悲しみよ こんにちは (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (197ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102118283

感想・レビュー・書評

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  • 感情は基本的にひと言で表されるものじゃなくて、いろいろな、時には矛盾してみえる気持ちが絡み合ってできている。それを言葉で、ここまで言い表そうとできるのはすごいことだと思う。
    セシルは、時々の複雑な感情を受け止めたりそれから目を背けたりしながら過ごしていたが、それらの多くは記憶より早く薄れていくものだったのだと思う。けれど、アンヌの喪失の記憶と、それによる悲しみの感情は、ともにときどき蘇る。
    あれだけ言葉を尽くして感情を表現しておいて、最後を締める感情が悲しみの一言なのが印象的だった。けどこの悲しみは、単なる喪失感だけでなく、罪の意識と罪の結果の父との享楽的な生き方を伴うものなのだろう。「罪は現代社会に残った唯一の鮮明な色彩である。」セシルの悲しみに、色彩を感じずにはいられない。

  • みずみずしく、苦しく、綺麗だった

  • 拍手。
    はじめに、一行目が素敵すぎる。
    僕は小説を買うとき、まず題名をみる。クリアすれば裏の内容紹介。そこを越えたら、一行目を読む。
    その一行目に惹かれれば、レジへ持っていくのだけど、この一行目はタイトルよりもさらに重要だと思っている。


    この本には、恋愛、浮気、セックス、死、憎悪などなど様々な事柄が書かれていて、人生の深い暗い底のような匂いに包まれる。
    けれど、最終的なところ、恋愛の生ぬるさのようなものがありありと、僕にとっての恋愛とは、が記されていた。

    あとは、描写がとても奇麗だった。
    まるでテレビに映像が流れているように、鮮明に観ること(読むこと)ができた。
    浜辺、オレンジ、コーヒー、涙、タバコ。

    サガンの本はこれが初だったけれど、他のも読みたい。特に『愛は束縛』を。

  • これを18で書いたことがまず本当にすごい

    あとは、翻訳の言葉選びが、素晴らしすぎて全部しっくりきたー

    一つ一つの細かい心情が、よく自分が体験するけど言葉にできないことで納得した。恥ずかしくなる感じとか,つい不幸を祈ってしまうところとか,他人に対して達観できているように感じちゃう若気の至りとか。

    今回は自分になぞらえて読んだけど今度は一歩引いてよみたい。

  • 18歳になるセシルと父親レエモンは、愛人のエルザも含めた三人で、地中海沿岸の避暑地に遊びに来た。セシルはこの地で、青年シリルと出会い、愛し合うようになる。
    そこへ、亡き母の友人であるアンヌが偶然やって来てレエモンは心を奪われ、エルザより夢中になる。
    レエモンはアンヌとと結婚したい、と心から願うようになり、今まで関係して来た女性たちを切り捨て、アンヌにプロポーズする決意をする。
    セシルは自由な父と子の生活が乱されることを恐れ、アンヌを生活から追い出そうとする。
    シリルとエルザを突き合っているように見せかけて、エルザとレエモンに再び関係をもたせてしまう。ショックのあまり、アンヌは車を走らせ、事故とも自殺とも思えぬ形で死んでしまう。
    思いもせぬ結末にセシルはショックを受け、事故から一年たった後でも、眠れぬ夜にアンヌを思いだす。そして、その時の感情に名前をつける。「悲しみよ、こんにちは」と…

    話自体は救いもなく酷いが、みずみずしい感性で書かれた文章が美しい。(筆者のフランソワーズ・サガンが18歳で出版)

    不朽、そして永遠の青春小説です。

  • 少女小説の傑作とだけあり、作品自体短いのもあるがおもしろくてすぐ読み終わった。
    著者は18歳と若くしてこの本を書いたのもあり、若さゆえの気の移ろいやすさ、「正しさ」への反発、 お勉強からの逃避、初体験など…自分は大人になってから読んでしまったが、本当の少女のときに読んだらさらに共感しわくわくしただろうと思う。主人公の境遇や考え方は全然自分と違うが。

  • 十七歳の夏、放蕩な父レイモンとその愛人エルザと南仏でヴァカンスを楽しむことになったセシル。そこで出会ったシリルと恋に落ち、三人でのヴァカンスも楽しんでいたが、母の旧友で父のもう一人のガールフレンド・アンヌも別荘にやってきたことで状況は一変。さらには父とアンヌから再婚の話を聞いたセシルは、支離滅裂で浮かれた父娘の生活が一変することを恐れたセシルは、迷いながらもある計画を実行するーー

    最後まで読み切った後にようやく冒頭のセシルの考えが理解出来た。

  • (2023/07/04 2h)

  • 大好きな作品。少女のきまぐれや残酷さを
    当時同じく少女のサガンが客観的に描けてるのが凄すぎる
    恐るべき才能

    オレンジとコーヒーの朝食のフレッシュな描写も大好き

著者プロフィール

1935‐2004。フランス、カジャルク生れ。19歳の夏、デビュー小説『悲しみよこんにちは』が批評家賞を受け、一躍時代の寵児となる。『ブラームスはお好き』『夏に抱かれて』等、話題作を次々に発表した。

「2021年 『打ちのめされた心は』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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