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  • Amazon.co.jp ・本 (571ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101373218

作品紹介・あらすじ

昭和40年代の初め。わたし一ノ瀬真理子は17歳、千葉の海近くの女子高二年。それは九月、大雨で運動会の後半が中止になった夕方、わたしは家の八畳間で一人、レコードをかけ目を閉じた。目覚めたのは桜木真理子42歳。夫と17歳の娘がいる高校の国語教師。わたしは一体どうなってしまったのか。独りぼっちだ-でも、わたしは進む。心が体を歩ませる。顔をあげ、『わたし』を生きていく。

感想・レビュー・書評

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  • 図書館のレファレンスコーナーを利用したことはありますか?
    本書は普段行く図書館の司書さんに選んでいただいた物。
    私の話をメモしながら聞いてくださり、「これがいいですよ!」と出してきたのが、北村薫さんの「スキップ」「ターン」「リセット」であった。

    不思議な体験(冒険物以外)をしつつ心温まる話を求めていた。自分で調べて借りても好みが違い、返却することを繰り返し、自力で探すのは難しいなと困っていた。
    そこであのコーナーに勇気を出して一度飛び込んでみるかと。
    でもレファレンスコーナーは、何か調べ物があり、その資料を探してくれるような所、小説まではどうなのよ…!?とうろうろしていたところ、
    「どうしましたか?どうぞ、何でも相談してください」って。
    そんな経緯で青山美智子さんの「お探しものは図書室まで」、みたいな体験をした。
    そして「またいらしてくださいね」とまで言ってくだすって…(;_;)行くわ〜また。
    ヨシタケシンスケさんの「あるかしら書店」にあったように、「(図書館で働く人は)本が好きな人のことが好きな人」ってホントなのかなと信じたい(^_^)

    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

    17歳の「私」が25年後の「私」にスキップしてしまう。
    私は後者の年齢層なので、少女時代もあった私の懐かしさと、今を生きる私とどちらも感情移入できた。

    25年後の「私」は家庭を持ち、高校の国語の教師になっていた。
    スキップしたことを受け入れ、適応しようとする「私」の意思の強さや行動力が素敵であった。とてもできることではない。
    その一方、現実も目の当たりにする。
    両親は?私は帰れるのか?
    そして記憶喪失の状態なのではないか?という疑問……
    いや、違う。私の25年間は、忘れてしまいたくなるほどの生き方をしてきたと言うのか?
    結局、元に帰れないのだ…。両親にも会えない。
    この描写には泣いた。

    二度と手にできないもの(過去)がある一方、今のこの時を大切に過ごそうと思った。
    また基本的に変わらず、しかし色々な経験を積み重ねて少しの知恵や知識を得ている今の自分を肯定しつつも、
    若々しいあの頃の純粋なキレイな気持ちみたいなのはどこに行ってしまったのか…取り戻したい、取り戻せるはずとも思った。

    しかしよく考えると空白の25年間は何だったのか。もやもやしている。描かれていないことがいいのかもしれないのだが…。
    読解力の問題か。また読み返してみよう。

    • ポプラ並木さん
      楽しんで下さいね
      楽しんで下さいね
      2022/05/08
    • ひまわりめろんさん
      なおなおさん
      こんばんは!

      「本が好きな人のことが好きな人」いっすね
      絶対そうですよ

      そしてなんかちゃんと素敵な体験もしてるんすね
      良か...
      なおなおさん
      こんばんは!

      「本が好きな人のことが好きな人」いっすね
      絶対そうですよ

      そしてなんかちゃんと素敵な体験もしてるんすね
      良かった
      心配して損したw(なにそのコメント!)
      2022/05/21
    • なおなおさん
      ひまわりめろんさん、おはようございます。

