100年の難問はなぜ解けたのか―天才数学者の光と影 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (253ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101351667

感想・レビュー・書評

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  • 所々理解しにくいところがありますが、まあわかりやすいです。
    結局宇宙の形は何なのか好奇心をそそられますね。
    球体以外は想像しにくいですが。
    数学と物理学の融合、エキサイティングでした。

  • ポアンカレ予想の証明に命を燃やして取り組んだ数学者たちの思いが伝わってきた。
    世紀の難問を解いたペレリマン博士が、世の中との繋がりを断ち、想像すらできない孤独という恐ろしい試練に立ち向かい、それをくぐり抜けたわけだが、その結果、何かを失ってしまった。引きこもってしまったペレリマンをなんとか、もう一度表の世界に呼び戻そうとしたアブラモフ先生のシーンが何ともせつなかった…

    凡人にはわかりえない喜びがペレリマンにはあったのだろうが、それを私には理解することはできない。

  • 数学の世界には、数十年、数百年にわもわたる「難問」が存在する。現在も現役の未解決問題としては、「リーマン予想」や「ゴールドバッハ予想」などが有名であろう。本書が扱う「ポアンカレ予想」の場合、アンリ・ポアンカレによる予想から証明グレゴリ・ペレルマンによる証明までには、実に100年近い年月が掛かっている。
    さて、その「ポアンカレ予想」解決の物語は、普通の難問のそれとは些か異なっている。証明者のグレゴリ・ペレルマン博士は、本問に掛けられた懸賞金(なんと1億円近い金額!!)の受け取りを拒否し、数学界のノーベル賞とも言われる「フィールズ賞」の受賞も拒否し、あまつさえ、人前に出ることさえ拒否しているという。ペレルマンとは、いったいどんな数学者なのだろうか?
    と、煽り調に書いてみたものの、実際のところ、本書はペレルマンという数学者の実像には迫り切れていない。そもそも博士は音信不通のままだし、著者は東大卒とはいえ門外漢だし、恐らくポアンカレ予想の内容を説明するにも紙幅が足りないのだろう。同じ数学上の難問を取り扱った書籍としては、サイモン・シンの「フェルマーの最終定理」があるが、本書があの水準に達しているとは口が裂けても言えない。
    ただ、そうは言っても、位相幾何学という聞き慣れない分野について、なんとか読者に”わかって”もらおうと努力したことは見て取れる。なにより、問題そのものの高級な内容に深入りしなかったおかげで、この種の未解決問題を扱った本の中では珍しく、肩肘張らずに読むことができる。この点は、本書の美点と言ってもよいだろう。

  • 出来る限り分り易く記載してあるが、それでも難しい。当たり前かもしれないが、ペリルマンが証明したというポアンカレ予想なんてイメージすら難しい。
    ただ、分らなくても数学者の情熱などは非常に興味深く、証明されるまでの歴史、関わった人達の人物像は非常に面白かった。

  • 例えを使った解説がわかりやすかった。

  • 読んでも意味がわからない、でも面白いという本は少ない。この本はその少ない一冊だった。元となったドキュメンタリーは見たけれど、本の方が遙かにじっくりと考えながら読み解ける。テレビとは違うおもしろさがあった。

    この本の中で語られる数学は、難しすぎてわからない。中盤のトポロジーの説明まではなんとか感覚的にでもついて行けた。が、サーストン博士の「三次元多様体、クライン群、そして双曲幾何」の話あたりからさっぱりわからなくなった。後半、「ポアンカレ予想」が解けるあたりには、文字通りちんぷんかんぷんである。

    それでもこの本を読み進められたのは、そして読み終えたとき面白かったと思えたのは、そんな私でもわかった(気がする)ことが2つあったからだ。

    1つは、私が知っている(学生時代に教わった)「数学」なんていうものは、数学のほんの一面でしかなかったということ。実際の数学は、私が思っているよりももっとぶっ飛んでいて、もっと自由らしい。数学の一部しか知らずに、「数学は苦手だ」と決めつけてしまった自分を少し後悔する。数学者の見ている数学はどんな世界なのかが知りたかったというのが、読み進められた理由だと思う。

    もう1つは、ペレリマン博士が賞も受け取らずに消えた理由だ。元となったドキュメンタリーを見たとき、私は博士が消えたのは、かの難問を解き明かしたことで研究にやる気をなくしたからではないかと少し切なく思っていた。能力のある人が、研究を離れるというのは、端から見ていてとても寂しいことなのだ。

