ホテル・ニューハンプシャー〈上〉 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (427ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102273036

感想・レビュー・書評

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  • 確か「サラバ!」を読んで、この作品に興味を覚え読みはじめた。
    なんとなく作風が「サラバ!」と似ている。
    奇想天外なストーリー。下巻も楽しみ。

  • 父の夢をかなえるため、ベリー一家はニューハンプシャーの田舎町でホテル経営に乗り出す。
    上巻は両親の馴れ初めや、アールという名の熊の話、子供たちの出生、またレイプされた長女の話や、語り手ジョンの初体験、唐突に訪れる登場人物の死などで構成される。話の舞台は第一次ホテルニューハンプシャーとデーリー高校。静かに優しく語られる。
    『ガープの世界』のように構成のかっちり決まった骨太の小説という印象。子供たちだけでなく祖父や周囲の人についてもあますところなく描写していてとてもよかった。脇役の大柄な黒人フットボーラー、ジュニア・ジョーンズとか、第一次ホテルニューハンプシャーのウェイトレスであるロンダ・レイとかもキャラ立ちが良くてとても好きだ。

  • 強烈な個性を持った8人の家族、その中の一人であるジョン・ベリーの回顧録という形式で綴られる、父のホテル経営を中心にした一家のヒストリー。

    ヒストリーの大半は悲劇よりの出来事が多い。人はあっけなく死ぬし、女性はあっけなく、気分が悪くなるように、こういう言い方は良くないけど実に南部アメリカ的に襲われる。読んでいてちょっと辛くなる。

    それでもこの作品がすごいのは、語り部であるジョンの性格を通すことで、その悲喜こもごもの皆の人生が、悲しくもコミカルに、そしてその結果、とても淡々とフラットな感じになり、結果として得も言われぬ、本当に得も言われぬような感情を引き起こす。文章の一つ一つがなんてことない日常の記述なのだが、箴言に満ちている。
    すごいなあ、と思いつつ上巻読了。

    下巻にも期待。

  • 西加奈子のサラバに出てくることから興味を持ち読んでみた。アメリカ文学と言えば、トムソーヤの冒険やグレートギャッツビー、ライ麦畑でつかまえてなどに描かれる古き良きアメリカの印象があったが、この作品の粗野で下品でそれでいて幻想的かつ生き生きとした描写には驚かされた。自分はコネチカットとニューヨークに通算7年住んでいた事があるが、この本に描かれるベリー家の生活の生々しさって本当に当時のアメリカの北東部の雰囲気なんだろうか。むしろ作者が人間の生活を裸にして取り繕うことなくありのままに表現するとこういう作品になるのだろう。

  • 先月読んだ西加奈子の『サラバ!』で、主人公とその高校時代の親友が愛読していたのがこの本でした。セリフもいくつか引用されており主人公が立ち直るきっかけにもなる重要アイテム。それでジョン・アーヴィングは随分昔に『サーカスの息子』を読んだきりで、そういや有名な他の作品を読んでいなかったっけと思い、いまさらのようにホテルニューハンプシャー。

    父母の出逢いから語り起こされる、基本的にはベリー一家のファミリーヒストリー。語り手は次男のジョン。大柄なのに内向的で友達のいない兄フランク、気が強く個性的だが男にモテる姉のフラニー、大きくならない妹のリリー、まだ幼い末っ子のエッグ。ずっとラブラブな両親と、高校のフットボールコーチをしているマッチョめのお祖父ちゃん(父の父)ボブ、父がフロイトという謎のユダヤ人から譲り受けた熊のアール、おならばかりしている臭い犬のソロー、が一家の構成員。

    両親はハイスクール時代にリゾートホテルでの夏休みのアルバイトをきっかけに恋に落ち、それが最終的に父の「ホテル経営」の夢へと繋がる。序盤は熊のアールにまつわるエピソード中心で、何に驚くって熊をふつうにペットとして飼えること。もちろんこの熊は野性ではなくもとはサーカスで芸を仕込まれた賢い熊だけれど。家族の一員のようだったアールの最期は切ない。