      この"お探しものは図書室まで"体験は最近で、あの図書館本濡れ衣事件とは別の図書館です(引っ越した...
      ひまわりめろんさん、おはようございます。

      この"お探しものは図書室まで"体験は最近で、あの図書館本濡れ衣事件とは別の図書館です(引っ越したので)。
      あの事件で嫌な思いもしましたが、自転車で5分と近く、子供ボランティアスタッフによる活動やブラインドブックフェアなどもあって、良い図書館でした。
      ご心配いただき、ありがたい…なおなおは元気です^^;
      ひまわりめろんさんの本棚は駆け込み寺でもあるの?w
      困ったことがあったらまた伺います(`・ω・´)ゞ
      2022/05/21
  • 2021年1発目。どうせ「夢オチだろう?」と高を括っていたが高級感抜群。昭和40年頃、女子高生の一ノ瀬真理子が目が覚めると42歳になっていた。真理子は高校の国語の教師であり、夫と17歳の娘がいる。真理子は未来の自分に負けたくない一心で高校教師を勤める。夫、娘の理解と協力によって、試験問題作成、担任、部活、文化祭など悪戦苦闘するが、自分らしく勤める。本当なら17歳の真理子の健気さをいつの間にか応援している。ただ両親が亡くなっており二度と会えない真理子が、夫と再度の恋に落ちる乙女の姿にジーンとなった。

  • 全然覚えてないのだけど、こんなような夢を見たような
    でも全く覚えてないので、全然別のきっかけだったのかもしれないけど。

    なんか突然、この本が気にかかり、図書館で何気に目に入り、なんとなくそのまま借りてしまいました。
    懐かしいなぁ。
    すっごいむかしに読んだ気がしてたけど、今世紀になってからだし、そうむかしでもなかった。

    10年前の2003年だとちょっと最近な気がして感覚が変なんだけど、さすがに25年経つと人も世も変わるよね。
    タイムスリップもののSFファンタジーというイメージがあって、最後元に戻らないことにすごく衝撃だった記憶があるんだけど、これそういう話じゃないよね。

    まぁ、古き良き時代の優秀な文学少女だったとしても、どんなに聡明で柔軟な心の持ち主だったとしても、25年後の世界を受け入れて、高3の国語教師を果たせる17歳はあり得ないと思いますが、この話を通して伝わってくる、初心を忘れずおごらずに自尊心を持って相手の目線に合わせることの大切さだとか、そういう真摯で前向きな感じがすごくいい。

    高校生には絶対読んでほしい本だなぁと、今あらためて思いました。
    そして、桜木真理子先生に近い年の人が読んでも、現状で楽しく頑張れる気持ちをもらえると思う。

  • 「───わたしは、百人の男と寝たい」

    これが書き出しだったら、綿矢りさでしょうが、そういう話ではない。
    いわゆるタイムスリップもの。
    この本が何故に書棚の奥に入っていたのか、未だに分からない。
    本を整理していたら、にっこり笑いながら顔を出してきた一冊。
    北村薫がかなりの年配で、しかも男だったというのを初めて知った。
    だが、読み始めたら面白い。止らなかった。
    昭和40年代初めに17歳だった女子高生が突然25年後の未来に飛んで、42歳の主婦に。
    そのうえ高校の国語の先生。
    しかも娘が17歳。
    その娘が帰宅すると、主人公が「教えてください。ここどなたのお宅なんですか?」と訊ねる。
    娘の返事は「ふざけてるの? ───お母さん」
    ですよね、もちろん。
    そんなことあり得ない。ジョーク? 記憶喪失?
    いずれにしても現実ではそう簡単に娘は信じないでしょうが、まあ、そこは小説だからと軽く受け流したい。
    この作品はそんな陳腐なタイムスリップめいたものがテーマではないはずだから。
    とにかく、一瞬にして昭和から平成に飛んでしまった一ノ瀬真理子。失われた25年の間、自分がどういう人生を歩んできたのか全く知らない。それでもその理不尽さと今の世界に正面から向き合い、生きていこうとする。そして、それを支える娘と夫。
    人の絆、人の優しさを随所に感じさせる温かい作品だ。
    登場人物が魅力的で誰もが生き生きと描かれ、しかも優しい。
    現実にはこんな人間ばかりいないけれど。でも、自分の周りがこれほど優しい人たちばかりだったら、人生はどれほど楽しいものだろう。
    バレーボールの試合。
    真理子さんが語るように、東京オリンピックの決勝「東洋の魔女対ソ連」の試合を彷彿させた。(私は生で見てないが、その後のニュースで何度も放映されたので、神永がヘーシンクに敗れ日本柔道の未来に暗雲が立ち込めた試合と同様、記憶の片隅にある)
    「金メダルポイントです!!」有名な台詞だ。
    手に汗握りながら、ニコリ島原さんを応援した。

