- Amazon.co.jp ・本 (379ページ)
- / ISBN・EAN: 9784102043011
感想・レビュー・書評
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ドン・ホセという軍人がカルメンという故郷を持たないジプシーを愛してしまった結果、人生を転落していく物語である。これまで名前だけは知っていても読んだことがなかったが、そんなに長い物語でないことに驚いた。カルメンは教養のない、粗雑な女だが、怪しくも美しい容姿を利用して多くの男達を手玉にとってゆく。決して上品な話ではない。カルメンがどんな女なのか、想像することしか出来ないが、彼女の捉え方によってオペラや劇での演技も変わってくるのだろう。これを読んでカルメンの劇を見てみたくなった。
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バレエを見るにあたり、短編集のうち表題作「カルメン」のみ読了。
オペラ以上に救いようがない……。 -
短編集
少し読みにくいかな -
作者のメリメは考古学者で、語学にも堪能だったらしい。作風はインテリの書きそうな皮肉な小説だなと思う。この短編集では、表題作のほかに、奴隷船に捕らわれた黒人の酋長が反乱を起こして、船をのっとたまではいいものの船の操縦法が分からず、漂流してしまう「タマンゴ」、裏切りをおこなった息子を射殺する「マテオ・ファルコネ」、ロマンチックな貴婦人に取り入って出世する「オーバン神父」、恋人と和解した途端、決闘で命を落とす「エトリュスクの壺」、自殺しようとした貧しい娘を、自分に好意をよせる情人(これは死にそうな貧しい娘の元恋人)といっしょに見取る上流婦人を描いた「アルセーヌ・ギヨ」が収められている。どれも、異常な皮肉さで書かれた作品ばかりだ。メリメはスタンダールと親交があったそうだが、上流婦人や、異民族に対する目は冷ややかで、フランスのエリートの気質をうかがわせる。エリートだからこそ、恋愛を馬鹿にしつつも無視できないのだ。表題作の「カルメン」は、ジプシーの女性をまるで悪魔のように書いていて、一種のステレオタイプを感じるが、ドン・ホセが、カルメンを愛したために、山賊となり、仲間を殺し、最期にカルメンまでも殺してしまうという恋愛の恐ろしさはよく書けているように思う。バスク語やロマニ語が挿入されていて、異国情緒もある。カルメンはスペインの女性ではなく、ジプシーである。
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2008 10/4
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「あなたが私さえ見つめてくれれば、ほかには何もいらない。
この情熱の炎にすべてが焼き尽くされてしまう前に、どうか私に口づけを。」
いつだったか安藤美姫が何かの大会でカルメンの曲に合わせて演技をしたときに、その解説をしたアナウンサーが言っていた言葉にぐぐっと引きつけられた。
いや、具体的な言葉は何やったかは忘れてしまったのだけれども、
でもそれに触発されて私は翌日すぐに紀伊国屋でこの本を買った。
情熱、
情熱、
愛の情熱。
やっぱり人間なら誰しも人生で一度はそんな情熱の業火に焼き尽くされてしまいたい。
と思うものではないでしょうか。
すべてを奪われるような劇的な恋。
……あれ、そうでもない?
でも、読んでみると意外とそうでもないのよね。
カルメンの情熱。
情熱ね。
彼女は非常に自由奔放ではあるけれども、作者の意図なのかカルメンの愛に対する情熱や激情があまり見られない。
なんか男がだまされた感じの話。
そして悲しい、
みたいな。
私の中でカルメンといえば愛に身を投じる女性の代名詞だったのだけれども、こうやって見てみると。
うむ、
日本人にはジプシーという存在が遠いが故に理解しかねるのかも、そしてやっぱり今時だとこういうのってどうしても凡庸になってしまうのかしら。
なんなんだか。
読んでみるとやはり堀口さんの訳のおかげで非常に読みやすかったですけどね。
うむ、女性の情熱を感じられるものってなんかあるかしら?
ジェーン・オースティンとか?
いや、秘めた情熱すぎ。
王妃マルゴーとかエリザベス……なんか政治的になってきた。 -
言葉少なくイメージにまかせる。何かと皮肉。
星新一なんかと通じるかな。私には。