- Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
- / ISBN・EAN: 9784103277224
感想・レビュー・書評
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女性が理解できる形で力強い。私はこれが好きだ。
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桜木紫乃さんの作品はこれで3作目。いずれも同じようなトーンで、暗く重く奥深かった。こんな不幸な人生があるのかと…、少し現実離れしているが(小説だから当たり前かもしれないが)何か考えさせられた。
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直木賞を受賞を知り、読んでみた。
血縁関係が頭に入るまで少し苦労したが、ぐいぐいと小説の中に引き込まれた。
哀しさも至るところにあったけど、読後は清々しさを感じた。
ラブレスではなく、愛情で溢れてる話しだった。 -
今まで読んだ桜木作品ではイチオシ!「ホテルローヤル」より、よかった。
文章は淡々とつづられているけれど、深いところにある感情が伝わってくる感じ。 -
まるで大河ドラマのような女性の一代記。
これがまたグイグイ引っ張られるように、一気読みしてしまうほど魅力的な人々と次の展開が、あっという間に最後の頁に導いてしまいました。
桜木さんの作品では、今のところ一番すきかな。。。。
最近出た、「無垢の領域」(元の題・モノトーンのほうが良かったような気がします)、の静謐感と最後のドンデンも良かったけど。。。。 -
「毎日一生懸命生きている人から幸せだとか不幸せだとか聞いたことがありません。私の周りみんな年収300万円、400万円で子供を育てています。(中略)夢とか希望とか明日とかがなくても人は生きている。私は一生懸命生きている人が大好きだし、そういう人たちを書いていきたいんです」と桜木さんは直木賞のインタビューでおっしゃっていたが、まさにそういう人々を描いた…心に刻みつけられる傑作。
ハリウッド映画ナイズされた私などはつねに「愛があるかないか」なんてことを価値判断の基準にしちゃうけど、それはやっぱ西欧とキリスト教のスタンダードだ。ただ今この時を懸命に生きることだけが、人の生きるべき道なのだ。
これを読むことになった運命の流れに感謝。 -
百合江の末期を迎え、回想される百合江の一生。百合江の一生は、昭和の厳しい時代の北海道ではあったにせよ、周りの人々に翻弄されていく姿はあまりに過酷で、目を覆いたくなる。それでも、自分の人生を「幸せだった」と振り返る。登場人物である母のハギ、妹の里実、そしてその子供4人も、それぞれが不遇、過酷な時代を懸命に生きている。女は強い。それにしても、こんなにリアルで圧倒的な文章を書く作者は金爆好きか・・・
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ホテルローヤルを読んだ後この作品を知った。こちらの方がずっといい。タイトルと装丁がこの作品の持ち味を損ねている。
自分の思うようにはならずに貧しさの中で育ってきて、だから行き当たりばったりの人生を後悔もなく送るようになり、開拓者の血が強く生きさせる。
もっとうまく生きれば違う人生が開けそうにも思うが、真っ只中にいては流れに身を任せる道を行く。その時にはわからないちょっとした誤解がさらに悪い方向へと向かわせていることにも気づかず。
百合江は位牌を握りしめてどんなふうに人生を振り返っているのだろう。 -
北海道で夕張炭鉱夫の娘として生まれた杉山百合江の波乱万丈の人生。
開拓村に入植した酒飲みの父親に高校進学もさせてもらえず奉公に出され、借金の形に店主の親父に乱暴される。飛び出して旅芸人の一座に加わり、座長が倒れて解散、一緒に流しをしていた男の子供を産んで病院から帰ると男は消えていた。妹の紹介で結婚した役所勤めの男には借金があり、返済のため旅館で働く。帝王切開で子供を産み、炎症を起こしていた子宮は姑の同意書により摘出される。病院から戻ると更に膨らんだ借金を帳消しにするため連れ子は売られていた。娘を返せと姑の首を締めれば夫に腹を蹴られ帝王切開で縫った傷が開いて裁縫合。娘の誘拐を警察に届けるも、役所勤めの夫により百合江は気がふれたことにされ受理されない。開拓村の母親が弟に殺されそうなので連れて帰る。キャバレーのステージで歌ったり、リフォームの店を出したりして貯めた金で郊外に老後のための土地を買ったら取引先が架空の会社で無一文になる。生活保護を受け、老衰で倒れる。
そんな人生でも誰を恨むでもなく欲を出すでもなく、自分に折合いをつけて淡々と生きていく。それが北海道の土地柄に絶妙にマッチしていると感じた。『ゼロの焦点』での雲がたれこめる金沢の印象に近い。
ラストは確かにいいシーンだけど、私としては日の出観光の石黒さんに締めてもらいたかった。あと綾子を売った高樹親子には天誅が下って欲しかったとつくづく。
直木賞受賞作の『ホテルローヤル』より素晴らしい内容なのに、ラノベと見紛うタイトルと装丁があまりにもアンバランスで気になった。
p154
ルンペンストーブ