    泣けました。泣きました。
    読了後すでに一週間以上経つので、どこで泣いたんだろう?と再びページをめくった。
    かつての友人との再会場面か。それともバレーボールの試合終了後か。或いはやはり、
    「お父さん、お母さん、わたしはもう二度とあなた方に会えません」だったか。
    遥か忘却の彼方へと遠のいた時代と決別し、現実を受け入れ、前向きに生きていこうと決意する真理子。
    映画「ALWAYS三丁目の夕日」のように、ああ人間って素晴らしいな、としみじみ心に響いてくる逸品でした。
    生きるのが辛いな、と感じたときに読むのがいいような。

  • 主人公の桜木真理子さん。いや、この場合は一ノ瀬真理子さんになるのか?何れにしても、ユーモアに溢れていてチャーミングで、とても素敵な女性だと思った。

    美也子さんも、桜木さんも、とても懐が開く、素敵な家族だなぁと思った。
    自分の母が、妻が「わたし、17歳なんです」なんて言ったら、びっくりするよね。
    確かに最初は二人ともびっくりしてたし、信じてはなかったけれど…今までは親子と夫婦、と言う関係だったのが、人間対人間の関係に変わっていって…その過程がとても良かった。

    また、新学期が始まる!と言うので、家族一丸となって対策を練ったりしていたシーンがとても楽しかった。

    10数年振りに読み返したが、当時とは思うことが全然違ったのも、個人的にはとてもいい読書体験になった。他の2作も読み返そう。

  • 「時と人」三部作の1冊目。3作の中では圧倒的に本書がお気に入りです。

    17歳の少女が自宅でうたたねをして、目が覚めると42歳。同い年の子供と-見知らぬ夫が居る。

    怖い。この設定はホラーそのものだと思います。久しぶりに再読してみましたが、なまじ展開を覚えているだけに、昭和40年代の日常の何でもない描写が痛々しくてドキドキしました。

    タイムスリップものは巷に溢れかえっていますが、時代を飛んでみていちばんの衝撃が「夫がいる」だった、というのはある意味斬新で、でもよくよく考えてみると当然の反応です。この辺り、男性でありながら女性の心理描写がびっくりするほどリアルな北村作品の特長が良く出ていると思います。

    そして、飛んだ後の展開がまた秀逸。普通なら「なぜ飛んだのか」「どうやって戻るか」に主眼が置かれるところですが、主人公はそれどころではありません。"昨日"までとまるで違う今日を、そして恐らくはやって来る明日をどう生きるか。そこにこそ作品の力点が置かれます。登場人物が現実を受け入れすぎている、リアリティがない、という批評ももちろんあるでしょう。でも、目の前の現実に対峙し、乗り越え、そして受け入れていくこと、それこそが彼女にとってのリアリティだったのだと思います。

    幕引きはとても哀しく、でも前を向いて本を閉じることが出来る。出会えて良かった。また読めて良かった。そんな貴重な1冊です。


    補足1:設定を抜きにして、教育論としてもこの本、面白いですよね。学級日誌を読んでいると、高校教師だった頃の北村氏は人気があったのだろうなあと察せられます。

    補足2:単行本の刊行からなんと20年近くが経とうとしています。今書いたならば、やっぱり主人公が一番驚くのはスマホなのでしょうか。

  • 北村薫さんの「秋の花」を読んだのは、2014年5月。そのレビューに真理子には「スキップ」で会えると知って、読まなければ、と書いた。
    我が事ながら遅すぎるというか、よく忘れないでいたというべきかな。勿論、忘れたわけじゃない。

