きました。
小説とは違って、あえてニシノユキヒコを幽霊として先に登場させて、ユキヒコの葬式に集まる女たちとの恋を回想で描いていく形にストーリーを変えていて、
これがホンマいい効果をもたらしてます。
あと数々の名作映画へのオマージュや分かる人には分かるマニアックな遊び心が散りばめられていて、
映画が好きであればあるほど楽しめる作品です。
(ニシノユキヒコを演じた竹野内豊が、飄々としていて時折見せる寂しげな微笑みに切なさを感じさせて、まさにハマリ役でした)
まったりとした空気感や淡々と流れる作りは観る人を選ぶだろうけど、
個人的にはなかなかの傑作だと思ってます(^^)
機会があれば是非是非。
ではでは、これからも末永くよろしくお願いします!
コメントや花丸ポチいただければ
必ずお返しに伺いますので
こちらにもまた気軽に遊びに来てくださいね。
(お返事は仕事の都合によってかなり遅くなったりもしますが、そこは御了承願います…汗)
ではでは~(^^)
2015/06/20
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ニシノユキヒコは、女の子の理想。
見た目は、それなり、キスもさりげなく、セックスも心を癒す。そして優しい。
10人の女性との恋物語。
淋しく切ない恋。
川上弘美のゆったりとしたすてきな時間を堪能できる作品。
「おやすみ」
わたしたちは愛しあいかけていた。けれども愛しあうことはできずに、愛しあう直前の場所に、いつまでも佇んでいた。
「ドキドキしちゃう」
夜の海が満ちて、あたしたちを沈めて、そうしたらあたしたちは小さな蟹になればいい。
波がときおり大きな音をたてて、寄せてくる。海が大きく満ちてくる。夜の中で、あたしはいつまでも、ドキドキしている。 -
川上弘美さんが描く純リアリズムの恋愛小説。年齢も様々な10人の女性たちが語るニシノユキヒコの物語。恋の相手に恵まれるニシノだけれど、それらはけっして長続きしない。それはそうだろう。「2人は末永く幸せに暮らしました」では恋愛文学にはならない。忍ぶ恋、禁断の恋、破滅的な恋こそが恋愛小説の王道だ。だから、この物語にはいつも別れが待っている。女たちは本質的な孤独がニシノに内在することに気づいてしまうから。その上に彼は絶対に叶うことのない、姉への恋愛感情までを秘めているのだから。寂しい、そして寂しさが似合う小説だ。
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「ニシノユキヒコ」氏は女にもてる。
ろくでなしである。
こんな男が傍にいたら全力で逃げるべきである。
誰かを愛したくてたまらないのに、自分に恋をする女なんて興味ないのだ。
友人がこんな男と恋愛していたら、さっさと別れた方がいいと助言するだろう。
そんなことを言いながら、ニシノ氏が傍にいたら、私はたぶん恋に落ちてしまう気がする。-
2013/08/23
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ニシノユキヒコを愛した10人の女性の話。
中学生のニシノユキヒコから幽霊のニシノユキヒコまで。
ニシノユキヒコみたいな男って…稀にいるよね。
ダメ男って言葉で済ましたらそれまでだけどw
自分のことを棚にあげてるって言ったらそれまでだけどw
人を深く愛せない、愛してるつもりでも伝わらない、平気で浮気するくせに、相手の愛は全て自分に向けていてほしい。
都合がいいヤツなんだけど、そういう人に惹かれちゃう女性が多いのも事実。
なんでこんな人がもてるんだろう?って思うけど、自分も惹かれちゃってたり。
でも結局、
そういう男性と付き合っても、自分も一歩ひいちゃうんだよね。客観的に醒めて付き合っちゃう。
熱をあげても無駄だなって気づいちゃう。
年齢を重ねると余計に。
ニシノユキヒコに苛つきながら読了しました。
川上弘美最高! -
「ニシノユキヒコ」という1人の男の姿を、彼と関わった10人の女が振り返る。
愛し合っているはずなのに、決して距離が縮まらないもどかしさ。いつか離れてしまうと気付きながらも、止められない気持ち。そんな繊細で切ない描写が素晴らしかった。
彼を語る10人の女性たちはみな、自立していて洞察力に長け、賢い。そんな女性たちでさえ太刀打ちできなかったニシノユキヒコという男。
でもわたしは、彼はどの恋愛も本気だったし、目の前の女性を愛し抜こうと誰よりももがいていたように感じる。
タイトルに「冒険」とあるように、彼はずっと、自分自身を探していたのではないかな。
そしてそれを見つけ、愛してくれる女性を求めていた。
だけど彼は生涯孤独だった。
彼を心底理解できた女はいなかったし、彼自身も、最期まで自分を理解することができなかったんじゃないかと思う。
でも「草の中で」の山片、「ぶどう」の愛、「水銀体温計」の御園に対しては、彼は弱くてもろい部分を出した。彼は自分に惚れない女に対しては、心を許すことができたのかな。彼女達にはどことなく、自分と似た部分があるから。
そして他の女性たちにおいては、死んだ姉とその娘にダブらせて愛したのかもしれない。
わたしはニシノユキヒコのことを「女たらし」だなんてちっとも思わなかった。
苦しくて、情けなくて、ものすごくいとおしい。 -
ニシノくん、ニシノくんよ。
ニシノくんに思いを馳せてしまう。
沼にハマる気持ちがよく分かる、魅力的な男。
ニシノユキヒコと、彼に恋した女の子たちの話。
物語が淡々としていて、だけどその場の空気がじわじわと読み手にもよく伝わってきた。
自分は軽い付き合いとか、不誠実な恋はしたくないので全体の物語、登場人物には共感することは出来なかった。だけど、それぞれの女の子たちの、恋や愛に対する考え方に、なるほどな〜とか、わかるわかると頷いたりした。
たとえば、
「好きになっちゃうと、相手がどんな年でどんな癖があってどんな性格か、なんて、ほとんど関係なくなっちゃうんだね。」(231ページ)
とか。
好きな人って、好きな人だから好きなのであって、仮に洋服が自分好みでなかったり、顔がタイプじゃなかったとしても、どうしたって好き。と、思うので、とても共感した。
ニシノくんに恋したときに、彼のすべてを許してしまった、的なことを語り手は言っていたけど、恋って全くその通りだと思う。
すべて許してしまう。それがいいことなのか、悪いことなのか。いいことでも悪いことでもあるんだろうな。
物語には共感できなかったけど、やっぱり川上弘美の書く世界が好きで、空気感とか、細かいところがたまらなかった。
たとえば、冷蔵庫のことを「ぞぞさん」と呼ぶ女の子だったりとか、「ニシノさんはパフェのことを『パフェー』と呼んでいたなあ」と思い出したりとか、そういう、細かいところ。好きです。
一番はじめのお話が好きだった。
年とってまた読み直したいです。