やりなおし世界文学

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 1268
感想 : 62
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  • Amazon.co.jp ・本 (331ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103319832

作品紹介・あらすじ

ギャツビーって誰? 名前だけは知っていたあの名作、実はこんなお話だったとは! 『ボヴァリー夫人』は前代未聞のダメな女? 『郵便配達は二度ベルを鳴らす』はDQN小説!? 待ってるだけじゃ不幸になるよ『幸福論』。人が人を完全に理解することは不可能だけれど、それでも誰もがゆらぐ心を抱えてゆるし生きていく『灯台へ』。古今東西92作の物語のうまみと面白みを引き出し、読むと元気になれる世界文学案内。

感想・レビュー・書評

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  • 中高生の頃は近代文学と呼ばれるものを読んでいましたが、最近は読みやすい現代の人気作家さんの新刊本ばかり読んでいるので、目次を見て「こんな昔の本ばかり並んでいて面白いかな」と思いましたが、それは杞憂でした。

    この本、めちゃくちゃ面白かったです。星6つにしたかったくらいです。
    ブクログでレビューを読むのが好きな方は絶対面白いと思うはずです。

    未読の本は読みたくなるし、読了済みの本も「へぇ、こんな読み方があったんだ」と話の深さに感心します。さすがプロの作家さんだと思わずにはいられません。
    私もこんな風にレビューを書いてみたいものだとも思いました。


    本文から、どんな風に書かれているか少しだけ引用してみます。


    「あるお屋敷のブラックな仕事」
    『ねじの回転』ヘンリー・ジェイムズ(新潮文庫)
    (前略)この小説は「あらすじが怖い話」ということ以上に、怖いことを体験した人の心情の揺れが余さず描かれている。『ねじの回転』は臨場感の小説だと思う。(中略)
    兄妹が亡霊から解放され普通の子供に戻るのか、そのままなのか、というさじ加減が五分五分で、ひどい時には、一ページごとに状態が変わり、先生は揺れ、読者も揺れる。お化け屋敷のような小説である。(後略)


    「オー・ヘンリーに学ぶ技術とは何か」
    『オー・ヘンリー傑作選』オー・ヘンリー(岩波文庫)
    (前略)オー・ヘンリーは、人のどの部分を描けば、手短に鮮やかにその人間のことを描けているということになるかを知っていた。そしてその人間をどのような話の中で生かせば小説が立つのか判断が的確だった。天性のものなのか、人と関わる中で体得したものなのかはわからないけれども、これこそが技術なのだろうと思う。(後略)


    「『ペスト』が洗い出す凡庸な人間の非凡な強さ」
    『ペスト』カミュ(新潮文庫)
    (前略)ペストとは、人間がかこつ理不尽な運命の寓意であり、本書はそれに対する抵抗の本質を描いている。ペストがなければただの人だったかもしれない普通の人々は、これだけの強さを隠し持っていて、それを特別なことと誇りもせず、疲労して奪い取られながらも目の前のことに立ち向かう。神にも愛にも依らない、この強さは何なのだろう。(後略)



    他にも面白い書評が全部で92作載っていますが、興味のある方は本書を是非ご覧ください。

    • まことさん
      naoちゃん♪

      津村さんのお仕事系、確かに1作は何か読んでると思うのですが、タイトルは、わからなくなってしまいました。
      ブクログも始める前...
      naoちゃん♪

      津村さんのお仕事系、確かに1作は何か読んでると思うのですが、タイトルは、わからなくなってしまいました。
      ブクログも始める前なので、内容も、面白かったとしか、覚えてないのです
      2022/06/08
    • まことさん
      また、投稿が切れました。

      「世界の終わり」は二つのなんか幻想的な世界が交互に現れるやつです。「ねじまき鳥」は井戸に入るので、全部読んでるけ...
      また、投稿が切れました。

      「世界の終わり」は二つのなんか幻想的な世界が交互に現れるやつです。「ねじまき鳥」は井戸に入るので、全部読んでるけど、全然意味がわからなかった
      2022/06/08
    • まことさん
      また、切れました。

      「国境の」は村上作品では、珍しく泣きました。

      では、この辺で!
      また、切れました。

      「国境の」は村上作品では、珍しく泣きました。

      では、この辺で!
      2022/06/08
  • 笑えてなぜか勇気が湧いてくる読書案内。どんな話にも読みどころがあるという津村さんの思いが伝わり本が好きでよかったと思わせてくれる。読みたい本増え、中島敦や『スローターハウス5』『城』など好きな物語を更に味わいたくなる。

