ニシノユキヒコの恋と冒険 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
3.51
  • (288)
  • (533)
  • (842)
  • (120)
  • (32)
本棚登録 : 4656
感想 : 633
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (279ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101292342

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • しんみりしたい時には川上弘美

  • 『ニシノユキヒコの恋と冒険』読了。
    ニシノユキヒコの女性遍歴はいつまで続くのかとニヤニヤしながら読んだ。
    面白いのが女性からニシノを捨てていく場面が圧倒的に多かったこと。多分、ニシノを介して女性たちは変化していったんだなと思った。
    そして、読んでていつになったらわたくしもオトナになるのやらと痛感。布団の中で読んでて。部屋を見渡したらなんか変わってるのは部屋だけでその部屋を使用してる人間はさほど変わってないなーと。
    この本が特に部屋で何かする場面が多かったからかそう思ったのだ。

    2015.10.25(1回目)

  • 「僕は勉強ができない」の秀美くんから、なぜかふと思い出して「ニシノユキヒコ」に至った私。
    川上弘美の筆致は好きだし、女性の“感じ”も好きだし、更にいうとフォントの「ふ」の字にもクラクラくるぐらい好きだ。

    しかし、ニシノユキヒコ、困った人。
    あらゆる女性が、どこかでニシノユキヒコを「赦し」ていることを、彼自身は気付いているんだろうか。
    最後にのぞみが言う、突然自分の世界に入っていってしまう男。そんな、自己愛のお話に読めてしまう。

    彼が最後に出会うのが、愛。
    彼女だけはニシノユキヒコを愛さない。
    どこか『パイロットフィッシュ』の七海を彷彿とさせる、少女の聖性を匂わせた女の子である。
    愛されないことに依存心を強め、聖性がある存在に崇高な感情を抱く。

    結局のところ、彼は冒険の中で自分自身を見出すことが出来たのだろうか。

    • 円軌道の外さん

      ミツキさん、はじめまして!
      関西出身で東京在住、
      読書は勿論、映画と音楽と猫には目がないプロボクサーです。
      遅くなりましたがリフォ...

      ミツキさん、はじめまして!
      関西出身で東京在住、
      読書は勿論、映画と音楽と猫には目がないプロボクサーです。
      遅くなりましたがリフォローありがとうございました(^o^)

      僕もどこか官能的な川上さんの文体が好きです。
      そしてニシノユキヒコ!
      ホンマどうしようもないヤツだけど、
      僕の亡くなった親友も同じタイプだったので
      なぜか憎めないのです。

      コレ、映画も観に行きました。
      小説とは違って、あえてニシノユキヒコを幽霊として先に登場させて、ユキヒコの葬式に集まる女たちとの恋を回想で描いていく形にストーリーを変えていて、
      これがホンマいい効果をもたらしてます。
      あと数々の名作映画へのオマージュや分かる人には分かるマニアックな遊び心が散りばめられていて、
      映画が好きであればあるほど楽しめる作品です。
      (ニシノユキヒコを演じた竹野内豊が、飄々としていて時折見せる寂しげな微笑みに切なさを感じさせて、まさにハマリ役でした)

      まったりとした空気感や淡々と流れる作りは観る人を選ぶだろうけど、
      個人的にはなかなかの傑作だと思ってます(^^)
      機会があれば是非是非。

      ではでは、これからも末永くよろしくお願いします!

      コメントや花丸ポチいただければ
      必ずお返しに伺いますので
      こちらにもまた気軽に遊びに来てくださいね。
      (お返事は仕事の都合によってかなり遅くなったりもしますが、そこは御了承願います…汗)

      ではでは~(^^)


      2015/06/20
  • ニシノユキヒコは、女の子の理想。
    見た目は、それなり、キスもさりげなく、セックスも心を癒す。そして優しい。
    10人の女性との恋物語。
    淋しく切ない恋。
    川上弘美のゆったりとしたすてきな時間を堪能できる作品。

