マイノリティーの拳

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103019718

感想・レビュー・書評

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  • ボクシングの世界を描くノンフィクションはいつも少し「切ない」感じがする。それはボクシングというスポーツが本質的には「殴り/殴られる」というスポーツであるということもあるし、おそらくボクサーのほとんどがまさしく「拳一つ」で這い上がってきたということもあるし、何より勝利と敗北だけでは動かない世界だというのがあると思う。例えば、テニスだった言ってみれば「ラケット一つ」で成りあがっていく世界なわけだが、それでもボクシングのような悲愴な感じを醸し出すような作品に出合ったことはない。

    本書は米国のヘビー級を中心に、元黒人チャンピオンが引退後にどのような生活を送っているかを追ったノンフィクションである。日本でも今では「世界チャンピオンになっただけでは成功ではない」世界になってしまったが、層が厚い米国ではそれはもっと劇的な形で表れていて、元世界チャンピオンであってもスラムと大して変わらない世界で暮らしている人間もいる。

    もちろんそういう状況になってしまう理由は本人も含めていろいろあるのだが、それでもファイトマネーという形で一瞬で大金が入ってきて(プロモーターにかなりとられてしまうのだが)、それをうまく扱うことができなくて、やがて堕ちていくというはなんとも切ない。

    本書に出てくるボクサーは日本のボクサーたちよりもはるかに多くのマッチ数を戦っている(90戦近いボクサーもいる)。そうしてまで試合に出るのはまさしく「お金のために戦っている」から。

    本書には繰り返しプロモーターの話が出てくるが、ボクシングは現代になっても剣闘士とマッチメイカーの世界なんだと強く感じざるをえない。華やかなのは剣闘士でも、最後に儲かるのはマッチメイカー(胴元)たち。それでも、そこには這い上がるための夢がある世界なんだ、というのもまた真実なのだと痛感させられるのが本書である。

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著者プロフィール

福岡大学准教授

「2023年 『よくわかる力学の基礎』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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