- Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
- / ISBN・EAN: 9784103029311
感想・レビュー・書評
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障害者が累犯に及んでしまう社会的背景について書かれています。
一番大きな問題は福祉の不備ですが、検挙率を上げる為の強引で不当な逮捕や杜撰な裁判にも驚かされます。
彼等(彼女等)が犯罪に及ばざるない実状は切実で衝撃的でした。
特に「おれの人生で刑務所生活が一番幸せだった」の言葉には胸が痛みます。
マスコミは「配慮」という名の下の報道規制によってあらゆる事を「なかった」事にしてしまってます。
しかし、世の中を変えるには、しっかり根部まで掘り下げ事件の本質をもっと伝えるべきかもしれません。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
世間の障害者への対応が犯罪となって反射されていっている現実。加害者にさせられている現実…
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身体障害よりも知的障害者の累犯者が
生まれる実態を塀の中と外からルポ、という感じ。
軽い気持ちで読むと、かなり衝撃的。 -
非常に示唆に富む内容。
レッサーパンダ帽男の事件については、それについての本を読んだことがあってより詳細な内容を知ってはいたが、改めてあまりに不幸な犯人とその家族の境遇に哀しくなってしまった。その他、いくつかの実際の事件が取り上げられているが、そのどれもが、彼らをきちんと受け止めて道筋を示してくれる身近な人や福祉とのつながりが不足していたことが、犯罪へ結びついた原因であったといってもいい。
犯罪によって命を奪われたり、理不尽な目に遭わされた方たちが一番の被害者であることは間違いないのだが、ここで著者が取り上げたような、思いがけず犯罪に手を染めてしまった障害者たちも、ある意味社会の被害者であるような気がしてならない。
裁くだけではなく、本当の罪の償いをこそさせるための更生、矯正プログラムの整備が、こういう不幸な被害者と加害者を生まないための絶対条件なのだ。
本著書で一番目からうろこだったのが、聴覚障害者の実態。
聴覚障害者と聴者との文化の違い、思考をつかさどる言語の体系が違うことによる文化の違い、という視点にははっとさせられた。
確かに、聴覚障害の方は、聴覚障害者同士で結婚されているケースをよく見聞きする。それは同じ「言語」同じ「文化」で生きる者同士、よりよくわかりあえるからであろうと推測されているのだ。
手話を理解する聴覚障害の方でも、聴者の視点でつくられた日本語対応手話はわかりにくく、お互いに齟齬を生みやすいのだそうだ。
著者の、聴覚障害の方との実際のエピソードを読んでも、確かに何かが違っていると考えるのが一番しっくりくると思える。
知的障害者であれ精神障害者であれ聴覚障害者であれ、社会のしくみが健常者の立場からばかりつくられていることが、彼らを生きにくくしているのだろう。福祉の現場ですら、そういう実態が見てとれるのだそうだ。それはある意味優生思想と言われても仕方ないかもしれない。
健常者だからいいとか障害があるからだめだとか、そんな短絡的な発想から社会もわれわれも抜け出さなければ、いつまでたっても、社会の狭間に突き落とされた人々は救われない。 -
獄窓記に続いて二冊目の山本譲司さんの本。
福祉と結びつくことがなく、何度も犯罪を犯し刑務所に戻ってくる障害者たち。本当に難しい。
地域や家族の在り方が大きく変化した今の世の中では福祉は高齢者、障害者、子供、など縦割りではもう機能しない。
刑務所での生活をきっかけに世の中の在り方を少しでも変えようと苦しみながらも動き出している著者はすごいと思う。 -
そういえば、あったかもみたいな事件の詳細(障害者が起こした)が書いてあって興味深く読んだ。
ろう者についてもあまり知らなかったので、知識が得られた。
犯罪を起こす障害者というのは、福祉とつながっていないというのが、一番心に残った。
これからは、発達や精神が増えていくんじゃないだろうか。 -
世の中知らずに過してることが多いことを実感した。
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宮部みゆきの現代小説のような話ばかりあるが、現実である。
発生当時には大きく報道されて記憶にある事件もある。
が、その背景に障害者たちが関わっていたなんて、全く頭になかった。
わたしの知っている日本社会と全く別の社会の姿が見えてくる。どこでどうやってつながっているのかわからないくらい違っているけれど、同じ空の下にこの本の登場人物たちもいるはずで、他人事と思ってはいけない。 -
2004年の新受刑者32,090人のうち7,172人が知能指数69以下の知的障害者である。
また、測定不能者1,687人を加えると約3割の受刑者が知的障害者となる。
この事実には驚いた。
知的障害者には軽犯罪を繰り返す者も多い。
知的障害者の中には刑務所が一番過ごしやすいという人もいるらしい。
福祉の難しさと実態を学べる一冊である。 -
衝撃的な内容だった。私たちが普段、知りえない獄中での体験記を絡めつつ、犯罪を繰り返す累犯障害者(知的障害者、ろうあ者など)の実態と日本の障害者福祉の問題点について書かれた本。「刑務所の中のほうが居心地がいい、外の世界は生きづらい」と語った受刑者の言葉が示すように、現在の福祉行政では救えない、救われない人々がこれほど大勢いるものなのかと気付かされ、驚いた。彼らにとっては外の世界そのものが獄であるという言葉も衝撃的だった。彼らにとって外の世界が少しでも居心地の良い社会、あるいは彼らが外の世界でも自分の居場所があるんだと思える社会を福祉行政だけでなく、私たち自身が作り上げていかなければならないんだ、と感じさせてくれる本であった。