ラブレス

著者 :
  • 新潮社
3.94
  • (114)
  • (150)
  • (93)
  • (18)
  • (2)
本棚登録 : 827
感想 : 171
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103277224

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 女性が理解できる形で力強い。私はこれが好きだ。

  • 桜木紫乃さんの作品はこれで3作目。いずれも同じようなトーンで、暗く重く奥深かった。こんな不幸な人生があるのかと…、少し現実離れしているが(小説だから当たり前かもしれないが)何か考えさせられた。

  • 直木賞を受賞を知り、読んでみた。
    血縁関係が頭に入るまで少し苦労したが、ぐいぐいと小説の中に引き込まれた。
    哀しさも至るところにあったけど、読後は清々しさを感じた。
    ラブレスではなく、愛情で溢れてる話しだった。

  • 昭和26年、百合江は奉公先から逃げ出して旅の一座に飛び込む。「歌」が人生を変えてくれると信じて。それが儚い夢であることも知りながら…。他人の価値観では決して計れない、ひとりの女の「幸福な生」を描き出す。

    夕張の親戚の旅館に預けていた妹が戻ってきた。
    姉は父の借金返済で薬屋に住み込みで働く。主人に犯される。町を訪れた旅芸人一座の女演歌歌手弟子入りし、夜逃げ同然でついていく。
    妹は床屋に勤める 勤める。嫁に入り商売に成功。
    座長が死に、女演歌歌手が座長になる。お座敷ではストリップ、売春。
    演歌歌手が半身不随。東京のレコード会社を訪ねるが相手にされず。
    ヤクザから逃げながら、女形の宗太郎と流しで食いつなぐ。
    演歌歌手の見舞いに仙台へ。退院し、海で自殺。宗太郎の子を妊娠。
    実家に帰るが、妹の世話になる。流しとクラブ歌手で生活。
    子供が生まれると宗太郎は失踪。再婚するが夫は借金まみれ。旅館の住み込み。歌う女中さんとして人気がでる。娘は唄が上手かった。
    妊娠する。娘を姑に預けると遠くの親戚に預けた。借金の返済で売られていた。音楽大学教授の家にひきとられ、レコード大賞を受賞演歌歌手になっていた。
    老衰で生活保護を受けている。部屋には老いた宗太郎。娘のCD。
    妹は亭主の浮気相手が生んだ女の子を娘として育てていた。
    祖母が死ぬ直前に教えてくれた。
    自分の母の話を元に書いた小説を出版。手紙がくる。自分の父。
    出生の秘密を全て教えられる。血のつながりのない従兄。
    従兄は腹違いの姉妹。

  • 今まで読んだ桜木作品ではイチオシ!「ホテルローヤル」より、よかった。

    文章は淡々とつづられているけれど、深いところにある感情が伝わってくる感じ。

  • まるで大河ドラマのような女性の一代記。
    これがまたグイグイ引っ張られるように、一気読みしてしまうほど魅力的な人々と次の展開が、あっという間に最後の頁に導いてしまいました。

    桜木さんの作品では、今のところ一番すきかな。。。。

    最近出た、「無垢の領域」(元の題・モノトーンのほうが良かったような気がします)、の静謐感と最後のドンデンも良かったけど。。。。

  • 「毎日一生懸命生きている人から幸せだとか不幸せだとか聞いたことがありません。私の周りみんな年収300万円、400万円で子供を育てています。(中略)夢とか希望とか明日とかがなくても人は生きている。私は一生懸命生きている人が大好きだし、そういう人たちを書いていきたいんです」と桜木さんは直木賞のインタビューでおっしゃっていたが、まさにそういう人々を描いた…心に刻みつけられる傑作。
    ハリウッド映画ナイズされた私などはつねに「愛があるかないか」なんてことを価値判断の基準にしちゃうけど、それはやっぱ西欧とキリスト教のスタンダードだ。ただ今この時を懸命に生きることだけが、人の生きるべき道なのだ。
    これを読むことになった運命の流れに感謝。

  • 百合江の末期を迎え、回想される百合江の一生。百合江の一生は、昭和の厳しい時代の北海道ではあったにせよ、周りの人々に翻弄されていく姿はあまりに過酷で、目を覆いたくなる。それでも、自分の人生を「幸せだった」と振り返る。登場人物である母のハギ、妹の里実、そしてその子供4人も、それぞれが不遇、過酷な時代を懸命に生きている。女は強い。それにしても、こんなにリアルで圧倒的な文章を書く作者は金爆好きか・・・

  • ホテルローヤルを読んだ後この作品を知った。こちらの方がずっといい。タイトルと装丁がこの作品の持ち味を損ねている。
    自分の思うようにはならずに貧しさの中で育ってきて、だから行き当たりばったりの人生を後悔もなく送るようになり、開拓者の血が強く生きさせる。
    もっとうまく生きれば違う人生が開けそうにも思うが、真っ只中にいては流れに身を任せる道を行く。その時にはわからないちょっとした誤解がさらに悪い方向へと向かわせていることにも気づかず。
    百合江は位牌を握りしめてどんなふうに人生を振り返っているのだろう。

  • 北海道で夕張炭鉱夫の娘として生まれた杉山百合江の波乱万丈の人生。
    開拓村に入植した酒飲みの父親に高校進学もさせてもらえず奉公に出され、借金の形に店主の親父に乱暴される。飛び出して旅芸人の一座に加わり、座長が倒れて解散、一緒に流しをしていた男の子供を産んで病院から帰ると男は消えていた。妹の紹介で結婚した役所勤めの男には借金があり、返済のため旅館で働く。帝王切開で子供を産み、炎症を起こしていた子宮は姑の同意書により摘出される。病院から戻ると更に膨らんだ借金を帳消しにするため連れ子は売られていた。娘を返せと姑の首を締めれば夫に腹を蹴られ帝王切開で縫った傷が開いて裁縫合。娘の誘拐を警察に届けるも、役所勤めの夫により百合江は気がふれたことにされ受理されない。開拓村の母親が弟に殺されそうなので連れて帰る。キャバレーのステージで歌ったり、リフォームの店を出したりして貯めた金で郊外に老後のための土地を買ったら取引先が架空の会社で無一文になる。生活保護を受け、老衰で倒れる。
    そんな人生でも誰を恨むでもなく欲を出すでもなく、自分に折合いをつけて淡々と生きていく。それが北海道の土地柄に絶妙にマッチしていると感じた。『ゼロの焦点』での雲がたれこめる金沢の印象に近い。
    ラストは確かにいいシーンだけど、私としては日の出観光の石黒さんに締めてもらいたかった。あと綾子を売った高樹親子には天誅が下って欲しかったとつくづく。
    直木賞受賞作の『ホテルローヤル』より素晴らしい内容なのに、ラノベと見紛うタイトルと装丁があまりにもアンバランスで気になった。

    p154
    ルンペンストーブ

全171件中 71 - 80件を表示

著者プロフィール

一九六五年釧路市生まれ。
裁判所職員を経て、二〇〇二年『雪虫』で第82回オール読物新人賞受賞。
著書に『風葬』(文藝春秋)、『氷平原』(文藝春秋)、『凍原』(小学館)、『恋肌』(角川書店)がある。

「2010年 『北の作家 書下ろしアンソロジーvol.2 utage・宴』 で使われていた紹介文から引用しています。」

桜木紫乃の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×