母性

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (266ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103329114

感想・レビュー・書評

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  • す、救いが、ない…

    あと数ページだぞ?
    これどうなるんだ??
    って思ってたら、そのまま終わっちゃった。
    他の人がどう思ったかはわからないけれど、
    私はルミ子には結局母性は宿らなかったと思ってる。
    永遠の娘。

    表面上うまく行っているように見えるのは、
    清佳が昔のように母の愛情を求めて頑張らなくなり、
    いろいろなことを諦めたからではないかな…と。

    私は、子ども時代を子どもとして過ごせた人ほど
    ちゃんと大人になれるんじゃないかと思っている。
    『ちゃんとした大人』とはなんぞや、と言われると難しいけど、
    たとえば、自分の好物が出てきた時、
    それを我が子が欲しがったら譲ってやれるとか、
    そんな程度でも『ちゃんとした大人』だと思う。
    子どものときは早く大人になりたいなんて思うものだけれど、
    大人になってから思うことは、
    一応、大人には誰でもなれる。というかなってしまう。
    でも一度大人になったら、もう子どもには戻れない。
    だから子どもでいられるうちは目一杯子どもを楽しんだ方がいい、ということ。
    清佳は今でいうところのヤングケアラーみたいな感じだと思うけれど、
    彼女たちは強制的に『子どもでいる権利』を取り上げられている。

    本当なら頭を撫でてもらいたい、世話をしてほしい母親に
    そうとは言えず、逆に母を守ろうとしてしまう。
    たぶん彼女が賢くて優しすぎたからだと思う。
    英紀みたいに暴れて主張できたらどんなに楽だったか。
    途中読んでて泣くのを堪えるのが大変だった。
    私が田所の家に乗り込んで、端から全員頭ひっ叩いてやりたかった。
    ルミ子の両肩を持って、目を合わせて
    『お前のためにどれだけこの子が頑張ってるか、
    本当に何も見えてないのか?』と問い詰めてやりたかった。
    それくらい、理不尽。
    最後の時だって母親に罪を犯させるわけにはいかない、
    首に残った跡を隠すために桜の木の下を選ぶってさ、
    そんなこと、子どもにさせてはいけないよ…。

    清佳は教師だからよその家庭もたくさん見ただろうし、
    本人が思うより良い母親になるんじゃないかな。
    ただ思う。
    清佳も含め、子ども時代を奪われたすべての子どもたちの時間は
    もう二度と戻ってこないんだよなぁ…。
    それがどれほど罪深いか、親は考えたことがあるだろうか。

  • 母の手記で、自分は娘に愛を注いでいるのに、娘がそれに応えてくれない。私は娘にこれだけのことをしてあげてる。と自分を正当化、美化しているけど、娘の回想とではギャップがあって、暴力を奮っていることは隠しているのか、都合よく記憶をすり替えているのかそれも愛だと思っているのか…結局この母は自分に否があったということ(自分がおかあさんの1番でありたい、周りからの評価や世間体を気にしすぎて娘のことは全然分かってやれていない)ということにずっと気づかないんだろうな。
    最後は少し明るい?雰囲気で終わったと思うけど、それは成長した娘のおかげだよ。
    あのお父さんも暴力を振るわれてたり、同情するところもあるかもしれないけど、それにしても冷たすぎるし、結局自分だって娘から目をそらしてたんじゃないの?
    そして田所の家は本当に終わってたけど、最後りっちゃんがあの猿みたいだったヒデキをたこ焼き屋でバイトとして雇っているあたりが、親がどうしようもなくても、子供はちゃんと大人になるし、兄弟同士は絆があって、母性とか子供の育て方って何が正解っていうのは分からないけど、いい親いい育て方をされたから良い子が育つ、悪い親には悪い子が育つってわけではないんだよなーって改めて感じさせられた。

    • うさぎのしっぽさん
      あのヒデは英紀だったのか!!!
      なんで気が付かなかったんだ…
      息子だと思って読み飛ばしてました。。。
      ありがとうございます。
      そう考えると兄...
      あのヒデは英紀だったのか!!!
      なんで気が付かなかったんだ…
      息子だと思って読み飛ばしてました。。。
      ありがとうございます。
      そう考えると兄弟って有難いですよね。
      2022/12/16
  • タイトルは「母性」だか私が一番印象に残ったものは子が母を求める欲求だった。母と娘、二人に共通していたのは母から愛されたい、認められたいという気持ちがあることだ。

    ただ、それが強く芽生えた原因は正反対。母は祖母から愛情をたっぷり注がれ、もっと母に愛されたいと思った。娘は母が意識的に自分を避けていることに気付き寂しさから、もっと母に愛されたいと思った。どちらも結果として歪んだ感情を形成してしまった。

    子を持つ親として子供との関わり方を考えさせられた。母と娘、親子だが生物学上は他人。それをきっちり理解することだろう。私の娘だから○○なはず、考えていることは同じなはずとは考えずにしっかりお互いを理解し個性を尊重し合う。その上で娘が大きくなったら適度な距離感を保ち親離れ、子離れをする。

