晴天の迷いクジラ (新潮文庫)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (430ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101391427

感想・レビュー・書評

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  • 女性の作家さんの作品てあんまし肌に合うものがないから普段何となく避けているんだけど、この作家さんは前作の「ふがいない僕は〜」がズドンと響いたので手に取ってみた。私の中では湊かなえと桜庭一樹の中間的な立ち位置で、描かれている世界観はやっぱりもの凄く好みでした。

    最初の3章で登場人物それぞれのキャラクターをじっとり(って形容詞がすごい的確な気がする)描いて、最終章では3人それぞれが欠けてる部分を不格好に補い合いながら、自分をほんのちょっとだけ取り戻していく。絶望的な世界の中のふんわりとした幸せが、何とも言えない余韻を残してくれます。

  • 由人は母親から愛されていた実感のない子供、野乃花は子供を捨てた母親、正子は母親の過干渉を受けている子供、三者三様の過去があり、悩みがあって、人生の迷宮に入り込んだようで、特に自分と同じ性別である野乃花と正子に関しては息苦しさを感じた。
    死にたくなった3人が浅瀬に迷い込んだクジラを見に行き、それぞれ心の整理をつけ、最後には明るい兆しが見えて読み終わった後は心底ほっとした。
    3人を家に泊めてくれたおばあちゃんが実にいい味を出していた。

  • 由人、野及花、正美、死へと向かっていた3人が湾に迷い込んだクジラを観に行くという話を窪さんがどう描くのか、読む前から期待大。 一人一人の背景が丁寧に描かれていてそれぞれの辛さや苦しみがひしひしと伝わる。そして3人が交わりクジラを観る最後の章では、3人共が少しずつ生へと向かっていくその変化がとても自然で 無理に頑張って立ち上がることなんてない、と気付かされる。ラスト、由人がフラれた彼女に貰ったキーホルダーを叫びながら投げる場面で一気に力が抜けて未来は明るいだろうと想像。

  • なんか 息苦しかった
    生きて行くって かなり大変なんだよね(゜.゜)
    テレビで難民の人が 生きてることは 奇跡なんですよって言ってたけど そうかもしれない

    病を障害をもって 毎日薬もたくさん飲んですごしてる
    止めたら 人混みに行ったら…
    そんなこと 考えたりするけど
    みんな いろんなことで 自分と向かい合っているんだなぁと 重ねたりして 苦しかったです

  • なんとなく、自分の過去と重なる部分が多くてリアルだった。主人公が多い多角的視点の作品は個人的に読みやすいのでまたこの著者の本を読もう、と思った。

  •  面白い……んだけれども、物語が起きるまでの登場人物たちそれぞれの過去と、出会ってからの現在の姿に微妙な違和感を感じる。え、これ同じ人なの?的な違和感がある。過去書いてる方が楽しそう。
     ただ、構成としても、過去に2/3、そこからエンディングまでが1/3の割合になっており、後半スピード展開すぎる気がする。もう少し丁寧に書いて欲しかったなぁ。
     あと、全員毒母で笑うしかない。
     女の部分を排除した老婆しか赦されないってどれだけ女性を憎んでいるんだろうか。女の敵は女か。憎む先はそこなのかってなる。

  • なんか、、すごい本だった。

    クジラの町のばあちゃんの独白と、雅晴の独白は悲しかったなぁ。泣いた。
    子どもは親を選べない。
    そのことの重みが、ずっしりとくる。
    正子ちゃんのやりたいことすればよか。
    正子ちゃんはそんために生まれてきたとよ。
    涙涙。

  • 家族の歪み。偏り。
    歪んでしまった家族のなかに居ることに耐えられなかったそれぞれ3人が、たまたま出会い、仮初の「家族」になる。
    座礁クジラというスケールの大きな存在と、死に向かう彼らが重ね合わされて、やるせなくて苦しくてたまらない。

    どの家族にも、「母」の歪みがある。
    執着。不安定。感情的。
    いますごくこどもを抱きしめたい。

  • 文字を目で追いながら、素手で皮膚の下を触られるような、突き刺すような痛みを感じた。比喩が次々と心の琴線に触れた。人生は自分の意思とは関係なく進み、わたしたちはいとも簡単に絶望に陥る。そして極限まで追い詰められた人々は自ら「死」を選ぶ。クジラだって自殺する。でも「めちゃくちゃに苦しんでんだったら、その苦しみからいち早く解放させてやればいいんだ。命を救うことよりも苦しみから解放させてやるほうが大事なんだから」と言われるクジラと「なーんにも我慢することはなか。正子ちゃんのやりたいことすればよか。正子ちゃんはそんために生まれてきたとよ」と言われる人間とじゃ随分違うなぁ。

  • 窪美澄は絶望的な展開が上手い。
    家族や恋人や仕事によって壊れる人たち。
    残るは自ら死を選ぶしかないと思うのだが、他人に対しては『こらこら、自殺なんか考えちゃダメでしょ!』なんて事を考える。
    「ふがいない・・・」もそうだが、ハリウッド映画の様な能天気なハッピーエンドではなく、前向きに歩みだそうとする事に安堵する。

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著者プロフィール

1965年東京生まれ。2009年『ミクマリ』で、「女による女のためのR-18文学賞大賞」を受賞。11年、受賞作を収録した『ふがいない僕は空を見た』が、「本の雑誌が選ぶ2010年度ベスト10」第1位、「本屋大賞」第2位に選ばれる。12年『晴天の迷いクジラ』で「山田風太郎賞」を受賞。19年『トリニティ』で「織田作之助賞」、22年『夜に星を放つ』で「直木賞」を受賞する。その他著書に、『アニバーサリー』『よるのふくらみ』『水やりはいつも深夜だけど』『やめるときも、すこやかなるときも』『じっと手を見る』『夜空に浮かぶ欠けた月たち』『私は女になりたい』『ははのれんあい』『朔が満ちる』等がある。

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