    「おやすみ」
    わたしたちは愛しあいかけていた。けれども愛しあうことはできずに、愛しあう直前の場所に、いつまでも佇んでいた。

    「ドキドキしちゃう」
    夜の海が満ちて、あたしたちを沈めて、そうしたらあたしたちは小さな蟹になればいい。
    波がときおり大きな音をたてて、寄せてくる。海が大きく満ちてくる。夜の中で、あたしはいつまでも、ドキドキしている。

  • 川上弘美さんが描く純リアリズムの恋愛小説。年齢も様々な10人の女性たちが語るニシノユキヒコの物語。恋の相手に恵まれるニシノだけれど、それらはけっして長続きしない。それはそうだろう。「2人は末永く幸せに暮らしました」では恋愛文学にはならない。忍ぶ恋、禁断の恋、破滅的な恋こそが恋愛小説の王道だ。だから、この物語にはいつも別れが待っている。女たちは本質的な孤独がニシノに内在することに気づいてしまうから。その上に彼は絶対に叶うことのない、姉への恋愛感情までを秘めているのだから。寂しい、そして寂しさが似合う小説だ。

  • 実はこの本を読むのはこれが3回目です。一度読んで面白くてすぐ2回目を読み、公開中の同名の映画を近々観るためのおさらいで今回また読んでみました。

    優しくほのかに暖かい物腰で女性に近づくニシノユキヒコ。付きあっている女性の前で、悪びれもせず「二股をかけたいけど、女の子がたいがい許してくれない。」と言ってしまうニシノユキヒコ。ニシノユキヒコが心の底から女性を愛せないように、物語の中でニシノと関わった女性たちもまた心からニシノを愛せた人はいなかったのではないかと私は思いました。

    それは虚しい物語のようにも思えますが、けっしてそうではなく、女性の目線で語られる優しいだけではないニシノの捉えどころのない魅力、その内に秘められた過去のつらい記憶が浮き彫りになって私の心を捕まえて離しませんでした。

    ニシノユキヒコ。現実にはなかなかいない男性だとは思いますが、もし自分の前にニシノユキヒコが現れたら、私はニシノに関わることを拒むことができるだろうか?そんなことが頭に浮かびました。

  • 「ニシノユキヒコ」氏は女にもてる。
    ろくでなしである。
    こんな男が傍にいたら全力で逃げるべきである。
    誰かを愛したくてたまらないのに、自分に恋をする女なんて興味ないのだ。
    友人がこんな男と恋愛していたら、さっさと別れた方がいいと助言するだろう。
    そんなことを言いながら、ニシノ氏が傍にいたら、私はたぶん恋に落ちてしまう気がする。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「自分に恋をする女なんて興味ないのだ。」
      この感じ、映画で表現出来るのかなぁ~
      「自分に恋をする女なんて興味ないのだ。」
      この感じ、映画で表現出来るのかなぁ~
      2013/08/23
  • ニシノユキヒコを愛した10人の女性の話。
    中学生のニシノユキヒコから幽霊のニシノユキヒコまで。


    ニシノユキヒコみたいな男って…稀にいるよね。
    ダメ男って言葉で済ましたらそれまでだけどw
    自分のことを棚にあげてるって言ったらそれまでだけどw
    人を深く愛せない、愛してるつもりでも伝わらない、平気で浮気するくせに、相手の愛は全て自分に向けていてほしい。
    都合がいいヤツなんだけど、そういう人に惹かれちゃう女性が多いのも事実。
    なんでこんな人がもてるんだろう?って思うけど、自分も惹かれちゃってたり。


    でも結局、
    そういう男性と付き合っても、自分も一歩ひいちゃうんだよね。客観的に醒めて付き合っちゃう。
    熱をあげても無駄だなって気づいちゃう。
    年齢を重ねると余計に。



    ニシノユキヒコに苛つきながら読了しました。
    川上弘美最高!