    本当を云えば、父と娘の心が入れ替わったり、男女の心が入れ替わったり(僕が思い浮かべたのは、「君の名は」ではなく、大林監督の映画)、未来と過去の自分の心が入れ替わる物語は読まないし、観ないことにしている。
    だって、そんなことある訳ないじゃないか。心も記憶も頭脳細胞と云う入れ物の中の電気信号なんだから。
    つまり、北村薫さんじゃなかったら手に取らなかった本。

    レビューは、どう書いてもネタバレになりそうで難しいなあと思ったけど、ミステリーじゃないし、他の方も普通に書いてるから、気にせず書くことにする。

    17歳の女子高生が昼寝から目覚めたら、25年経っていて、同い年17歳の娘がいる。当然、配偶者もいる。
    北村さんは上手いなあと思ったのは、その設定。42歳の真理子の職業が高校の先生で、娘はその高校の生徒。配偶者も同じ国語の教師で、タイムスリップは春休みの時。現在の情報の入手できるし、時間の猶予もある。勿論、北村さん自身の経験が活かすことができるメリットもある。

    でも読み進めていくと、そんな安易な考えで書かれているんじゃないと思い知らされる。42歳の身体と17歳の心で描かれる高校生たちの放つ輝き。
    それは、主人公真理子の経験できなかった時間の欠落でもある。その後に経験するはずの大学での学問との出会いや友との語らい、恋愛、結婚、出産、子育て。人生で一番の時間が失われている悲劇。

    その涙の後に、「昨日という日があったらしい。明日という日があるらしい」から続く数行。この物語の最後を美しいものにしている真理子の意志に心が震えた。

    余計な感想。
    僕は1960年生まれ。前の東京オリンピックの時は幼稚園生。タイムスリップ前の真理子から10歳は若い。でも、シャボン玉ホリデーも知ってるし、書かれた諸々は大体わかるし、楽しめた。
    そして、真理子がタイムスリップしたのは、僕が30代の頃。昭和40年と昭和65年の社会と生活の変化って凄かったなと、改めて思うよ。
    現代にタイムスリップしたら、ネットの情報が一番の違いということになるのかな。

    さらに余計な感想。
    17歳の僕の心が42歳の僕の躰と状況に移されたら、とても怖い。でも、妻の心が17歳に戻ったら、もっと怖い。何が怖いのか判らないけど、すごく怖いと思う。

  • 突然17歳の女子高生が、42歳の自分にスキップするという話。なかなか思いつかないパターン。
    ページ数が減るにつれて、最後どうなるのかとドキドながら読み続けたが、ある意味「えって感じ」で終わった。
    自分には合わなかった作品だけど、先生の職務が垣間見れる作品。どうしても、原因とか戻ることを期待してしまう。
    2022年基準だと「広末涼子」が42歳。

    • kuma0504さん
      くりくんさん、
      おお凄い発見!
      今の技術ならスキップできないかなあ。
      声は同じなんだし。
      小説は大好きです。というか、私の初・北村薫。
      是非...
      くりくんさん、
      おお凄い発見!
      今の技術ならスキップできないかなあ。
      声は同じなんだし。
      小説は大好きです。というか、私の初・北村薫。
      是非これでやってほしい!
      2023/01/03
  • この作品を読んだのは、中学生の頃。当時は早く大人になりたいなとか大人になることの実感がわかりませんでした。
    いざ、今になって大人になり、40代に近付くと、スキップすることの残酷さがなんとも言えないなと思いました。
    10代、20代、30代、それぞれの経験がないまま、40代を受け入れることの儚さ・理不尽さと言いましょうか、当時読んでいた時は、あまり深くは考えていませんでした。でも改めて向き合うと、今の状況を受け入れることの決心さや周りの人たちとの優しさなどに考えさせられるなと思いました。

    普通のタイムスリップものでしたら、元の世界に戻るというのが王道でした。ですが、この作品では…というところが斬新で、結構前に読みましたが、衝撃感が記憶の片隅にまだ残っています。ちなみに北村薫さんが男だったことも個人的には衝撃でした。
    北村さんの作品は、凛とした女性のキャラクターを描くのが多いという印象があり、どれも奇抜な発想で面白かったです。