    でも、この本を読んで、博士の解法があらゆる学問に精通し、それらを自由に駆け回って得られたものだったのだと改めて理解した。博士にとって学問の「分野」など関係ないのだろう。ただ、自分の興味とそれを満たす解を得ることこそが目的なのだ(本来、研究者ってそうあるべきだけど、結構分野に縛られるんだよね)。だとすれば、博士は既存の数学の枠を飛び出し、別の研究をしているのかもしれない。この本の最後で、スタンフォード大学のヤコブ・エリアッシュバーグ教授が「すると彼は言いました。『現在、別の関心事がある』と。それは何かと訪ねたら、まだ話せないと答えました。何かとてつもない研究に取り組んでいるのかもしれません。それが数学かどうかも、私にはわかりませんが」(p.240、12L)と話す。私もそう思う。

    だとすれば、博士が人前に姿を現さないのもわかる。私はかつて無力でちっぽけな研究者の卵だったけれど、それでも研究の先がぼんやりと見えてくると、人に会うのがイヤだった。研究の楽しみの一つに、人と話すということは確かにある。人と話すことで、自分の問題意識やそれを解決するためのヒントが見えてくるからだ。でも、道が見えてくると、それは時に邪魔になる。なんというか、思考の純度が下がる気がしてくるのだ。

    この本を読んで、ドキュメンタリーを見て以来感じていた心のもやが晴れた。博士はきっと新たな研究をしている。そしてそれをひっさげて、また現れるのかもしれない。

  • 以前に『フェルマーの最終定理』をよんで、数学者が魅了される、数学の深淵な世界を体感した経験から、期待して読んだが、少し期待感からは外れた内容だった。元々はNHKスペシャルの書籍化だし、おそらく映像と合わせて見れば、納得する部分はあるのだろうけど。
    フェルマーの最終定理に比べると、ポアンカレ予想であったりトポロジーの世界自体が数学になじまない人にはそこから難解な内容で、一見、何を求めたいのかすら判らない。著者もおそらく悩んだところだと思う。本質的には、グリーシャをはじめ、「宇宙とはどのような形をしているのか」という一つの問い掛けに対し挑んだ数学者たちの葛藤を描いたものであり、そういう視点でドキュメントを追うとおもしろいのだが、如何せん、ポアンカレ予想自体の主題が難しい上、ページ数の少なさも相まってダイジェスト感が否めず(特に後半)、その辺が残念ポイント。

  • 『100年の難問はなぜ解けたのか』/新潮文庫/「地球からロケットにロープをつけて宇宙を一周させ、ロープの両端を引っ張ってロープを全て回収できた場合、宇宙は丸いと言えるか?」というポワンカレ予想がどのようにして解かれたのかについて解説。その過程には多くの数学者を翻弄させてきたらしい。ただ、肝心のポワンカレ予想を解決した人の解決法が書かれてなくて、ちょっと消化不良。

  • ポアンカレ予想。
    その意味は知らなくても、一度くらいは耳にしたことがあるだろう言葉。

    宇宙の形に関する予想。

    その難問を解いた数学者はフィールズ賞の受賞も拒否し、100万ドルの賞金をも拒否した。
    そしてこの俗世間から消えた。

    グリゴリ・ペレリマン博士彼は一体何を見たのだろうか?

  • 100年もの間数学者を苦しめてきた数学の難問”ポアンカレ予想”。その内容は、”単連結な三次元閉多様体は三次元球面と同相である”と記載される数学上の命題で、宇宙の形の解明にも繋がる(”ロープをかけたとき必ず回収できる四次元空間の表面は、四次元球面の表面と同じである”と読み替えることができる)ものらしい。ポアンカレ予想の基礎といえるトポロジーや過去この難問にトライした数学者の紹介、そしてこの難問を遂に解いたものの数学版ノーベル賞ともいえるフィールズ賞の受賞を辞退したペレリマン博士について記述されています。元々、NHKで放映された番組を書籍化したもので、これらの分野や登場する数学者の紹介といった要素が強く、ポアンカレ予想やトポロジーの詳しい説明、或いは各数学者の伝記となるほどの内容はない(前者は為されていても理解できませんが)。読み物としては少々物足りない感があるが、あくまでもキッカケ・導入としての位置づけと捉えるべきかと。数学的な要素を持たない私には、トポロジーや上記命題については当然のように理解できていませんが、このような探求の世界には何か惹かれます。ちなみに、クレイ数学研究所によって指定されているミレニアム懸賞問題には、まだ6個(本書刊行時点)の難問があるようです。

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