忍びの国 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (375ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101349770

感想・レビュー・書評

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  • 忍者小説の醍醐味は伝奇物とは違った、荒唐無稽・奇想天外が許されるところ。
    古くは立川文庫だっけ。司馬遼太郎、池波正太郎、山田風太郎・・・錚々たる作家が名作を描いてきてる上、本読みの中でも、活字中毒のファンが多いジャンルではないかと思います。
    冒頭から、読者の想像力を書きたてるアイデアと文章、そこにリアリティが存在しないと納得しないです。

    さて当作品。
    厳密にいうと第一次天正伊賀の乱をメインに描いてます。

    稀代の剣豪という肩書を持つ大名 三瀬御所こと北畠具教。
    織田家に屈服し、信長の次男信雄を養子に迎えた、この異色の大名を暗殺するところが物語は始まる。
    信雄に従う3人の侍大将にとって、北畠具教はかつての主君。
    その旧主で義理の父親殺害を命じるのは戦国の習いか、実父と真逆な信雄の器量か。
    一方の剣豪大名は、この日を予感し、かつての家来の懊悩を理解し、諭して、消えていく。
    第一章からこんな調子。この段階で既に「やべー スゲー小説に出会ったぞ」と。

    伊勢を平定した信長は愚かな息子 信雄に厳命する。伊賀は攻めるなと。
    人であるが、人としての感情を持たない獣のごとき武装集団。
    銭によって傭兵として無双の強さを発揮する。そんな伊賀の民の強さを信長は知っていた。
    これを理解できない信雄と、それを利用して攻め込ませたい伊賀の長たち。
    登場する忍び 無門、文吾、平兵衛、木猿ら。

    伊賀を束ねる長たちの深謀機略。思惑通りに進むかと思いきや・・・・・。
    銭が第一、忠実に働くはずの伊賀の下人たちの思惑が、物語を一転二転と左右していく。

    忍者だけでなく武将ひとりひとりの個性も際立ち
    一対一だけでなく、合戦シーンも秀逸。
    金こそ全て、親兄弟も関係ないという現実主義の忍び達。
    故郷の危機に、或る者は忍びの矜持を掛けて、或る者は矜持を捨てて、立ち向かう。

    続編に期待してしまう。
    文吾 後の石川五右衛門のあの名文句を待ってます。
    「絶景かな、絶景かな。」

  • 和田竜の本、「のぼうの城」に続いて2冊目。プチ、マイブームである。

    戦国時代の伊賀を舞台とした、織田軍と百地三太夫率いる忍び軍団との戦い。

    忍びの冷酷さ、自分の子どもまで目的のために殺してしまう。「人間じゃない」と叫ぶ忍びも何人か出てくる。

    ビックリするような忍法の術。目に見える忍術よりすごいのは人の心まで自在に操ってしまうこと。手下の下人はもとより敵の総大将の織田信雄(のぶかつ)までも簡単にあやつられる。

    そして凄まじい闘い。実は、私は戦闘シーンはあまり好きではない。

    忍びではない正統派の豪傑たちもわんさかいる。

    織田信長と織田信雄の親子の確執。偉大な父を持つと子どもは不幸である。

    無門という飛び抜けて優秀で残酷な忍びは、誰にもこびない。織田信長にも媚びないが、美人の妻には一切頭が上がらないというギャップの面白さ。

    テンポの速さ、意外などんでん返しなど、エンターテイメント
    小説として二重丸です。

  • キャラがみんな立っていて、読み慣れない歴史小説も面白く読めた。後半からグイグイ引き込まれた

  • 「のぼうの城」に続いて和田竜作品は2作目。今回は忍者が主人公。忍者といえば山田風太郎の忍法帖シリーズが定番となっているのだが、ぶっ飛び忍法は登場しないものの、疾走感、キャラの描き方、物語の締めくくり、様々な点で御大山田風太郎氏に肉薄するものを感じた。

    時代小説の書き手として今後大きな仕事をしていくんじゃなかろうか?氏の追及するものはあくまでエンタメであると捉えているが、歴史を俯瞰する視点からさらに深く事象を掘り下げていく作風を得るなら、大きな賞も期待できるのでは?その結果つまんなくなったりすることもあるかもしれないが…