    そしてなんやかんやでホテルニューハンプシャーを立ち上げた父、しかしハロウィンの夜、その魅力ゆえにフラニーをある悲劇が襲う。個性的なホテル従業員たち、セクシーなメイドとの初体験、悲しみ(ソロー)という名の犬が剥製になってなお巻き起こす騒動など、語り手のジョンが「第一次ホテルニューハンプシャー」と名付けた時代までの悲喜こもごも。

    そしてフロイトの招きでウィーンに引っ越すことにした一家を、またしても悲劇が襲う。上巻ラストはその悲劇のあまりのあっけなさに呆然とした。家族はある意味奇人変人だらけだけれど、彼らにとってはそれが家族というものだし、気の合わない相手がいたとしても兄妹たちは結局なんやかんやで仲が良い。『サラバ!』で引用されていた部分など、家族というものにたいする全肯定がさりげなくて良い。

  • ひとりひとりのつらく悲しい健気さが、
    家族というフレームを通すことで、
    静かな温もりとなって心に沁みてくる。

  • 「サラバ!」に出てきた小説。家族の物語。

    1939年の夏、父さんと母さんが出会って、5人の子供が生まれた。1953年、ホテル・ニューハンプシャーが僕の家になり、1956年、僕はデイリー高校に入った。
    この年は一家に立て続けに悲劇が襲う。でも、悲劇はなかったかのように一家は生きていく。
    そして、1957年、一家はウィーンへ。やはり悲劇を伴って。

  • ”ガープの世界”が素晴らしく、そして本作。”読むのが怖い”で、大森がオールタイムベストに選んでいるのを見て、とりあえず何を置いても先に読まないと、と思った次第。ただ今のところ、件の作品の方が自分好みです。もちろん本作がつまらん訳じゃなく、アメリカ文学にありがちな冒頭の冗長性はさておき、ホテルが出来、さあこれからが本編っていうところ以降の怒涛の展開はさすがに楽しさ満点。それにしてもたくさん死んでしまう登場人物とか、やっぱり投入される性の問題とか、読みながら、展開に飽きることがありません。勝手に豪華絢爛なホテルを想像していたから、まさかの廃校改築にはビックリ。しかも、そのホテルをいったん捨てて、移住した上、下巻では”第二次”ホテルが舞台に。次々予想が裏切られる快感もならでは。後半の盛り上がりに期待大です。

  • よく分からなくて、二回読んでようやく、なんとなく分かった気がする。
    伏線がいくつもあった。悲しい出来事が多かったが、下巻では一体どんなことが起こるのだろう。
    キャラクターは皆多面的で深刻な問題を抱えている。この人はこういう人、と説明するのが難しい。
    成熟した女性陣、とりわけフラニーに対し、少しでも対等になろう、彼女を守れるようになろうと努力するジョンだが、雲をつかむようで、どうしても報われない結果になりそうな気がする。

  • 久々にのめり込んだ小説。上下巻通した感想。

    ミステリ小説ばりに人が死んでくね。
    あれだね、周りからみたら滅茶苦茶に悲惨な境遇で、本人もちゃんと悲しんだり嘆いたりしてるのにこのカラッと乾いてる感じがいかにもアメリカ文学。というよりオースターとかと一括りのこういう一派があるのかなぁ。
    「発狂しそうな出来事を淡々とスルーしてスルーして最後はハッピーエンドというには?だけど精神的平穏はゲットしてエンド」って感じのやつ。

    この作品でも、下巻なんて常に互いに早まるなよ生きてろよって言い合い続けてる状態なのにそれがまぁ淡々としてること。

    "わが家の格言は、不幸な結末(アンハッピー・エンド)といえど、生気にあふれた豊かな生活をいささかも侵食するものではないということだった。これはハッピーエンドは存在しないという信念にもとづいていた。"(上巻 310ページより)

    この格言、最強。

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