- Amazon.co.jp ・本 (571ページ)
- / ISBN・EAN: 9784102015049
感想・レビュー・書評
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再読。以下ネタバレ備忘録。
マルガレーテの死から立ち直ったファウストは、なぜか皇帝の臣下になっている。メフィストフェレスの手を借りて皇帝に取り入り、あーだこーだやってるうちに、「お前なんでもできるんだろ、パリスとヘレネーに会わせろよ」的ムチャブリをされてしまい、無論ファウストはそれを悪魔に丸投げ。悪魔は古代ギリシャは管轄外と断ろうとするも(だって悪魔はキリスト教の産物)ファウストにムリ押しされてなんとかパリスとヘレネ―の亡霊を呼びだす方法をファウストに伝授。そして現れたヘレネ―の美しさに、ファウストは電撃的な一目惚れ。悪魔に、亡霊に触れてはダメと注意されていたにも関わらずヘレネーに触ろうとして爆発。ヘレネーは消えてしまう。
悪魔に連れられ自宅に戻った傷心のファウスト、そこでは師匠ファウストの失踪後も実験を続けていた弟子ワーグネルが、ホムンクルスを誕生させることに成功。ホムンクルスってファウスト博士が創り出したようなイメージだったけど、実は弟子作だったんですね。意識を取り戻したファウストは、ホムンクルスとメフィストフェレスと共に、時空を超えて古代ギリシャへとヘレネーを探す旅に出る。古代のワルプルギスの夜では、さまざまなギリシャ神話の登場人物たちが彼らの前に現れる。
一方ヘレネーはトロイア戦争後帰国するも夫メネラオスがよそよそしい。どうやら侍女たちともども生贄にされるとわかり、ポルキュアイという怪物に変身した悪魔メフィストフェレスにそそのかされて、彼の言うなりに脱走、一城の主となっているファウストのもとへ逃れてくる。ファウストはヘレネーと結婚、息子をもうける。やがて息子は成長するが、やんちゃで元気いっぱい、飛び跳ねてばかりおり、ついに崖から墜落、命を落としてしまう。悲しんだヘレネーも死去。
失意のファウストはまた皇帝のもとへ戻っている。戦争があり、勝利したのちファウストは海辺の領地を与えられる。そこですったもんだしてるうちに(面倒なので端折る)100歳でファウスト死去。メフィストフェレスは契約通りファウストの魂をいただこうとするが、天使たちに邪魔されファウストの魂は天使に奪われ、悪魔は悔しがるのであった…。
時空を自在に超えて古代ギリシャへ行って神話の生き物や人物に遭遇、まるでパラレルワールドか歴史改変もののようにファウストがヘレネーと結婚して子供まで設けてしまうあたりは奇想天外でとても面白いのだけど、いかんせん主人公ファウストが自己中すぎて全然好きになれないのが辛かった。相手が悪魔だからって我儘言い放題、マルガレーテにしてもヘレネーにしても外見だけで一目惚れしては悪魔の手を借りてくどきおとし、マルガレーテについては妊娠させといて放置という極悪っぷり、そしてそれを一生後悔するどころかあっという間にヘレネーに恋して今度は彼女を追い掛け回す。正直キモイ。他にいろいろなこともしてたけど、ファウストがわざわざ悪魔に魂を売り渡して迄したかったことは、若くてきれいな女性と恋をしたり結婚したりすることだけだったのかなという印象しか残らず。にも関わらず、最後はマルガレーテの霊に助けられて、ファウストの魂は天国へ行く。なんか納得いかん。
メフィストフェレスは悪魔なので、性格悪かろうが卑しかろうがそれが悪魔というものだと思うけれど、ファウストはえらい博士で特別な魂の人間のはずなのにゲスいのってどうなの(苦笑)ファウストにさんざん我儘言われてこき使われて苦労したメフィストフェレスが、一方的に契約を無視されて、ただ働きさせられてしまったことがむしろ気の毒になりました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
冒頭「ファウスト。花の咲く草地に、疲れて不安な身を横たえ、眠ろうとつとめている。」
末尾「われらを牽きて昇らしむ。」
今年はゲーテを読んでみよう!と決めて読み始めたものの、この第二部は、神さまやらなんやがたくさん出てきて「あれファウストは?メフィストは?」という感じで、ただ本当に字面を追っただけ。すみませんでした、ゲーテさん。修行が足りていませんでした。
終盤にファウストがまた登場。契約通りの結末ではなかったのはわかった。 -
