マドンナ・ヴェルデ

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (277ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103065722

感想・レビュー・書評

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  • 「ジーン・ワルツ」の続編というか~代理出産の話を、生む側から描いた物。
    クール・ウィッチの異名を取る女医の曾根崎理恵。
    子供を産めなくなった理恵のために、代理出産をするその母親の山咲みどり。
    あらすじに平凡な主婦とあるが、早くに夫を亡くし、女手一つで理恵を育てた人だから仕事も持っていたし、えらく孤独でクールなんですよね。
    鰹節を削ったり、日本情緒のある食事の支度風景が良く出てきて、無機質なやりとりの多い雰囲気を転換する役に立っているが、そのメニューがえらく簡単。
    まあ回りが家庭的だったりスゴクにぎやかだったら、こんな企画は立てられないか?

    アメリカにいる理恵の夫・伸一郎のクールさもなんとも…
    母になる女性に選択権があるっていうのはまあ正しいと思うけど。
    診察室で一緒になった若い娘~若い未婚の母となる青井ユミとは親しくなっていく、みどり。

    代理母が法律上は実の母親になるという、日本の法律の奇妙さが指摘されています。
    生物学的には卵子提供者が実母なのに、おかしいかも。
    代理母の不倫みたいになっちゃうし。
    それと同時に、代理母の心情というのも出ています。お腹にいる間に愛情が芽生えたり、心境が変わってくるということ、あるでしょうね。
    生んだら終わりで何の権利もないというもまた妙な話。
    アメリカでは、希望すれば毎年会ったりする関係になってるみたいですけどね。

    理恵の強引さは一つのキャラとして、前よりも描けているかな。
    「ジーン・ワルツ」は主張だけで、小説になってるのかみたいな感じだったから…
    ちょうど映画が公開になりますが、俳優の存在感で自ずと血肉が通ってくるか?

    結末がちょっと妙。
    理詰めで独断的に事を進める理恵が、一矢報いられるという。
    それはまあ、成功させることを優先した、あざといやり口なので~ありうるけど。
    いったんはこうなるというのはギリギリわからなくもないけれど。
    この後、子供が大きくなったら~祖母のみどりがただのベビーシッターなんていったら不自然に決まってるでしょ??

  • 娘の代理母をするお母さんの話。ヴェルデの意味がわかんなくて、調べたら、「緑」という意味でした。お母さんの名前ですね。このみどりさんもよくわかんない人で、娘で、産婦人科医の理恵もムッチャ自己中。その娘の冷淡さをもっと深く描けたらグッときたかもしれないんだけど、何か中途半端に終わってしまいました。代理母に関しては法整備が遅れていますが、個人的には賛成できないけど、選択肢の一つとしてはあっていいのではないかと思います。

  •  「ジーン・ワルツ」の別視点バージョン。代理母となったみどりとその娘、理恵との関係。医療関係というよりは母と娘という視点中心。
     これほどすっぱりとではないが、私自身の母との関係に似た空気を感じた。だからこそ思えるのだが、理恵は「クール・ウイッチ」ではない。心の痛みを感じすぎるほど感じているからこそ、理論で武装して自分を守ろうとしているのだ。本当の魔女なら、もっと冷淡にすべてを切り捨ててでも通してしまえる術があるだろう。
     欠落した感情などない。ただ、自分が気付いていないだけだ。

  • つなぐ、つなぐ、つなぐ物語。
    欠落しているのはみどりさんもまた同じだったのかもしれないですね。
    見ないふりをしていた、深くは立ち入らないようにしていた。それでいいと思っていた。
    でも、それが自分だけの問題ではすまなくなって、大切なもののために動かなきゃならないと思えた時、何かを得たのかもしれない。
    『ジーン・ワルツ』読んでなくても楽しめるのだろうけど、そして私がそちらを先に読んだからかもしれないけど、やっぱり『ジーン・ワルツ』から読むほうが繋がりやすい気もするな。

  • 代理母の問題を取り上げる際、果たして親族なら大丈夫なのか、というテーマを扱う際には、普通の設定てよかったのかも。これだと娘の独断が強すぎて、テーマがブレる。

  • 大人になると感情的が悪で論理的が正しいようになりますが、出産、子育てには論理抜きの感情も大事なんだと思いました。

  • 『ジーン・ワルツ』で描かれた代理母出産。
    この物語を代理母側で描いた作品。
    普段、馴染みのない代理母出産だから、中々感情移入しずらかった。
    母娘関係でも、納得できる部分とできない部分がハッキリと分かれていた。
    代理母出産の問題提起としては、良い作品だったのではないだろうか。

  • 桜宮サーガ13冊目。
    "ジーン・ワルツ"の裏側。
    どのようにして娘の子供を孕むことにしたのか、なぜ生まれた子供は別れてそれぞれの親に親権が渡ったのか、といったことが書かれた話。
    色々考えてはいるんだろうけど、自分勝手な理恵にはイライラしてしまった。
    父親である伸一郎の考えにも共感するのは難しいなあ。

    内容としてはいろいろドロドロしたものの感じだけど、
    ラストが綺麗にまとまったためか読了感は良かったです。

    その後で娘の話か、派生して不良娘ユミの話とかが出そう。

  • 以前読んだ「ジーン・ワルツ」と表裏となるような作品。
    「ジーン・ワルツ」は、代理母問題の遺伝子上の母親・産婦人科医の立場から書かれた作品。
    この「マドンナ・ヴェルデ」は、実際に受精卵を宿す代理母の立場から書かれている。
    両方で一つの作品と言ってもいい。

    おなかに命を宿す「母」は強し。

  • ジーン・ワルツ、極東クレーマーほか海棠さんの本は好きでかなり読んでいるが、いろんな断片が登場するのも(再読しようかなぁ)面白かった。

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著者プロフィール

1961年千葉県生まれ。医師、作家。外科医・病理医としての経験を活かした医療現場のリアリティあふれる描写で現実社会に起こっている問題を衝くアクチュアルなフィクション作品を発表し続けている。作家としてのデビュー作『チーム・バチスタの栄光』(宝島社)をはじめ同シリーズは累計1千万部を超え、映像化作品多数。Ai(オートプシー・イメージング=死亡時画像診断)の概念提唱者で関連著作に『死因不明社会2018』(講談社)がある。近刊著に『北里柴三郎 よみがえる天才7』(ちくまプリマー新書) 、『コロナ黙示録』『コロナ狂騒録』(宝島社)、『奏鳴曲 北里と鷗外』(文藝春秋) 。

「2022年 『よみがえる天才8 森鷗外』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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