- Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101354156
感想・レビュー・書評
-
私のおばあちゃんもシズコだ!っと買って読み進めるうちに、「あ、シズエだったわ」と思い出した。
親に許せない気持ちがある方、親の介護をされている方は、読んでみるといいかもしれません。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
帰省から戻る時に読み終わって車内で泣くかと思った。感動ではなく悲しいかな。いや寂しいかな。この度の帰省でオカンの老いをとても感じたから。誰にでも来る老いで、その子供はある程度の面倒をみるのは予定路線なんだけれども、なんかどっかで親はずっと元気だしずっとボケないし、ずっと介護しないでずっと楽しく一緒にお出かけとかできるって思ってしまってるんだよな。甘いなーあたしは。両親との関係は概ね良好なあたしではあるが、ヨーコさんの腹の中はわかるわかるってことばっか。女同士だからね。なんかイライラすることばっかよね。口が悪くて大変面白かった。大変面白いしスカッとするんだけど、ハッとする言葉が出てきてボーッと考えちゃってその先ページめくれなかったりも。次の帰省はいつになるかな。いい加減帰るまで優しい気持ちでいたいなー。今度はそうできますように(毎回そう思ってる気がするけど!)
-
佐野洋子さんの本は読んだことがなかった。
彼女が描くイラストの目がなんとも怖くて、絵本すら読んだことがない。
あの名作といわれている『100万回生きたねこ』すらも。
だから、佐野洋子さんのことは、失礼だとは思いつつも
「アノ谷川俊太郎をオトした女」として記憶していた。
お亡くなりになってやっと読む気になった。
違う世界へいってしまった彼女が描いた目を見ても怖くなくなったから。
で、本書。すごい本だった。
簡単にいうと、
佐野さんと実母(表紙に描かれたどろりとした視線の女性)との確執が書いてある。
「確執」なんて言葉もかわいく見えてくるくらい、
それはそれはもう辛辣に手厳しくばっさり自分の母親を切り捨てている。
小説なのかエッセイなのか、
同じ話、同じ文章が何章にもわたってくりかえされる。
まさに恨み節を何度も愚痴られている気分にもなる。
だけどその文章、その世界は、
まるで柳原可奈子の下ネタのように、
ギリギリのところで踏みとどまり、「芸」へと昇華するのだ。
(例えが変かな・・・)
母を筆頭に父、妹たち、弟たち、弟の嫁・・・
佐野さんの手厳しさは身内全員に向けられる。
いろいろ世話になり、ウマがあったはずの叔母(母の妹)すら、
「(母にくらべて)情が深く、でも情しかない」と切り捨てていた。
いわく自分の母親は家族に愛を見せない反面、他人への愛があった。
叔母は家族しか愛せない。
「それでいいんじゃないの?」という声も聞こえてきそうだけど、
わたしは佐野さんの言いたいことの方に共感できちゃった。
大震災以後、ツイッターやブログなどでちらほら見られた
「我が子を守る!」的発言からにおってくる違和感の素を
掘り出した気がして、ヒザを叩いたものだ。
そして佐野さんはなんて深い目で人間を見る人だろうと
感心してしまった。
愚痴と共に母の一生を的確に描き、
終わりに近くなってきて、現在の佐野さんが認知症の母と
1つのベッドに入ってする会話はやっぱり心が震える。
佐野さんは母を許す。
よかったな、と素直に思えた。
だって、
最初から最後まで、佐野さんのきついこきおろしの文章の中には
「母さん、愛してる。母さん、愛して」って言葉が含まれているように
感じられてならなかったから。
読了後、
わたしの中で佐野洋子は、ただの佐野洋子となっていた。
また彼女の本を読もうと思う。 -
佐野洋子さんの母娘関係を綴った私小説(と私は読んだ)。
4歳のときから母を憎んで憎んで、そのことに自責の念があり。という壮絶な関係を、独特の文体で時代が行きつ戻りつしながら進んでいく。
詩人の言葉。この人は詩人なんだと強く思う。頭に浮かんだ言葉を並べていくだけで絵になるような。その言葉の率直な乱暴さが、否が応でも家族に対する想いを浮き彫りにする。
「人は皆、狂人なんだ。長い間私がそれを認められなかっただけで」
というような言葉があって非常に深く心に残った。 -
母親を嫌いな娘が、母親が嫌いと人前で口にすると、
実際にこころの中で思っていたよりも、ずっと、軽薄に響くものだ。
娘は、そうやって軽々しい声を出して、母親を救っている。
本当は、もっともっと嫌いなんだ。 -
母と娘の難しい関係。
著者の赤裸々な告白。 -
将来、親の介護をする時に思い出すかもしれない。
最初は少し読みにくいと思った文章のリズムや繰り返しのセリフが、だんだんクセになってきて、読み終わったあとにもう一度読みたくなった。
最初の方は兄弟の説明で、わけがわからなくなり、家系図を書きたくなった。 -
話があっち飛びこっち飛びしたり、同じエピソードが違う話の時にも出てきたり、その話の肉づけの仕方が独特で、最終的に厚みが出る面白い文章だなぁと思いました。
佐野洋子さんの気持ちはとっても良くわかりますし、本当に勝手なのですが、最後結局気持ち良くなっていて、なんだよって思ってしまいました。
救いがない事だって多いと思うので… -
佐野洋子さんの「おじさんのかさ」と「だってだってのおばあさん」を子どもたちとよく読んで、大好きだった。佐野さんがエッセイストでもあることは知らなかった。ある日お気に入りの本屋さんで見つけて、すぐに読んでにたいと思って購入した。
今でいうと、虐待と呼ぶのだろう。佐野さんは幼いころ、母の「シズコさん」に優しくされないばかりか、手も繋いでもえあえなかった。でも泣いたりしない、謝りもしない、強情な子どもだったという。
弟と兄を子どもの頃に病気で亡くす。
そんな佐野さんが、母との確執とそれが溶けていくまでのさまざまなエピソードを綴っている。
過去と現在がいったりきたりするので読みづらかったけど、でもそのつかみどころがあるようでない感じが、佐野さんの絵本の雰囲気と共通しているように思った。
佐野さんは、大嫌いだった母が「呆け」て初めて、お母さんの体に触れ、母に添い寝し、許すことができたという。
エッセイの中では、戦後幼い子を抱えて中国から引き揚げてきて、貧しさの中、子どもを失い、夫も早くになくしながらも、残った子ども四人を大学に行かせたことを、私にはできないという。それは、母を許したから、自分に酷くした母の根底にあったものを理解しようとすることができたのか、わかっていたけどずっと許せなかったのか…
佐野さんのお母さんはひどい。でもその苦労を思うと、何が良くて何が悪なのか、線を引くのは難しい。
お母さんとの葛藤、幼いころの傷を抱えながら生きていた佐野さん…お母さんのこと許すことができて、きっと本当にうれしかったのだろうな。
いい本との偶然の出会い。うれしい出会いだった。