大いなる遺産(上) (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (430ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102030011

感想・レビュー・書評

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  • 19世紀英国の国民的作家、ディケンズによる晩年の傑作。これこそイギリス小説のお家芸、と喝采を挙げたくなる巧みな人物描写にまずは感嘆。田舎の家庭に資産家、囚人に都会の人々と多様な身分と階級を書き分けながら、それでも彼らが共通して滲み出ているペーソスが全体を引き締め、押し付けがましさのない箴言を惜しみなくまぶすことで小説に濃厚な味わいをもたらしている。しかし前半部分における孤児ピップの、己の尊厳というものを徹底的に毟り取られていく境遇は読んでいて辛くなる程。レ・ミゼラブル、惨めさというのは普遍的な感情だから。

  • 動産は動いているから動産なのであって手に入れて持っているのはむつかしく価値のあることなんだろうな。同じくらい手放すときの解放感も大きいに違いない。

  • 上巻読了。ディケンズの長編は初めてでしたが、するすると読んでいけました。大衆小説ならではの俗っぽい言い回しと、しかしそれに振り回されることの無い登場人物の心の動きに対する描写が絶妙でした。子供の頃の、小さな悪に対する後ろめたさと情けなさと、チクチクするような記憶を刺激するストーリの運びに引き込まれます。

    11/10/23

  • 状況が変わるにつれてピップの心も変わって行くのが切ないけど人間味があっていい。ジョーとビディが素敵。どんな登場人物にもどこか愛嬌がある。

  •   「いったいどうして昔彼を無能な人間だなんて考えたのだろうと、なんども不思議に思った。
      が、ある日たぶんその無能さは彼の内にあったのではなく、わたしのうちにあったのだと反
      省 してみて、いっさいが氷解した。」


    この物語を一言で言い表せる言葉を私は持ってない。

    がんぜない少年ピップが成長するにつれ身に着けた教養により
    発せられる言葉の中には思わずハッとさせられる言葉が多い。


    巧みすぎる言い回しに何度も読み返して噛み砕かなければならない時が何度かあった。
    それは私の読解力の足らなさによるものだけど、
    その意味を理解した時の愉快さはなかなか味わえない。

    最後エステラと再会した時はついに結ばれるのだろうかと期待もしたんだけど、
    そんな気配がないまま終わり、それはそれで良かったと思う。

    あの後ピップはクラリカー商会で働きながら成長していき立派な大人になり、
    友人として付き合いを続けていたエステラといつか結ばれる、
    というか、結ばれるといいなと一人で勝手に想像している。


    以前オリヴァー・ツイスト(原作は同じくC.ディケンズ)の映画を見て
    19世紀のイギリスは、湿っぽくて薄暗くて、人々も小汚く粗野な感じを受けたんだけど、
    今見たら前と違って見えるかもしれない。
    今度借りて見たいと思う。

    上下巻、毎晩寝る前に約1時間のペースで読んで20日位。

  • 主人公のピップ少年は癇癪持ちの姉とその夫で鍛冶屋のジョーと暮らしている。クリスマス・イヴの晩、寂しい墓地で脱獄囚の男と出会う。脅されて足かせを切るヤスリと食べ物を与えるが、その恐ろしい記憶はいつまでも消えなかった。やがて街の寂れたお屋敷に住むミス・ハビシャムという不思議な老女に呼ばれ、そこで美しい少女エステラと出会う。やがて彼は謎の人物から莫大な遺産を相続する事になり、ロンドンへと赴くが...。ユニークな人物のキャラクター設定と軽妙な台詞が楽しく、つい読みふけってしまう。印象ほど難解ではなく、軽妙なタッチが目立つ。

  • 面白い!
    ユーモアあふれる文章で素敵だった。ハビシャムさんの家の様子についての嘘を、ピップがジョーにだけ打ち明けるシーンがとても好き。

    上巻では、貧しい少年だったピップが突然お金持ちになって、少しずつ純粋な心を変質させていく様子が描かれている。
    そんなに斬新な、インパクトのある題材を扱ってるってわけじゃないと思うけど、なんせ語り口が軽妙。それでいてさらっと重みのある言葉が書かれている。
    貧乏な鍛冶屋のジョーが、金持ちになったピップから見ると垢ぬけてなくて滑稽で、物悲しいんだけれど、それでもやっぱり輝いて見える感じなんかは胸に迫るものがある。

    多分急転直下な展開になるであろう下巻も楽しみだ。

  • ディケンズの中で一番読める。

  • 鍛冶屋の貧乏な息子ピップが突然、大遺産を相続する可能性が。紳士になるべくロンドンへ上京。育ての親ジョー、親友との出会い、美しい娘への片思いなどを軸に、遺産を受け取れるのか、受け取れずに終わるのか・・・。

    私にとっては、『二都物語』の方が断然おもしろかったな。期待が大きすぎたのかな?良くわからないまま読み終わってしまいました。

  • 貧しい鍛冶屋ジョーに育てられた少年ピップは、クリスマス・イヴの晩、墓地で脱獄囚の男と出会う。脱獄囚に脅されるままに彼を助けという記憶は、ピップの脳裏からいつまでも消えることはなかった。そんなある日、彼は謎の人物から莫大な遺産を相続することになり、ロンドンへと赴く。優しかったジョーの記憶もいつしか過去のものとなっていくが──。

    貧しい身の上から突然莫大な遺産の相続人になったピップのとまどいや、周囲の人の態度の変化、ロンドンで関わる多くの人との交流を、実にユーモアたっぷりに描いている。
    ロンドンの街並みが目の前にありありと浮かんでくるかのような生き生きとした文章の中に、登場人物もまた強烈な印象を持って心に残るものだった。

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著者プロフィール

1800年代を代表するイギリスの小説家。おもに下層階級を主人公とし、弱者の視点で社会を諷刺した作品を発表した。新聞記者を務めながら小説を発表し、英国の国民作家とも評されている。『オリバー・ツイスト』『クリスマス・キャロル』『デイヴィッド・コパフィールド』『二都物語』『大いなる遺産』などは、現在でも度々映画化されており、児童書の発行部数でも、複数の作品が世界的なランキングで上位にランクされている。

「2020年 『クリスマス・キャロル』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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