宇宙創成(上) (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (387ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102159743

感想・レビュー・書評

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  •  すばらしい。なんという壮大なドラマだろう。サイモン・シンの著作は「フェルマーの定理」、「暗号解読」と読んできて3作目。前2作もとてもおもしろく夢中で読んだけれど、どうしても数学の理解できない部分があって、すべてに納得できたというわけではなかった。本書はよりなじみのある宇宙や天文学の内容なので、要所要所がきちんと理解でき、そのせいかこの途方もない物語が夢想され、実証されていくさまをより克明に追ってゆくことができた。
     実際に手に取ってみることのできない空間的にも時間的にも遠い世界のありさまを、ごく微弱な光や電波だけ頼りに観測し、理論的仮説を実証してゆく。たったそれだけの繰り返しによって宇宙の起源という最大の謎が解き明かされてゆく、その過程がわかりやすく感動的につづられる。机上の計算だけでとほうもない理論を構築した天才的理論科学者たち、そしてほんのちょっとの感光板のシミ、ほんのわずかな波長のズレ、ほんのかすかなバックグラウンドノイズ、それらをなおざりにせずにとことん追求した実験科学者たち、いずれが欠けても真理の探究は成り立たない。そのことがよくわかる。ぼくも科学者のはしくれだったから、引用されているチャーチルのことば「人はときに真理に蹴躓いて転ぶが、ほとんどの者はただ立ち上がり、何もなかったようにさっさと歩き去る」、に耳が痛い。もう一度研究者をやりなおしたいとすら思う。
     巻末の文庫版への訳者あとがきに本書の真の主人公は《科学的方法》とあるが、まさにその通りだと思う。テーマはビッグバンでもなんでもいい。根源的な謎の解明に向かって人間がどれだけ心血を注ぎ、誤りを犯しながら少しずつ前進し、あるときは荒唐無稽と思えるパラダイムシフトを経て、真理の殿堂を築き上げていったかの、これは物語なのだ。だからこそ読み手の心がうち震えるほどの感動を呼び起こす。すべての若い人、年齢的だけでなく精神的に若い人、に読んでほしいと心から思う。

  • ギリシャ神話から始まり、アインシュタインの特殊相対性理論ができあがるまで、科学者の関わりやそれまで常識と思われていたことに対する理論を作り、実験にて証拠を揃え、確立していく流れが描かれている。一般性相対理論が発表され、もっと微小な世界に目を向けていく流れが少し書かれ、下巻に続く。
    科学者の名前を覚えるにはちょうど良い。理論そのものの説明があるわけではない。

  • 傑作や!
    詳細は下巻の感想にて

  • 科学の道100冊 2020

  • 昔から少しは宇宙に興味があったのでとても面白かった。
    全く何も分からないところから色々な壁や先入観などを乗り越えてだんだんと今わかっている宇宙に近づいていく感じでとても楽しかった。
    また、よく知られている学者(コペルニクス、ニュートン、アインシュタイン、ハップルなど)が出てきて読むまでその人たちの名前しか知らなかったことが恥ずかしくなった。
    しかしわかりやすいが1つずつ理解していかなければいけない本なので時間がかかって疲れた。

  • 「天才科学者達のバトル集」

    天動説vs地動説
    ニュートンvsアインシュタイン
    静的宇宙vs動的宇宙

    など、新しい説が古い説を打ち砕いていくストーリー的な面白さもあるし、
    理論、実験、背景のエピソードなど、しっかり解説されているのに読みやすい。サイモンシンさん凄すぎるとしか言いようがない。

  • この書籍は、同氏の「ビッグバン宇宙論」の改題文庫化したもので、同氏による「ビッグバン」理論の解説歴史です。

  • ビッグバン理論についての本。科学は間違うということが壮大なテーマとなっており,いつものサイモンシンのように人物が生き生きと描かれている。
    科学的素養がなくても身近な比喩で説明を進めているのすごい。

  • さすがサイモン・シン!と書き出そうと思っていたのですが、本書はちょっと違いました。
    正直、読み始めてしばらくは、あれ?訳者が変わったかな?とすら思いました。

    これまでのような、すらすらと読みやすい作品ではありません。
    それは、扱っている題材が、あまりに広すぎるからなのだと思います。
    なんと言っても、上巻の最後で、ようやくビッグバンに辿り着くのですから!

    そしてやっぱり、さすがサイモン・シン!という内容でもありました。
    本書の始まりは、遙か昔に語られた「神話」なのです。
    宇宙というものに、人がいかにして魅せられてきたのか。
    その歴史を、丁寧な筆致で一つ一つ丹念に辿っていくのです。
    結果、これまでの著作がもっていた圧倒的な読みやすさという部分は影を潜めています。
    しかし、読みやすさを犠牲にした結果、素晴らしく壮大な天文学の歴史を、綺麗な一本の線上に乗せるという偉業に成功しているのです。

    難解な式はほとんど登場させず、あくまで直感的に理解できるように図表を駆使していく手法は、一見すると小難しい学術書のようでもあります。
    しかし、そこはさすがのサイモン・シン。圧倒的な筆力でもって、読者をぐいぐいと引っ張ってくれます。
    暴論を言ってしまえば、細かい理解はたぶんどうでも良いのだと思うのです。
    天文学の本質は、おそらく、飽くなき好奇心と限りない浪漫だと思うのです。
    その魅力に取り憑かれてしまった天才たちの息吹を感じることが出来る。それだけで、本書は素晴らしい作品であると断言して良いと思います。

    下巻に入って、遂にビッグバンがその姿を現します。
    続きを読むのが本当に楽しみ。

    あと、各章の始めに書いてある「名言」が、かなり気の利いたものになっているのもポイント高いです。
    真摯な姿勢、達観、そしてユーモア。
    ウッディ・アレン氏のを読んで、思わず吹き出してしまったので引用しておきます。<blockquote>光速よりも速く進むことはできないし、できたらいいとも思えない。だって帽子が吹き飛ばされてばかりいるからね。
    </blockquote>そしてもうひとつは、やはりアインシュタインの名言でしょう。<blockquote>宇宙についてもっとも理解しがたいのは、宇宙が理解可能だということだ。</blockquote>お見事。

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著者プロフィール

イラストレーター

「2021年 『世界じゅうの女の子のための日』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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