エデン (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (318ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101312620

感想・レビュー・書評

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  • 前作から三年後、彼はツール・ド・フランスに挑もうとしています。300ページ以上あるのに一気に読ませてしまう筆力はさすがです。おそらく主人公のまっすぐなところが読み手の心を打つのでしょう。ミステリ色は薄く、純粋にロードレースの駆け引きにスポンサーやドーピングと言った暗い部分も含めてどっぷり浸ることができました。今回はニコラを中心とした人間関係で読んでいる私自身が手足が冷たくなるような感覚を味わいました。チカは本当に強く、最後に取った選択もとても気持ちがよかったです。今後の活躍も期待せずにはいられません。

  • 私の読む作家さんの中では、ザ・正統派小説 って感じだ。真っ直ぐで自転車の世界が興味深い。

  • 前作「サクリファイス」の続編

    舞台を日本からフランスに変え ツールドフランスに挑む主人公
    3000kmを疾走しながらの駆け引き

    自転車競技の激しさや厳しさ そして 人間ドラマが面白い物語です ^_^

    自転車競技が好きな方や興味がある方はもとより 興味がない方でも面白く読めると思いますので ぜひ読んでいただきたいです ^_^

  • ゴールさせる競技者の葛藤が面白い。

  • 主人公、白石さんの誠実なキャラクターが好きですね。

  • 『サクリファイス』を読んだのはもう何年前のことだろう。
    自転車のロードレースなんて何も知らないくせに手に汗を握りながら読みました。

    白石誓はヨーロッパのクラブに所属して半年。特にこれと言って成果は出せていないが、残り1年半の契約期間中に何とかすればいいとのんきに思っていたら、クラブからスポンサーが撤退、クラブ解散の危機に立たされる。

    そんな中世界で一番有名な自転車レース、ツール・ド・フランスが開催される。チーム存続を優先に作戦を立てる監督と、レースに全力を出したいチームのエース。
    それぞれの思惑が交差し、チーム内のムードは最悪に。

    白石もこのままむざむざ日本に帰りたくはない。
    だからと言って、わざと他チームを勝たせて恩を売るような試合はしたくない。
    悩んだ挙句に白石が出した結論は…。

    そしてライバルチームのエース、ニコラ・ラフォン。
    童顔で明るい髪色の彼は、白石に人懐こく声をかけてくる。
    戦略が大事なロードレースで、戦略は無視して思うままにペダルをこぐ二コラに淡い友情を感じる白石。

    三週間という長丁場で、タイムトライアルや山岳レースなどを組み合わせたレースは、一瞬の油断が命取りになる。
    白石はエースをアシストするために、時にレースを引っ張り、時に風よけになりなどしながらレースをこなしていく。

    そのレースの行方を手に汗握って読んでいたら、急転直下の展開に驚く。
    不穏な空気は感じていたはずなのに、すっかりミステリであることを忘れていた。

    自分ではスポーツをしないのに、いやしないからなのか、こういう試合中の駆け引きや何かを書いた小説が好きなんだなあと改めて思ったのでした。

  • 日本人とはどういうものか、定義は難しい、定義していいものかわからないけれど、日本人であるチカがヨーロッパの地で唯一の存在としてヨーロッパの仲間と関わるからこそ、ロードレースみたいにスピード感があって、一筋縄ではいかない物語になっているんだろうなーと。
    レース構成やルールはいまいち飲み込めないけど、読み応えのある本。

  • ロードレースを描いた「サクリファイス」の続編。
    主人公白石誓(チカ)がスペインからフランスチームへ移籍して半年後、ロードレースの最高峰、ツール・ド・フランスが舞台。

    前作よりミステリー感は薄くなり、自転車のスピード感を感じる、スポーツ小説としての勢いを増していて、ツールの魅力にどっぷり浸れ、選手同士・チームとの駆け引きがスリリングでおもしろかったです。
    前作のようなアッというどんでん返しがなくても十分楽しめました。

    チーム分裂の危機の中、自分が結果を出すことを選ぶべきか、エースのアシストをするべきか葛藤するチカの心理描写も巧みで、チームの勝利のために、壮絶なアシストに徹するチカが最終的に選んだ決断、ニコラに語ったセリフに、胸が熱くなりました。

    「きみは、深雪さんに黄色いライオンを手渡した。ポディウムで渡されるキスや花束みたいにってきみは言ったよね。きみがここで消えてしまえば、あのライオンは花束にはなれない。悲しい記憶の置き土産になってしまう。彼女はたぶん、あのライオンを捨てることもないし、だれかにあげることもないだろう。それを見るたびに、きみが若くして選手を辞めてしまったことを思いだし、そして悲しい気持ちになるんだ。そのために、きみはあのライオンを彼女にあげたのかい?」
     彼は泣き出しそうな顔で、それでも笑った。
    「まるで呪いだな……」
    「呪い?」
    「彼女のライオンのことを思うと、ぼくはこの先、怪我をすることも薬物に手を出すことも、辞めることもできないじゃないか」
     そのことばにぼくも笑う。
    「そうさ。呪いだよ」
     それでも、走ることが苦しい日には、その呪いこそがぼくの自転車を後ろから押してくれるのだ。


    「叩きのめされたとしても楽園は楽園で、そこにいられること、そのことが至福なのだ」最後の一文にタイトル『エデン』の意味が集約されていました。

     さらなる続編「サヴァイブ」「キアズマ」「スティグマータ」と順に読んでみたいと思います。

  • 自転車ロードレースをベースに描かれているが、その情景や爽快感とは異なる人間の心に潜んでいる…という重めのお話だと思う。

  • 2018.10.13読了
    ☆3.5

    図書館で借りて読んだ。

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著者プロフィール

1969年大阪府生まれ。大阪芸術大学文芸学科卒業。1993年『凍える島』で「鮎川哲也賞」を受賞し、デビュー。2008年『サクリファイス』で、「大藪春彦賞」を受賞。「ビストロ・パ・マル」シリーズをはじめ、『おはようおかえり』『たまごの旅人』『夜の向こうの蛹たち』『ときどき旅に出るカフェ』『スーツケースの半分は』『岩窟姫』『三つの名を持つ犬』『ホテル・カイザリン』等、多数発表する。

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