- Amazon.co.jp ・本 (474ページ)
- / ISBN・EAN: 9784102101100
感想・レビュー・書評
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読み継がれている名作でありますから、いろいろの示唆があるんですね。
ある家族の生きざまを通して、人間社会の仕組みに翻弄され、艱難刻苦に向わせられ、なお襲い掛かる天災災害の非情なる仕打ちにどうするのか!というようなすごい物語のように思われるのだが、読めば読むほど、この家族それぞれの身勝手さは腹立たしいほどで、精神性の崇高さを感じれば感じるほど、人間の生態の愚かしさもくっきりと浮き上がってくるのが面白い。
まず、「お母」が家族集団13人の中心なのはわかる。しかし、殺人を犯し、刑務所から仮出所のトムという次男もしょうがないが、まあ骨がある。おじいさんおばあさんは旅の難儀さに死んでしまい。はかなげな長男は何考えてるのか、旅の途中で行方不明に(家族はあきらめてしまうのだ!)、長女(16)は若くして結婚、ふたりとも夢る夢子さんで妊娠中に夫に逃げられてしまう。三男は浮気性でふらふらしているし、次女(12)と四男(10)はいたずら盛りで手に負えない、「お父」は空威張りの他人ごと、「お父」の兄ジョンはアル中の役立たず、おまけに元「説教師」の他人も加わって、それぞれが勝手なことを言い、やってしまって艱難辛苦の旅を余計に複雑にさせる。「なんでそこでそれをやってしまうのぉ~!!」と「お母」の気持ちに感情移入してしまうが、「大丈夫だよ、なんとかするから」と、おおらかなのか!?偉大なのか!?その「お母」が何とかしてしまうのが、おかしいようなほっとする救いのような、そんな読み方もいいかなと。この頃の、いや、ずっとそうだったけど、我が家族集団でもそんなふうなんだよね。 -
やはり名作はスゴい!実地調査に基づくルポルタージュ的内容を、出エジプト記を思わせる壮大な小説にまとめるという筆力に圧倒されました。聖書を思わせる逸話もちりばめられ、人類愛につながるラストに涙が止まりませんでした。
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世界恐慌真っ定中のアメリカをジョード一家と言う人家族に焦点を当てた、苦境を切り抜けようとする情愛深い家族の物語だった。苦境を切り抜けるのに愛と知恵と勇気が大切であるのは、太古からの物語の主題として変わらない。また彼らは常に、家、土地、仕事というアメリカンドリームを追い求め続けた。
また働くことの尊さも教えてくれた。
人間に最後に残された確かな機能-働くことを渇望する肉体と、一人の人間の入用を超えて作ることを渇望する頭脳こそが人間である所以なのだと。
とりあえずお母さんと、伝道師ケイシーの紡言葉一つ一つが好きでたまらん!! -
カリフォルニアの綺麗な白い家で家族で暮らそうと夢見たお母。カリフォルニアに着いてからの日々はそれとはかけ離れていた。フルーツピッキングや綿摘みも季節労働だから仕事が無い時は本当に何もない。それでも食べていかなくてはいけない。妊娠中の家族もいる。そのうち離れてゆく家族もいる。いつだって一家の中心で踏ん張るお母が大好きになる。
オクラホマからカリフォルニアまでの自然の描写や家族の結びつきの描写、どれもが目のまえに浮かんで「踏ん張れ!頑張れ!」と思いながら読んだ。 -
題名は知っていたけど、こんなに面白い本だったんだ。もっともっと前に読めば良かった!
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この直前にオーウェル「一九八四」、アトウッド「侍女の物語」を読了した所だったので、今回はやっとディストピア路線から逃れられると読み始めたのだが、スタートからのヤバイ予感は的中してしまった。
「一九八四」「侍女の物語」が"社会主義的ディストピア"とすれば、当作品は"資本主義的ディストピア"といえるのかもしれない。
現代的便利さや合理性が、人の気持ちや温もりを踏みにじる装置になりうることも示唆されている。
世界恐慌という時代に否が応でも経済は困窮し、家族は離散し、人としての尊厳すら奪われていく。この困難に敢然と立ち向かう「お母」の姿、心意気が極めて男前で頼もしい。
抜け道のない閉塞感の中、最後は命を慈しむ気持ちでいっぱいになった。 -
この物語で、魂が震えない、感情が揺さぶられないような男にはなりたくない。
善良すぎる。あかん泣きそう。