    • 111108さん
      読みたい本
      『華麗なるギャツビー』『アシェンデン 英国秘密情報部員の手記』『ストーカー』『灯台へ』『樽』『ペスト』『宝島』『外套・鼻』『ヘン...
      読みたい本
      『華麗なるギャツビー』『アシェンデン 英国秘密情報部員の手記』『ストーカー』『灯台へ』『樽』『ペスト』『宝島』『外套・鼻』『ヘンリー・ライクロフトの私記』『鼻行類』『カラマーゾフの兄弟』
      2023/09/20
  • 作家である津村記久子さんが、10代のときに読んだ文学の紹介である。
    その当時の名作が、よみがえるかのようだ。
    だが私は、10代の頃はほとんど読まなかった気がする。
    この中で92冊紹介されているが、10冊も満たないくらいである。
    なので未読が多く、興味深い。
    こうなると気になってしまい、また積み読本が増えることになる…。
    しかし、津村さんの文章を読んでいるだけで満足しているところもある。
    ユーモアもあり、読みやすい。
    図書館で借りたが、まだまだ読み足りない。

  • またまた良い本を見つけました!

    まず、恥を忍んで白状します。本書で取り上げられている92作品のうち、読んだことあるのは、なんと、なんと、ゼロです!

    ・スコット・フィツジェラルド 『華麗なるギャツビー』→映画観たような(遠い記憶)
    ・アントン・チェーホフ 『かもめ』→あー、これ、映画好きだった。(「かもめ食堂」と勘違い。)
    ・オー・ヘンリー 『オー・ヘンリー傑作選』→記憶違いでなければ、短編一個くらい知ってるかも(ホントかよ)
    ・チャールズ・ディケンズ 『クリスマス・キャロル』→読んだような読んでないような、でも、あらすじはわかるわ(ホントかよ、アゲイン)
    ・P・L・トラヴァース 『風にのってきたメアリー・ポピンズ』→映画観たような(すでに完全な記憶喪失)
    ・アンリ・ミュルジェール 『ラ・ボエーム』→プッチーニのオペラ「ラ・ボエム」とは違うの?(オペラは泣けたよー)

    どうです、いくら外国文学に疎いとはいえ、この散々な結果。しかも、タイトルも作者も、ほっとんど知らない。唯一、私の「いつかは読みたい本リスト」に入っているのは、ヴィクトール・E・フランクル 『夜と霧』。(これはぜひいつか読みましょう。)

    こんな状態で、しかも92作品について、1頁に2段(2段組っていうんですかね?)の大量の文字文字文字・・・うぅ、図書館の返却日までに読めるかな、と気後れしながら読みだした一つ目がスコット・フィツジェラルド 『華麗なるギャツビー』。堅苦しくないざっくばらんな津村氏のあらすじ紹介兼感想みたいな文章がすっと入ってきて、「ほぅ、これってそういう話だったのね。いやいや、まだ良さがわかったとは言えないけど、少ーしはわかったわ」と思い、少し、頑張って読み続けてみようと思った。
    さすがに知らない本ばっかりなので、あらすじや登場人物はあまり頭に入ってこない。なのに、津村氏の文章がおもしろくて、ついつい引き込まれた。独自の視点で登場人物が周りにいそうな人に置き換えられて、新たな津村作の物語を展開しつつ、本の内容紹介と感想が始まり、時にはツッコミも入れつつ・・・津村氏のようにこのブクログも書けたらいいのに。と、津村氏の文章にとても魅了されました。
    いや~、大変おもしろく知らない世界、外国文学を垣間見せてもらいました。名作は名作なりの理由があるんですね~。ただ、私に読めるか、と言われれば「無理」と思う作品ばかりで、どうにか読めそう、読みたいと思ったのは先述の「『夜と霧』と「ペスト」くらいだったかな・・・(少なっっ!)

    こんなにたくさん作品を読んでレビューを書くだけでもすごいと思うのに、おもしろくわかりやすい文章で、「出会ってよかった、この本」と素直に思いました。

    ちなみに図書館返却日には間に合わず、延長しました(汗)

  • 【EVENT】6/11(土)18:30「やりなおし世界文学」刊行記念、津村記久子トークイベント | STANDARDBOOKSTORE
    https://www.standardbookstore.net/2022/05/18/20220611_tsumura/

    やりなおし世界文学 | 津村記久子 , 100%ORANGE | 連載一覧 | 考える人| シンプルな暮らし、自分の頭で考える力。知の楽しみにあふれたWebマガジン。 | 新潮社
    https://kangaeruhito.jp/articlecat/worldliterature

    津村記久子 『やりなおし世界文学』 | 新潮社
    https://www.shinchosha.co.jp/book/331983/

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      古典文学の登場人物はDQN? 芥川賞作家による身もふたもない世界文学案内がおもしろい|Real Sound|リアルサウンド ブック
      htt...
      古典文学の登場人物はDQN? 芥川賞作家による身もふたもない世界文学案内がおもしろい|Real Sound|リアルサウンド ブック
      https://realsound.jp/book/2022/06/post-1051224.html
      2022/06/13
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      【本棚を探索】第26回『やりなおし世界文学』津村記久子著/三宅 香帆|書評|労働新聞社
      https://www.rodo.co.jp/co...
      【本棚を探索】第26回『やりなおし世界文学』津村記久子著/三宅 香帆|書評|労働新聞社
      https://www.rodo.co.jp/column/134424/
      2022/07/15
  • 津村記久子さんの文学案内というだけでおもしろそうなのに、岸本佐知子さんが帯を書かれているなんて強すぎる…!!
    …と思いながら迷わずレジに運んだ本。

