脳と仮想 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101299525

感想・レビュー・書評

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  • 再読。物質である脳に宿る、意識や心。何となく神秘的なものを感じます。科学と哲学ってすごくかけ離れたものと思っていたけれど、意外と近い?ものなのかなと感じます。すごく引き込まれました、面白かったです。

  • 何故物質である脳に心が宿るのか?科学で解明されていない心の不思議を「仮想」をテーマに問いただしていく一冊。ずっと前から持っていた本だけれど、私の今抱いている疑問がここに書いてあった。何回も読みたい。

  •  「ねえ、サンタさんって、いると思う?」
    少女の一言から始まる論考。
     機械仕掛けの宇宙と主観的な経験を取り結ぶ冒険。
     流麗な文章が読者を引き込む。

  • 脳を専門とする学者の方が、クオリアに重点を置いて考察し述べることは、非常に意義があると思う。本としては、進行や突き詰め方に物足りなさを少々感じた。けれど小林秀雄賞をとられたことは、とてもしっくりくる。小林秀雄さんの著作が好きな方は、この本はツボかもしれない。

  • 面白い。脳科学者、茂木健一郎によるエッセイ。テレビで見た茂木健一郎とはだいぶ印象が違う。

    物質である脳に、いかにして心が宿るのか、という問いを「心脳問題」と呼ぶそうだが、まずこの問いが非常に興味をそそる。この難問に現代の科学では答えることができず(もちろんこの本にもその答えはなく)、恐らく現代科学のアプローチでは解くことができないのだろう。
    だからこそ、かどうかはわからないが、本著もこの問いに対する本であるものの、科学的な話はほぼなく、思想的な話が主体である。

    あとは、クオリアという概念が面白かった。

    -----

    p17
    プラトンは、「書き言葉は話し言葉に劣る」と考えた。

    p22
    近代科学は「計量できるもの」だけに対象を絞っている。
    (にもかかわらず、それだけで世界の全てをカバーできると思っている)

    p24
    人間の経験のうち「計量できないもの」を脳科学ではクオリア(感覚質)と呼ぶ。

    p92
    特定の宗教を信じるかどうかは、個人の自由である。しかし、人間が生み出す仮想の切実さを信じられない人の精神生活は、おそらく貧しいものにならざるを得ないだろう。

    p101
    私たちは五感を通じて、外界の様子をつかみ取っている。
    つまり、それぞれの感覚で固有の「クオリア」を感じとっている。

    p104
    複数の感覚から得られた情報が一致することで、私たちの「現実」を支えられている。
    逆に、その一致が成立しないものを「仮想」と呼ぶ。

    p117
    私たちは「もの自体」には決して到達できない。
    私たちが把握できるのは、その色や触覚や叩いた時の音といった「クオリア」だけである。

    p158
    自分の感じている赤と、他人の感じている赤が、同じ赤なのかですらわからない。

    p166
    それでも人は断絶の向こうにある他者の心とコミュニケーションすることができる。
    他者の心だけでなく、広大な世界は本来的に断絶している。

    p228
    この世界で確実なのは、現実の世界ではなく、意識を持った自分だけ。
    (デカルトはこれを「わたしは考える、ゆえにわたしは存在する」 と表現した)

    p231
    なぜ、単なる物質を、いくら複雑とはいえ、脳というシステムにくみ上げると、そこに「魂」が生じてしまうのか、とんと見当がつかない。見当がつかないということは、きっと、近代科学のやり方に、どこか根本的な勘違いがあるということを意味するのだろう。重大な錯誤があることを意味するのだろう。

  • 「道なんて、どれを選んでも同じようにも思われる。しかし、案外そのような好みが、長い目で見ると人柄というものをつくり、人生の帰結を変えていくものではないかと思う。目に見えない人生の旅路においてどのような道が好みかということが、いつしかその人の生き方そのものとなっていく。」「暮らしのクオリア」

    過去は育てることができる。脳の中の記憶に繰り返し立ち返ることで、新たな意味を見出し、つややかな光を当てることができる。

  • クオリアの有効性の是非は措きますが(苦笑)、本書で一番おすすめなところは、科学の問題よりも、実は、小林秀雄先生の秀逸な入門となっているところ。

  • 再読。
    「サンタさんっていると思う?」


    この一言だけで、こんなに書けるなんてすごい。



    内容も充実していて、
    理解しやすかったです。


    もっともっとクオリアの融合を!!

  • 脳科学者が多くメディア露出していたころが懐かしい。もう20年近く前の本か。クオリアがキーワード。意識している=脳の作用=脳の中は仮想、物理的な指標がそのまま意識化されるわけではない。「夕焼け空が赤い」「キンと冷えた朝」「あたたかな気持ち」などと表現できるがそれを物理的に指標に定義できても意識しているものは個人間で異なる。→『私たちは「現実自体」を知ることはできない。私たちが把握できるのは、意識の中に立ち現れる「現実の写し」としてのクオリアだけである。』
    小林秀雄に大きな影響を受けている。章立てもされている。

  • 存在を感じることと脳の働きの関係

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著者プロフィール

脳科学者。ソニーコンピュータサイエンス研究所シニアリサーチャー。慶応義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科特別招聘教授。「クオリア」をキーワードに、脳と心の関係を探究しつづけている。1962年、東京生まれ。東京大学理学部、法学部卒業後、東京大学大学院理学系研究科物理学専攻博士課程修了。理学博士。
著書『脳と仮想』(新潮社、第4回小林秀雄賞受賞)『今、ここからすべての場所へ』(筑摩書房、第12回桑原武夫学芸賞受賞)『脳とクオリア』(日経サイエンス社)『脳内現象』(NHK出版)『感動する脳』(PHP研究所)『ひらめき脳』(新潮社)ほか多数。

「2013年 『おぎ・もぎ対談 「個」育て論』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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