    言葉では簡単だが実践出来ている家族がどれほどいるのだろうか。

  • まだ読んでいなかった作品。

    最後はなんか幸せに終わった感があるが、なぜかジワジワと恐怖感が残る。
    湊さんの作品ってそういえばこうだな~と感じながら読み進めた。

    言わないとわからない事、伝わらない事。
    相手の思いをくむ事なんて結構難しい。
    娘は母を愛していた。それは母も同じように自分の母を愛していた。
    だけど、娘には?
    母の手記は娘の回想よりもきれいにまとめられている。
    この手記は娘は読んだのだろうか。

    母性か・・・私は母から愛情を受けただろうか。

    やっぱり、まんまと湊さんの罠にはまってしまったな。
    リルケは私には難しい。

  • イヤミスの湊かなえさん、らしい一冊。
    もうタイトルの「母性」からして、嫌な感じしかしない。「愛能う限り」って本当に怖い。
    私は「娘」であり、「母」であるけれど、やっぱり共感できない。なのにページを捲る手を止められなくなって、一日で読み切ってしまう。そんな凄さがある。
    出てくる人物誰とも関わりたくないし、共感もできないけれど、何となく私は娘を持たなくてよかったと変な回想までさせる。母と娘はややこしいですもんね。ある意味共感してるのかもしれないです。

  • 愛されて育てばまだ次代に愛を繋げられる人間になると思っていたが、出産しても、役割が明らかに変わっても、自分は娘でい続けたい、愛情を受け取る側でいたいと無意識に願う人もいるのだなと思った。
    理解してもらえれば愛してもらえる、とういう盲目的な自信、愛されなかった人の諦観、理解してるのに愛情を求めてしまう悲しい性。三つ巴の悲しいけどどこにあってもおかしくない家庭構図を見た。
    娘、母親の双方の手記として語られているが、母親目線で語られることの現実との乖離が、もはや認知の歪みだと思う。
    登場人物すべて胸糞悪いが最終的には元サヤに戻り、特に咎めることもない感じがこれまた家族の包容力でもあるのかなと思う。

  • 母性、色んな形があるね
    本当の意味で神聖なものもあれば、自分のエゴを華美にするためのオブラートのようなものも
    それでも、両者の根底にある思いには通ずるものがあるのかな
    だから、それを受ける者はもらった愛情が本物かどうか分からなくなるときがあるのかもしれない
    目に見えないものだからこそ、わかりにくい
    でも、目に見えてしまったら、逆にそのような醜い部分も残酷なまでに浮き彫りになってしまう
    愛の表情は天使でもあり、悪魔なのかもしれない
    だからこそ、人はその理想を神に求めるのかもしれないね

  • イヤミスに相応しい後味の悪さを感じる作品。

     まず母だが、とんでもない毒親であることは間違えないが、その後の出来事が不憫すぎて、一概に悪い人だとは言えない。というよりも、自分の母、娘にとってのおばあちゃんに心底依存しているからこそどこか壊れてしまっている可哀想な人。
    本作は母性ということで大まかに3人の母親が登場するが、思えばそのどれもが問題がある人物なのではと思わされた。義母と母に関しては言わずもだが、おばあちゃんに関しても、強烈な愛情だけ与え、とことん娘を甘やかし自立できない人間にした、ある意味毒親とも言える。しかしながら、本作に登場する母親は、誰もが親として愛情を持って接したいと考えている人物で、だからこそ責めることはできないとも思う。こういっは背景があり、所謂お嬢様として育てられた母だからこそ、あの環境には耐えられるはずもなく壊れていったのは、自身と娘との文章の食い違いから見てわかる。
     次に娘だが、実に不憫な生い立ちで、だからこそ母に依存しているところが見受けられる(もちろん母ほど病的なものではないが)。その生い立ちから教師として、同じような境遇にいる人間に対して敏感なのかもしれない。余談だが、見るからに騙されていそうな律子が1番幸せな家庭を持っていそうなところが面白いところ。

    この話からの学びとして、と書こうと思ったが、何か学びがあったのかと言えば、うまく言語化できない。結局のところ人間関係というものは自分本位で進むのだから、親としてのあり方や受け取り方というものは人によって異なるのだろう。そう考えれば、特段の不自由もなく、愛されて育ててくれた両親には感謝しかない。まぁ、依存しすぎは良くないけれどもね。

    湊かなえらしさが出た、良い作品だった。

  • 途中で何度も読むのをやめてしまおうかと思うほど、辛い。辛い

  • 湊かなえ節炸裂。一人称で語られる悲しく切ない親子のすれ違い。

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著者プロフィール

1973年広島県生まれ。2007年『聖職者』で「小説推理新人賞」を受賞。翌年、同作を収録した『告白』でデビューする。2012年『望郷、海の星』(『望郷』に収録)で、「日本推理作家協会賞」短編部門を受賞する。主な著書は、『ユートピア』『贖罪』『Nのために』『母性』『落日』『カケラ』等。23年、デビュー15周年書き下ろし作『人間標本』を発表する。

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