    ざっと目次を眺めただけで、各章のタイトルのキレのよさに痺れていたのですが、本文のほうもキレッキレでした。
    冒頭から、津村さんが『華麗なるギャツビー』を読まずにいた理由が自分と同じだったことに共感。
    曰く「だって華麗とか言われたら、自然と自分に関係ないなって思ってしまうじゃないですか。」
    しかし津村さんは続けて、そういう理由で避けている人であればあるほど、本書の切実さがささると書いてくれていて、一気に気になる1冊になったのでした。

    津村さんの手にかかると、ジェイン・オースティンの『ノーサンガー・アビー』は、"ひとたび話し始めたら止まらず話がめちゃめちゃ上手い法事でだけ会う親戚の姉ちゃんみたいな小説"になるし、オスカー・ワイルドの『ドリアン・グレイの肖像』は、"頭がからっぽな人の性根が腐ってゆく小説"になってしまうのが最高でした。
    世界文学を読んで感じたままをそのまま、なんの遠慮もなく書いている感じがたまりません。
    思わず声を出して笑っちゃうことも多々。

    読んでみたくなった未読作品がたくさんあるし、読んだことのある作品ももう一度読み返したくなりました。
    そして読み終えたら、いそいそと本書を引っ張り出して、津村さんと語らいたい…。

  • ねじの回転を読んだ直後だったので、往年の文学作品に興味出てきて手に取った本。
    作者の考察があまり深くなく、本当に思ったことをエッセイ調に書いてるので、文学作品を掘り下げて知りたい人には不向き。
    この作者自体知らない人だったので、大阪の女友達の読書歴を教えてもらった感覚。

  • 著者の小説は読んだことがありませんが、本人曰く「文学に詳しくない人が書いた」ということです。とはいえ、プロから見た文学作品の感想は、とてもおもしろかったです。
    私が読んでもよくわからなかった作品でも、解説を読むと「そういう話だったのか」と納得できました。いくつか読んでみたい本も増えました。

  • 一年くらい?かけてちょっとずつ読んでいてやっと読み終わったんだけど、それでもけっこうおなかいっぱいな感じはあったけど、いやこれはもう、津村さんの文章の芸というか技というかを堪能する本ではないかと。なんでこんなにおもしろく書けるのだ? あらすじを説明しているだけでおもしろい。紹介されている本は古典とか名著ばかりで、ちょっととっつきにくそう、難解そうと思う本が多いのに、津村さんのあらすじ読むとぐっと身近に感じられておもしろそうかも、と思えてくる。身近、をとおりこして、え、意外とアホっぽいのか、とか思ったり。
    それでいて、文章の最後で、その本のすばらしいところをびしっと決めてくる感じがあって、その本読んでないのに感動することもあったり。
    こんなふうに本のレビューが書けたらどんなにいいか、とあこがれる。絶対書けない。

  • タイトルは知っている、キャラクターの名前も知っている、でも肝心のその本自体は読んだことがない有名作というのが私にも多々ありますが、こちら津村記久子さんがそんな世界文学にチャレンジした読書エッセイ。紹介されている本は既読と未読が半々くらいだったかな。

    スタートは『華麗なるギャツビー』。確かに私もギャツビー誰それ?って思ってた(笑)そしていまだに読めていない。そろそろチャレンジしてみようかなあ。

    たとえば私自身の経験で言えば「高慢と偏見」も「罪と罰」も「モンテクリスト伯」も、読む前は敬遠していたけれどいざ読んでみたらべらぼうに面白くてさすが名作!と目からウロコだったので、やっぱり名作は一読の価値がある、読んで損はしないものなんですよね。先入観を捨てて名作文学また読んでみようと改めて思いました。

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著者プロフィール

1978年大阪市生まれ。2005年「マンイーター」(のちに『君は永遠にそいつらより若い』に改題)で第21回太宰治賞。2009年「ポトスライムの舟」で第140回芥川賞、2016年『この世にたやすい仕事はない』で芸術選奨新人賞、2019年『ディス・イズ・ザ・デイ』でサッカー本大賞など。他著作に『ミュージック・ブレス・ユー!!』『ワーカーズ・ダイジェスト』『サキの忘れ物』『つまらない住宅地のすべての家』『現代生活独習ノート』『やりなおし世界文学』『水車小屋のネネ』などがある。

「2023年 『うどん陣営の受難』 で使われていた紹介文から引用しています。」

津村記久子の作品

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