    今書店では「村上水軍の娘」が平積みされてる、文庫本に落ちる頃には読んでみようと思う。

  • 武士が忍者を忌み嫌っていたということは知ってはいたが、それが何故なのかよくわかった。
    忍者は忍者同士、力を合わせてというものかと思っていたら、こんなエグイ集団だったとは。
    目的遂行が第一義であり、卑怯も是とするメンタリティに裏打ちされる武芸では、
    武士としてはよほどの技量がないと対抗できないだろうな。

    スピード感のある文体で一気に読めた。
    もちろん物語の構成(テンポ)がよかったからという前提はある。
    登場人物の多さもギリギリのラインで読みやすさを助けている。

    無門による続編というのは安直かもしれないが、忍者としてのキャラクターは光っている。
    一作で終わるには勿体ない。

    付記 土遁の術はやっぱり前準備が大変だなと少しほほえましい。

  • 初、歴史小説!初、忍法小説!久しぶりの小説読破にまた読書熱が湧き上がってきた面白い話でした。忍び好きの私をわくわくとのめり込ませるには充分な面白さでした。伊賀忍者の義理を知らない常識と人間の心を知らない強さ。実際にいたら嫌だな〜と思う反面、好きだなと思ってしまう魅力に取り憑かれてしまいました。特に無門の飄々とした態度や物言いは個人的にとても好きです。ですが、お国はどうも好きになれなかったな。伊賀忍者とは違ったお金への執着が人間臭過ぎて受け付けない。でも、そんなお国が死んでしまう時の無門は人間らしくって素敵でした。最後は物寂しさを残しつつ、読了。

  • あっという間の読了でした。登場人物が皆魅力的であることと、歴史の薀蓄が退屈にならない程度に盛り込まれていて非常に読み易かったです。

    魅力的な登場人物が沢山でてくる作品ですが、やはり無門がダントツに良いですね。仕事も適当、人の命に対して残酷なまでに無関心、金にがめつい。にも関わらず忍びの術は超一流。そして飄々とした性格と相まってどこか憎めない。そんな軽薄で自由気ままに見える無門も嫁(予定)のお国には何故か頭が上がらない。その理由が明らかになったとき無門に対する感情がガラリと変わりました。

  • ”のぼうの城”が面白かったので小太郎~に続き購入。
    のぼうまでとはいかなかったけれど、面白かった。

    私的イメージは平野耕太氏の画。

  •  もんのすごいサクサクと読み進んだ一冊。
     無門かっこいいよ無門。

     登場人物に丸っきり共感できないとそれだけでつまらなくなってしまうもの。
     共感できてはじめて「あーわかる。気持ちわかるわー。」と楽しくなっていく。
     本と会話してるかのように。

     けれど、ここまで共感できなくてのめり込めれるのは、作者の腕なんだろうと思う。
     残酷で非道。
     人を平気で裏切る。
     人を平気で騙す。
     人を平気で殺す。

     「この当時はこういうものなんです」って言われても煮え切らないことも多々あるのに、素直に受け入れることができる。

     お国さんへの溺愛っぷりがすごくいいね。
     某歴史ゲームオンラインだと忍者かっこいいって思ったことないけれど、この本を読んでなぜ外国人が忍者大好きなのか理解できたような気がした。

  • あえてなんの説明もなく、表紙にポンと登場人物の顔を置いてあることの凄みに気づいた。
    最初は誰だかもわからない。
    読み進めるうちに確信する。
    見返す。
    また見返す。
    1章読み進めるたびに違って見えてくる。
    たった一枚の顔の絵が、この本のすべての挿絵として成立してる。
    じつは「のぼうの城」でもこれが起きているのだけど、名もない顔の凄みはこの作品のほうが明らかに上だと思った。

    検索してランキングに漫画化作品が入っていたけど、この作品はすでに字で書いた漫画だと思う。ちょっとした漫画ファンなら、頭の中で好きな作家の絵で思い浮かべて読むとすごい。全20巻ぶんの熱作が読める。
    文章のテンポが凄く映像的なのだけど、カメラのヒキやアップのタイミングがすごく漫画的です、いい意味で。
    漫画化作品にもちょっと興味。

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