- Amazon.co.jp ・本 (270ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101405209
感想・レビュー・書評
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とにかく文章が美しい。気障な表現や難しい言葉を使っているわけではないのに、なんでこんなにも心に響くのだろう。極限まで美しいものを見たとき、人は言葉をなくすというけれど、それにプラス涙も出ることをこの小説を読んで知った。
今世では経験することができない、風情のある男女の話。
意地っ張りで不器用だけど、とても愛おしい。
5作品すべて好きだけど、私の叔父さんは号泣した。
永遠のような時間をありがとうございました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
どれも心に残る話だったが、特に「ピエロ」が良かった。主人公の夫の心情は一切描かれないが、著者お得意の終盤のどんでん返しによって、妻への愛情が浮かび上がってくる。妻が気付いた時には、もう遅いのだが。
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内容(「BOOK」データベースより)
マニキュアで描いた花吹雪を窓ガラスに残し、部屋を出ていった歳下の夫。それをきっかけに、しっかり者の妻に、初めて心を許せる女友達が出来たが(「恋文」)。二十一の若さで死んだ、姉の娘。幼い子供を抱いた五枚の写真に遺された、姪から叔父へのメッセージとは(「私の叔父さん」)。都会の片隅に暮す、大人の男女の様々な“愛のかたち”を描く五篇。直木賞受賞。 -
『娯楽』★★★★☆ 8
【詩情】★★★★★ 15
【整合】★★★★★ 15
『意外』★★★★★ 10
「人物」★★★★★ 5
「可読」★★★★☆ 4
「作家」★★★★★ 5
【尖鋭】★★★★★ 15
『奥行』★★★★★ 10
『印象』★★★★★ 10
《総合》97 S+ -
ところどころ・・・各ページに1か所ぐらい、手を止めてしまう描写があり、数ページに1回、本を閉じたくなる。
いつまでたっても私なんておこちゃま。そんな気がした。 -
『私の叔父さん』が一番好き。
「大人ってのは、嘘をつけることだ」
「本当のことでも言ってはいけないことなら口に出さない人のことだ」
「十九年前、俺も夕季子も真実の気持ちを全部嘘にしたのなら、今この嘘を全部真実にしてやる」
5枚の写真が語った言葉を知った瞬間は震えた。
解説で、この本はミステリーだと言っていたが、確かに、ミステリーだと思う。 -
表題作の「私の叔父さん」が一番好き。
最後に全身で訴えていた18年も前の愛の言葉が届くなんてしみじみ。
でもどの作品も物語上の「いい話だなー」という展開の後にぽっかり満たされない虚しさが残るのは何なのか…。 -
恋愛の美しい部分だけを切り取ったような短編集。
恋愛における「嘘」が軸になり、どれも切ない余韻を残す作品となっています。
自分のためであれ、相手のためであれ、恋愛を取り巻く嘘はどれも哀しすぎる。
「恋文」
登場人物の誰もが少しずつ欠落した部分を持っていてそのちょっとずつの見栄とか同情とか強がりとか中途半端な優しさとかが小さな嘘となって、最終的にどうしようもなく切ない気持ちにさせてくれる作品。
「紅き唇」
いつもいつも他人を優先にしてきたおばあちゃんの最初で最後のワガママの叶え方が、なんともいとおしい。パチンコの景品を自分へのプレゼントにするおばあちゃんのいじらしさ。
「十三年目の子守唄」
これだけ妙にミステリー色が強い。
テーマも恋愛ではなく父子。
「ピエロ」
優しすぎる旦那を試すように裏切ってしまうなんて哀しすぎる。「失敗をもっと大きな失敗で庇う旦那」という設定が最後に生きるあたり、さすが連城さんだと思う。
「私の叔父さん」
こんなかっこいい叔父さんいたら好きになるのは当然。でも、お互いに選ばなくてよかったんだと思う。
好きになるひとと、結婚するひとは別って話をカメラのレンズを通して描くところが巧い。