文豪ゲーテの代表作とされる長編の戯曲。第一部は1808年、第二部は1833年(ゲーテの死の翌年)に発表された。
15~16世紀にドイツに実在したと言われる高名な錬金術・占星術・魔術師ファウスト博士が、悪魔と契約して最後には魂を奪われ体を四散されたと云う奇怪な伝説をベースにしている。
ゲーテは文人であるとともに、自然科学者、政治家、法律家でもあった万能人で、代表作『ファウスト』においても、その思想・人生観が随所に表現されている。
(6265行)ファウスト「母の国。その言葉をきくたびに、何かはっとさせられる。なんとしても耳にしたくない言葉だ。・・・それでも己は物に動じないということを必ずしもいいことだとは考えないのだ。驚く、これは人間の最善の特性ではあるまいか。世間はこの「驚き」という感情を味わわせてくれないようになってきたが、驚き撃たれてこそ、巨大な神秘に参入しうるのだ」
(11936行)天使「絶えず努力して励む者を、われらは救うことができる」
(12104行)神秘の合唱「すべて移ろい行くものは、永遠なるものの比喩にすぎず。かつて満たされざりしもの、今ここに満たさる。名状すべからざるもの、ここに遂げられたり。永遠にして女性的なるもの、われらを牽き手昇らしむ」等
一般に言われているように、第二部は冗長な感は免れないし、主題もわかりにくく感じられるが、それはおそらく第一部から一貫する「世界を奥の奥で統べているもの、それが知りたい、また世界のうちに働く、力と元素のすべてを見極めたい」(382行)というファウスト(=ゲーテ)の思いであり、その根源とも言えるのが「母の国」なのではあるまいか。
現代においては決して読み易い作品とは言えないが(しかも、第二部は500頁弱ある)、ゲーテ自身の人生観を示した代表作として、一読する意味はあるように思う。 -
悪魔、悪霊、魔法使い、天使と様々な存在が登場し、ゲーテによる詩的な言葉が交わされる第2巻目。
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入院中に自宅の本棚から供給してもらったが、読んだ記憶もなくなっている。購入したのはもう20年以上前だ。第一部に続いて読んだ。
第二幕と第三幕はギリシャ神話の知識がないとほとんど意味が理解できないのではないだろうか、なんとかめげずに頑張ったが、我が身にとって内容が頭に入るとか理解できるできないという次元にないことが分かっただけか…。
第五幕になると言葉としての意味は理解できるが、最後にファウストの魂がなぜ救われるのかがまた理解できない。それになぜ死の直前でファウストの身体が盲目にされたのかもわからない。ファウスト晩年の行いに基づいて天使が魂を救済する、一方、死の直前に「憂い」によって盲目にされるのはやはり人間の罪の一部を被る(「人間は一生盲目なのです」)と言った意味合いがあるのだろうか。おそらく第一部と第二部まをしっかり理解しながら読むことでなぜゲーテの考えを読み解くことができるのだろう。やっぱりしっかりした副読本が欲しいし、しっかり読まないと答えがわからない大作なんだな。 -
陽の光なんか要らないわ。
魂の中に夜明けがきて、どこを探そうとも得られないものが、自分の心の中に見つかったんですもの。
まだ小説を読む気にならないのでファウストの続きを。
上巻とは全く変わり、大冒険のファンタジー長編。解説も面白い。ゲーテのPagan文化への深い造詣がいかんなく発揮される。
最近、斉木楠雄のアニメを見始めたので、中二病?と思いそうになるけれど、そうじゃなくて古代ギリシャと中世キリスト教世界の奇跡の共演です!と言い聞かせる。
上巻はファウストの欲を満たす旅、酒や若さや恋や、そういうものを求めていたのが、下巻ではファウストは絶世の美女ヘレネを、ホムンクルスは肉体を、メフィストフェレスは魔女を探す旅に変わる。
それが戦争、海と続く。海を埋め立て、人々が移り住み、生活のために勤勉に生きることではじめて満足できるのだと気づく。人々が美しく生きている瞬間に向かって、あの有名なセリフ、止まれ、お前はいかにも美しい、と言う。
街にある娯楽も、豊かな歴史も、ありあまる権力よりも、日々の自由と生活が何より素晴らしいという結論からのセリフとは知らなかった。なんか色々あって満足したので、時よ止まれ、汝はいかにも美しい、って言うのかと思っていました。
素晴らしい終わり方ですねえ。最高!