  • 「ニシノユキヒコ」という1人の男の姿を、彼と関わった10人の女が振り返る。
    愛し合っているはずなのに、決して距離が縮まらないもどかしさ。いつか離れてしまうと気付きながらも、止められない気持ち。そんな繊細で切ない描写が素晴らしかった。

    彼を語る10人の女性たちはみな、自立していて洞察力に長け、賢い。そんな女性たちでさえ太刀打ちできなかったニシノユキヒコという男。
    でもわたしは、彼はどの恋愛も本気だったし、目の前の女性を愛し抜こうと誰よりももがいていたように感じる。

    タイトルに「冒険」とあるように、彼はずっと、自分自身を探していたのではないかな。
    そしてそれを見つけ、愛してくれる女性を求めていた。
    だけど彼は生涯孤独だった。
    彼を心底理解できた女はいなかったし、彼自身も、最期まで自分を理解することができなかったんじゃないかと思う。

    でも「草の中で」の山片、「ぶどう」の愛、「水銀体温計」の御園に対しては、彼は弱くてもろい部分を出した。彼は自分に惚れない女に対しては、心を許すことができたのかな。彼女達にはどことなく、自分と似た部分があるから。

    そして他の女性たちにおいては、死んだ姉とその娘にダブらせて愛したのかもしれない。

    わたしはニシノユキヒコのことを「女たらし」だなんてちっとも思わなかった。
    苦しくて、情けなくて、ものすごくいとおしい。

  • ニシノくん、ニシノくんよ。
    ニシノくんに思いを馳せてしまう。
    沼にハマる気持ちがよく分かる、魅力的な男。

    ニシノユキヒコと、彼に恋した女の子たちの話。
    物語が淡々としていて、だけどその場の空気がじわじわと読み手にもよく伝わってきた。

    自分は軽い付き合いとか、不誠実な恋はしたくないので全体の物語、登場人物には共感することは出来なかった。だけど、それぞれの女の子たちの、恋や愛に対する考え方に、なるほどな〜とか、わかるわかると頷いたりした。

    たとえば、
    「好きになっちゃうと、相手がどんな年でどんな癖があってどんな性格か、なんて、ほとんど関係なくなっちゃうんだね。」(231ページ)
    とか。

    好きな人って、好きな人だから好きなのであって、仮に洋服が自分好みでなかったり、顔がタイプじゃなかったとしても、どうしたって好き。と、思うので、とても共感した。

    ニシノくんに恋したときに、彼のすべてを許してしまった、的なことを語り手は言っていたけど、恋って全くその通りだと思う。
    すべて許してしまう。それがいいことなのか、悪いことなのか。いいことでも悪いことでもあるんだろうな。

    物語には共感できなかったけど、やっぱり川上弘美の書く世界が好きで、空気感とか、細かいところがたまらなかった。
    たとえば、冷蔵庫のことを「ぞぞさん」と呼ぶ女の子だったりとか、「ニシノさんはパフェのことを『パフェー』と呼んでいたなあ」と思い出したりとか、そういう、細かいところ。好きです。

    一番はじめのお話が好きだった。
    年とってまた読み直したいです。

全633件中 21 - 30件を表示

著者プロフィール

作家。
1958年東京生まれ。1994年「神様」で第1回パスカル短編文学新人賞を受賞しデビュー。この文学賞に応募したパソコン通信仲間に誘われ俳句をつくり始める。句集に『機嫌のいい犬』。小説「蛇を踏む」(芥川賞)『神様』(紫式部文学賞、Bunkamuraドゥマゴ文学賞)『溺レる』(伊藤整文学賞、女流文学賞)『センセイの鞄』(谷崎潤一郎賞)『真鶴』(芸術選奨文部科学大臣賞)『水声』(読売文学賞)『大きな鳥にさらわれないよう』(泉鏡花賞)などのほか著書多数。2019年紫綬褒章を受章。

「2020年 『わたしの好きな季語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

川上弘美の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
島本 理生
劇団ひとり
川上 弘美
伊坂 幸太郎
伊坂 幸太郎
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×