  • やはり間違いない一冊。
    初めて読んだ時はまだ学生で、
    いつかこんな授業がしたいと思ったものです。

    今、国語の教員として教壇に立つようになり、
    何度読み返したかわかりませんが、
    読むたびに、
    主人公のしなやかな強さに励まされます。

    さぁ、また頑張ろう。

  • 昭和30年代の女子高生がうたた寝から起きたら、意識はそのままなのに25年という時間を”スキップ”してしまい、突如42歳の中年女性になってしまったという、設定だけなら名作『リプレイ』の逆のことが起こるお話。あとがきで作者も『リプレイ』について触れていますが、当然ながら内容はまったく別ものです。17歳の心のまま、見知らぬ夫と娘に助けられながら、高校の国語教師という現在の役割りを誠実にこなそうとするなかで、時間とは、自分とは、若さとは何か、というようなことを見つめます。1秒ずつ過ぎてゆけば自然な変化もうたた寝の一瞬で過ぎるとギャップが大きくその差は歴然。同じなのに変わってゆくこと、変わっても同じであることなどなどを、考えたりしました。これぞ北村薫作品という凛としてきちんとした雰囲気のお話で大変おもしろかったです。

  • 記憶が飛んでしまったら?それってボケじゃないの?
    思い出だしたくない過去だけ忘れられたら?そりゃ気楽で良いじゃないの?

    いえいえ、そんな気楽なお話でなく、せつない、せつない物語。
    だって、大切な人生の歩みの証が何処かにいってしまったのだから。

    17歳の高校生の「一ノ瀬真理子」は昼寝から目覚めると、42歳になっていた。
    夫と17歳の娘がいる高校の国語の先生。思い出は17歳まで。「25年という時をロスした」感じ。

    心は17歳の高校生でも身体は42歳の国語教師を、持ち前の「自尊心」で乗り切るその苦闘。
    といっても、しゃかりきに見えないところがいい。17歳の若さの柔軟性がある。
    自分という存在が好きで、信用しているからやっていける。

    初めて北村薫さんの作品を読んだが、語り口がやさしく機知に飛んでいるのはさすが。
    こんなに女性をつつむように描く男性作家は珍しい。

    それから、なんといっても国語の授業の秀逸さ、冴えたる素晴らしさ。ああ、こんな授業を受けたかった。17歳だから出来るというのか。

    そしてせつなさは、果たして17歳の高校生だったいとしい時代に戻れるのかということからくる。

    はてなく 流れる
    時さえ 停まれよ
    輝く 光 今日の日
    今は 美しい

    はてなく 流れる
    時さえ 停まれよ
    輝く 命 今こそ
    君は 美しい

    (作中、真理子さんの作詞した『文化祭序曲』の詩の一部)

    文庫本の解説が母娘なのもしゃれているし、付録「昭和40年代初め」用語ミニ注解なるものも読まずに済む便利さ(単に年くってるだけ)も気に入った。

    なかなかよろしかった。

  • 読み始めから、あーもう失敗した。こんなの読みたいんじゃなかったのに。もっと警視庁捜査一課とかが出る感じのミステリ期待してた、、、あーあ。

    って思ってたわたしを横殴りしてくれちゃうくらいの展開。

    そっち!そっちできたか!と、あらすじをちゃんと読まずになんとなくで読むとこういう目に遭う。嬉しい悲劇。笑笑

    めちゃクチャ面白かった。

    できたら、親子で読んでほしい。入れ替わり小説はよくあるし、東野圭吾の秘密みたいな親子入れ替わりなんだけどさ。なんかさ。なんともさ。なんだかさ、すごいよ。うん。

    これが本当ならものすごいよくできた十七歳だな。と思うし、やっぱり入れ物が変わると中身も変わるっていうのは本当かもしれないな。と、自身で納得。

    小説の中で、大人は十七歳からみて全く別の世界にいると思ってた。


    との記述のあとに、四十二歳の身体に入った十七歳の感想は。最悪。ババァじゃん。っていうね。

    笑笑そうなんですよ。そうなんですよ。

    中身が入れ替わらない40代の旦那さんも一言。変わらない変わらないと思ってだし、見た目は変われど気持ちは10代のままだと思ってたけど、中身が十七歳の妻を見ていてすごくくすんだな。と。実感。笑笑