ただ、ドラえもんの如く尽くしてきたメフィストが契約を果たせないのはかわいそう、というかご都合主義じゃない?とは思うけれど。悪魔は損ですね。
でも本当は欲云々より、どちらかというとユリイカのインタビューで見た、ファムファタールの否定、というのを思い出してしまった。
男の失敗の原因を押し付けられる、責任転嫁される魔性の女、の否定。
これも男性に虐げられる女性像のひとつなんだなって。
性別に関わらず、自分の行動に責任をもつことをそろそろちゃんと教えるべきだと思う。
これもユリイカの感想ですが、マイノリティへの共感は大きな声で言えるけれど、男社会への否定は怖くて言えない、それが2023年なのかなと。
より危ないことをしたやつが、より楽をしていい思いをしたやつが、より女の子をモノ扱いしたやつが勝ちという社会。
男の人もそこから落ちないように必死で誰も彼も辛い。
そういえば昔、はたちそこそこの男の子が、地元の友達は女の子をモノ扱いする奴らばかりでくそだ、って言っていて、この子若いのにすごい、世の中見えてると思ったことを思い出しました。
最近フェミニスト的感想ばかりになってしまう。人権に興味があるのかもしれない。
それよりファウスト。
ヘレネはいつ会っても何考えてるかわからない。オデュッセイアでも騙されてトロイアに連れて行かれたのです、どうかしていましたなんて言っていたり。一方でパリスと新婚旅行楽しんでからトロイアへ行ったなんて説もあったり。本当はキモいおっさんの夫より若く美しいパリスのほうがいいとも解釈できるし。
クリュタイムネストラみたいに間男して夫を殺すくらいの行動はとらない。これならまだ、娘を生贄にされたことで恨んでいたとか感情が見えるのに。これ誰の説?阿刀田高だっけ。
ヘレネ自身はほとんどモノみたい。
だから、というかファムファタールを否定しておいてあれですが、ナオミはパリスが迎えに来ないと知って、キモいおっさんと生きていくしかないと腹を括って、強く美しく責任ある大人になったのかなあなんて。痴人の愛を考え直してみました。
あてずっぽうで書きます。
ヘレネたちと3人で1つ、の話は三位一体を連想させられたので、キリスト教世界へ戻ることを示唆しているのかなと。
戦争は教皇派と皇帝派の争いであり、破門といえばフリードリヒ2世?(まだ読んでません)。
上巻で、設定は15世紀のはずなのに16世紀の話がでてくる、という解説があったので全然違いますね。
しっかりめの解説も読んでみたいような気がする。けれどそこまでは大変な気もする。 -
読んだ本 ファウスト(二) ゲーテ 20230416
本読んだ後に、ネットであらすじを探すのは初めてですね。
この第二幕(二巻)は、ゲーテの死後に発表されたものらしく、一般的なファウストなるものは、第一幕(一巻)のことらしいです(間違えてたらご免)。
第二幕は、よりストーリー外の描写が長く、ギリシャの神様や戦争中の皇帝(こっちはストーリー内か)が長々と描かれていて、その中で物語と言えるのは極々簡単なもので、それが埋もれて見失ってしまうって感じです。
手塚治虫も漫画化している名作ってことですが、確かに悪魔のメフィストーフェレス、人造人間(魂?)のホムンクルスとか、創造力は素晴らしいものがあるかも。
戯曲なので、読み易いですが、わかりづらいです。