シズコさん (新潮文庫)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101354156

感想・レビュー・書評

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  • 娘は幼い頃に拒絶の反応を受けて以降、母を冷淡に見つめ距離を取るようになる。母と娘との“きつい”関係を赤裸々に描いた本作。

    母を捨てたという自責の念は、母の痴呆とともに和らいでいく。年月を重ねたからこそ気付けることは多い。母娘関係に溝を作る女性たちに対しての、著者なりの肯定とエールを込めた作品なのではないかと思う。甘くは終わらせず、跳ね返すわけでもなく、必ず現実的な適量を与えてくれる佐野さんの作品に救われる人は多いはず。
    もう少し年齢を重ねてから、また改めて読んでみたい。

  • 泣いた。深い深い愛だなぁ(などと言ったらそんな陳腐な言葉で片付けるな、と著者に怒られそうだけど)。
    ここまで自分を直視するのってどんな作業だったんだろう。ほり返して客観視して文章にする作業。人間、見たくないものは見ないまま生きて、何となく満足して死んでいくことだってできるのに、病気をして弱った身体でなんでこんな業ができたのか。母とはとことんそりが合わなかったけれど、呆けてようやくその心に触れることができた、見送ることができた、めでたしめでたし。なんてハッピーエンドはご本人にはありえなかったのだろうか。
    人間には、本当は生まれた時から悲しみや苦しみが張り付いているのだと思う。現代は身のまわりにハッピーにさせてくれるものがたくさんあって、日々見ないですんでいるけれど。
    私は私の母が大好きだけれど、あんなに愛情をもって介護できるだろうか。読後、何となくおかーさーん!と叫びたくなるような温かい本でした。

  • この本を読むと、女性って生まれながらにして女で、それでいて一貫しているということがわかる。でも、呆けてから菩薩のように、優しくなっていくのは、男もそうかもしれません。だんだん人間が大きくなって、昇華していく感じがする人っているような気がします。

  • 彼氏・彼女が事故やら病気やらで死んじゃってお涙頂戴な作品は腐るほどあるけど、例えばうまく難を逃れて結婚できたとしてもその二人は決して現実では幸せになれねぇよ。本著は家族っていう社会の構成単位として一番小さく歴史も長いものの欠点やら、愛情やらを教えてくれる良い本。合う合わないはあると思うけど、こういう本音を言ってくれる本がもっと増えてくれたら世の中どうなるだろうなぁ。

  • 正直な佐野さん。
    私の母は80になります。
    いつか佐野さんのように思える日が来るのでしょうか。

  • 高校生にオススメの本にラインナップしていたので、読んでみることにした一冊。母を愛せないときがある。よかった。私だけではない。でも大好きな母。大切な人。いないと困る。親子は、良いところも悪いところもわかるから、理屈じゃない。なんだか、行ったり来たりする文章も、母との日常のリアル感となってよかった。母を大事にしよう。

  • なるほどこんな母娘関係。一気に読んだ。

  • お母さんとの長年にわたる確執、複雑な感情を描いた自伝です。
    この本によると佐野洋子さんのお母さんはもう既にこの世にはいなくて、亡くなる前には老人の入る施設に入っていたようです。
    それもかなり高級な。
    それは自分が母親を愛せない罪悪感の裏返しだと作者は言います。
    そして、何度もこの本には施設に入れた母親に対して申し訳ない、罪悪感を抱いていたというのが書かれてあります。
    それを読んで、「あ~、この人はやっぱり優しい人だ・・・」と思いました。

    シズコさんというのはお母さんの名前なんでしょう。
    私が見逃しただけかもしれないけど、作中その名前は出てきてない。
    そして、この本では弟が、叔母が、弟の嫁が・・・と書かれているかと思うと、いきなり何の説明もなくそれらの人が名前で出てきて、「ん?これ、誰のこと?」と思いながら読むというのが多々ありました。

    佐野洋子さんのお母さんはある意味、すごい人だとこれを読んで思いました。
    7人も子供を産んで、42歳の時に夫を亡くしてからはそれまで専業主婦だったのにすぐに働きだし女手ひとつで子供を大学までやった。
    行動力もあり、社交性もある。
    家事も完璧にこなす、まるで女性の鑑のような人。
    女性として、こんな人に素直に憧れます。
    そうかと思えば、すごく心が冷たい人だ、情がない人だ、と思う事が色々書かれてあり、特に知恵遅れの自分の弟、妹に対する態度が書かれたエピソードには心の中で口があんぐり開きました。
    その母親と全く違う性格だったのが、母親の妹、つまり佐野洋子さんの叔母さんで、その人は愛情の塊のような人だとここには書かれてあります。
    姉妹、兄弟って、同じ境遇で育ってもどうしてこんなに性格がまるっきり違ったりするんだろう・・・。

    4歳の時、母親の手をつなごうとして邪険に手をふりはらわれて以来、二度と手をつながないと決めた佐野さん。
    それから長い長い歳月の後、お母さんが呆けてからその手をつないだそうです。
    愛されないことも、愛せないこともどちらも本当につらい。
    母親を施設に入れるため、多額の身銭を切ったのは『憎しみの代償だと思っていた』と書かれてありますが、その憎しみこそが愛情の裏返し。
    愛さなくてもどうでもいい人にどうしてこんなに憎しみを抱けるだろう。
    それが悲しいことに親子という関係なんだと思う。

    今は二人ともこの世にはいない訳ですが、天国でわだかまりも何もなく笑い合っていて欲しいと思いました。

  • 佐野洋子さんのエッセイはどれも好きですが、私はこの本が一番好きです。好きというか、とにかく泣けます。
    お母様への思い。誰もが自分と重ね合わせて引き込まれると思います。
    自伝的な内容で、文章もとってもお上手で尊敬している一人です。

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著者プロフィール

1938年、北京生まれ。絵本作家。ベストセラー『100万回生きたねこ』のほか『おじさんのかさ』、『ねえ とうさん』(日本絵本賞/小学館児童出版文化賞)など多数の絵本をのこした。
主なエッセイ集に、『私はそうは思わない』、『ふつうがえらい』、『シズコさん』、『神も仏もありませぬ』(小林秀雄賞)、『死ぬ気まんまん』などがある。
2010年11月逝去。

「2021年 『佐野洋子とっておき作品集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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