    そういう、なんとも言えない表現が痛烈に心に染み渡る本。十七歳にも、元十七歳の大人にも読んでもらいたい一冊です。

  • 何か不思議な作品。

    ストーリーとしては悲しくて切なくて、どうにもやりきれないものではあるんだけど、細かな状況描写から浮かび上がる登場人物が優しくて誠実で前向きなので、読んでて暗い気持ちになることがないです。

    自分ではどうにも出来ない事は生きていれば色々あるんだろうけど、絶望するではなくそんな環境でも生き甲斐を見いだして一生懸命頑張る姿っていいなぁと思いました。

  • この本は私の大切なバイブルです。

    17歳の真理子が生きるのは昭和40年代
    そこから25年の時を飛び超える。

    この文庫版の発行は平成11年
    その時から20年以上の時が経っている。令和の今。

    時代は全く違うのに、古さを感じさせないのはどうしてだろう。
    上手くいくことばっかりじゃないでしょう。
    でも、私は進む。
    この顔をぐいっと上げる強さが、憧れであり、私の背中を押してくれる気がする。
    アラフォーの今、学生時代に読んだこの本を、この夏休みにもう一度読んで良かった。

  • 学校から帰宅し、レコードを聴きながらうたた寝してしまった17歳の女子高生、一ノ瀬真理子。どの位寝ただろう、レコードは止まってる、と目を覚ますと、部屋も違う、服も違う。17歳の娘がいる高校教師である42歳の桜木真理子になっている!?という事が段々分かっていき…という設定で、先の展開が楽しみなスタート。
    17歳の娘が寝て目が覚めたらおばさんになっていた、同い年の娘がいる、夫がいる、教師をやっているらしい、等の到底受け入れる事の出来ない状況に戸惑い苦しみながらも、そこから何とか家族の理解、協力を得ながら、受け持ちの生徒とも心を通わす事の出来る所まで成長していく健気な様や、高校生活の様々なエピソードを丁寧に描いていて、好感度高いが、中盤たれ気味、ラストももう少し盛り上げられる展開もあった?、で少々残念。

  • 勝手に(垣谷美雨のリセット)の逆バージョンの様な気がして読んだせいかいまひとつ。

  • 調べると著者は現在71才で直木賞作家であるらしいが、私は今まで存じ上げず、初読みの作家さん。

    ブクログの他人様(ひとさま)のレビューを拝見して興味を持ち、3部作の内の2冊(本書と『ターン』)を図書館で借りてきた。
    ご親切に図書館の方が3冊目の『リセット』も一緒に差し出してくださったのだが、それは最初からお断りしてきた。
    それもブクログレビューのお陰で、自分で判断した結果だ。

    こうして読み始めた本書だが、残念ながら私には合わず、全体の35%くらいのところで読むのをやめた。

    この小説の時代背景に自分を当てはめると、私が4歳の世界から29歳の世界に突如飛んだことになる。
    主人公桜木(旧姓一ノ瀬)真理子が42歳で娘の美也子が17歳の世界では私は29歳だ。
    真理子が17歳の頃の昭和の描写では、わかることもあるし、流石にわからないこともあるという、そんな立ち位置。

    小説内で、突然「私は誰?ここはどこ?」となる設定自体には驚かない。
    伊坂幸太郎氏や万城目学氏の作品が好きな私は、ぶっ飛んだ摩訶不思議な小説の世界にもスッと入り込める仕様となっているはずだ。
    しかし、本書には適応できなかった。
    なんだか中途半端なのだ。

    まずは会話の書かれ方で、42歳の真理子と17歳の娘美也子のどちらがどのセリフを話しているのかが、私としては珍しく判断に苦慮する箇所が多かった。

    また、母親がある日突然「私は誰?ここはどこ?」となったら、まず娘と夫は、病院に連れて行こうってなるよね?
    (娘美也子はその点、もの凄く優しくていい子だとは思ったが)

    25年後の両親は亡くなっているということを(美也子の無言から)悟ってしまうが、それでも次に、さっきまで一緒だったはずの親友、池ちゃん(現在42歳)を探したくなるよね?
    娘に聞くよね?

