恋 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (517ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101440163

感想・レビュー・書評

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  • マルメロの香りを知りたくなりました。最終章で 泣きました。

  • 「浅間山荘事件が、あのうねるような1つの時代の終焉を告げるものであったとするならば、私は私で、ある日を境に自らの生にピリオドを打ったのである。或る種の幻想に浸っていられた時代。
    そんな時代と共に生き、共に私も終わった。そう考えると、今でも、不思議な気持ちに駆られる」

    直木賞受賞作。

    物語は、ある女性の死と、その人生を追った作家の交流から始まる。浅間山荘事件の起こった日、新聞欄の一面を飾る事件の詳細のそのほんの隅に、彼女が起こした事件が載っていた。
    猟銃で撃ち殺されたのは、電気屋の男
    重傷を負った彼女の不倫相手である大学教授。
    そしてその場に居合わせた教授夫人。
    一見、単なる不倫のもつれにも思えるこの事件。
    その奥に潜む悲しい秘密と、恋の物語。


    いやー。
    これよかったです。
    まず文章がうまい!
    展開もうまい!
    すっごくどろどろしてるのに
    それが嫌じゃないどころか
    凄く小さな子どもの凄く純粋な恋のストーリーにも思える。

    お互いのお互い以外の相手との行為を
    嬉しそうに報告しあう夫婦。
    それが出来たのは、そうすることで
    相手の全てを知った気になれたから。
    自分に話してくれている間は、
    その相手に対して本気じゃないから。
    だったら最初から遊びを許して、
    共有したほうがいいじゃない?

    そこに新たな秘密が生まれたとき。
    悲劇は始まった。
    慎太郎の怒りが、痛いほどわかった。
    慎太郎は愛してた。
    痛いほど。
    布美子も愛してた。
    痛いほど。
    でも
    雛子は、別の人に恋をした。
    気付いてしまった。
    禁断の果実に。

    最初から二人の間にあった
    悲しい秘密を
    うすーいベールで、必死に隠してきたのに。
    たった一度の恋が、その全てを終わらせた。

    恋の恐ろしさ。
    愛のもつ狂気。

    時代の持っていた独特の空気がこの作品に素晴らしく合っている。
    この設定で、この時代背景にしたところにこの作品の成功の秘訣があるのかもしれない。

  • 複雑な男女関係だが、スラスラ読ませられるのは、作者の筆力とキャラ設定が秀逸だからだと思う。オチが冒頭でわかっているのに、動機が気になって一気に読んだ。

  • 引き込まれてすらすらと読めた。
    すごい分厚い本なのに、読みやすい。
    前の「欲望」のときにでてきた、三島を模倣する男と、その妻、というのと今回の夫婦がやけに重なったけれど…。きっとそういう空気感、なんだろうな。実在する様子は、想像できない。でも、あったらいいな、みたいな。三島、浅間山荘事件、退廃、みたいな。そのあたりをうろうろする。

  • 自分の気持ちに説明がつかなくて苦しかった時にたまたま読んだこの本の中に気持を代弁してもらえる一文がありました。その箇所を見つけた時の解放感から忘れられない1冊に。

  • 浅間山荘事件の日、一人の女子大生が発砲事件を起こす。なぜ彼女がそのような事になったのか‥といっても赤軍派の話ではなく、最初彼女が嫌っていたブルジョワの世界に偶然に出会い、憧れ、そしてその世界から逃れなくなり犯罪を犯す。主人公の気持ちの変化に違和感なく入れ込めるところはさすが小池真理子。繊細かつ安定感がある。

    10年ほど前に一度読んだけど、今回もよかった。

  • 1970年代。大学生の布美子は片瀬信太郎、雛子夫妻と出会い、二人に同時に惹かれていく。学園闘争の喧騒を他所に、夫妻と過ごす官能的で頽廃的で濃密な時間に溺れていく布美子。しかしそんな生活に終止符を打つ事件が…。
    エロティックでありながらひどく精神的な恋の話である。それを描ききったところはさすが直木賞を受賞しただけはあるし、読み応え十分だと思うが、ただ、最後の生原稿のくだりがくどくどした言い訳じみていてちょっと興ざめ。マルメロの話で十分だったのではないか。
    ☆直木賞

  • 私はこの本に対してどのような感想を抱いたのだろう。それは言葉で表すには難しいものなのかもしれないし、逆に何も感じなかったのかもしれない。
    正直、読み終わって、いつものようにはっきりした感想が浮かんでこないのだ。困った。だが、何も感じていないことはないはず!きっと何かを感じすぎているのだが、恐ろしくぼんやりしている。
    「よかった」「よくなかった」「ここがどうだった」「ここがああだった」のような感想はつけたくない。私の能力が足りない故に、そのような感想をつけられないだけかもしれないが。しかし、これだけは言える。私はこの本に対して"何か"を感じ取ったのは確かで、その"何か"は『恋』というタイトルの通り、なんとも説明しずらいものなのだ。(逃げ切り御免!)

    2018.4.28
    やっぱり2回目の読了。
    恋やセックスはもっと自由でいいと思う。慎太郎や雛子、ふうちゃんの関係は至って自然なものであり、それと対比して示されるのが大久保と雛子の関係。これは現代の秩序、時として堅苦しく感じる日本の秩序みたいなものだと感じた。
    「結婚」のような法的縛りはもはや無い方がいい。

  • この物語の設定は、ロシア文学に似ている、という印象。文体に慣れるまで少し時間がかかりました。後半の夫妻の秘密に関しては、ちょっと拍子抜けします。対して事件を引き起こす男性に関してもピンと来きませんでした。全体としてはそれなりに面白いけれど、その二点で少し面白みが少なくなりました。たまにはこういう小説もいいかな。

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著者プロフィール

作家

「2023年 『ベスト・エッセイ2023』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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