    まず現在の自分は何者なのか(専業主婦なのか働いているのか、働いているとしたら職業は?)・夫の素性・夫との出会い・夫の親族・自分達の結婚式・娘を出産した時の状況・ご近所さんや現在の自分の友達付き合いはどういうものなのかを全く知ろうとしない。
    それなのに、外からの電話で自分が教師であるらしいということを知り、娘美也子に色々教えてもらい、自分の職場に潜入する。
    そしてまだ何も把握していない段階で、いきなり試験問題を作成しなくちゃとなったところで、「ダメだこりゃ。ついていけない」と思って読むのをやめた。

    ここまでのページで、自分が17歳から42歳にスキップした時に一番辛いだろうと想像したのは、目の前にいて何かと親身になってくれる娘が自分の中身と同じ歳であり、自分が産んで育てた記憶が無いということは、『娘のことを大事に愛おしく想う気持ちが自分からすっぽりと抜け落ちてしまう』という恐ろしい点だった。

    というわけで、ほんの2〜3日で現実を受け入れようとする真理子42歳(中身17歳)は偉いとは思うけれど、いきなり高校の試験問題作成をしようとするというあたりで、「今やるべきこと、そっち?」となってしまい読み続けられなくなってしまった。
    『ターン』も読まずに返却する。

  • 17歳の少女が、雨の夕方ちょっと横になり、目覚めたら42歳の主婦になっていた。
    女子高生の主人公が、目覚めたら結婚して子供もいる42歳の自分に早送りされていたというのは、今まで目にしてきたタイムスリップものとは一味違う。
    自分ならもっと途方に暮れてしまいそうだが、真理子は受け入れられない思いを抱きながらも、その世界の自分がやるべきことを自分自身の事として取り組み始める。
    42歳の自分は、高校の国語教師なのだ。
    高校生の真理子が、高校の教師としてやっていけるのか、夫や娘とはどう過ごしていくのか、そしていつか元の世界に戻るのか、ドキドキしながら引き込まれました。

  • 強くて美しくて、もろさを必死にこらえて生きる主人公、真理子に惹かれる。
    彼女に惹かれる娘や、旦那や、生徒たちとともに心が躍る。
    でも、時は戻れない。戻れないのだろうか。
    真理子は40代としては「強くて美し」いし、だからそこ、「もろさを必死にこらえて生きる」姿に惹かれる。
    しかし彼女は17歳なのだ。
    親友が、同様に歳をとって現れて、「一ノ瀬」って呼んでいたのに「真理子」なんて呼ばれたら、どれだけ絶望するだろう。どんなに苦しいだろう。彼女は17歳なのだ。17歳が懸命に生きた姿が、みんなには「おばさん」が「強くて美しく」見えているのではないか?
    だとすればあまりに残酷だ。

    最後に引きつけられ、私は絶望する。
    「お母さん」
    娘にそう言われる。受け入れる。
    17歳ではないのか、いいのかそれで。

    受け入れてしまったら、もう17歳に戻れないのではないか?25年もの時を、失ってしまったままでいいのか?好きな人と恋をして両思いになって手を繋いでキスをして、そんな時間を、諦めてしまうのか。

    次を読まなければ。

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著者プロフィール

1949年埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。大学時代はミステリ・クラブに所属。母校埼玉県立春日部高校で国語を教えるかたわら、89年、「覆面作家」として『空飛ぶ馬』でデビュー。91年『夜の蝉』で日本推理作家協会賞を受賞。著作に『ニッポン硬貨の謎』(本格ミステリ大賞評論・研究部門受賞)『鷺と雪』(直木三十五賞受賞)などがある。読書家として知られ、評論やエッセイ、アンソロジーなど幅広い分野で活躍を続けている。2016年日本ミステリー文学大賞受賞。

「2021年 『盤上の敵 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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