八月の銀の雪

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103362135

感想・レビュー・書評

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  • なんだか不思議な感覚のお話。

    地球の核の話、クジラの考え事の話、伝書鳩の話、珪藻の話、そして凧からの原発の話。

    科学の本なのかな?なんだか勉強になったような気がする笑。科学が好きな人と、それにちょいと関わってしまう人。
    どの人も、話を聞くうちにその世界に惹き込まれていく。

    地球上には、いろんな生物がいていろんな現象が起きてるのに、私は何にも知らないで生きてるんだなぁと思った。

    伝書鳩アルノーの話と、珪藻の話が特に好きだな。

  • すごく不幸、というわけではないけれど。

    うっすらとした寂しさが漂う日々にささやかな幸せが小さな結晶のように舞い降りる、そんな5つの短編集。

    お気に入りは『海へ還る日』
    「なりたいものなど何もなく、ただ母親にだけなってしまったーーー。」(P78)

    主人公が人と出会って、ほんの少し、気持ちが変わる。問題は解決しないけれど、それでもいい。

    理系の作家さん、好きです。(文系の)私と同じものを見て違うものを受け取る人。伊与原さんは、同郷そして(もしかしたら)同学年の方ということで親近感が沸きました(^-^)

  • 第一印象は、ふわっとした話の短編集。何の話と言うのが難しい。それぞれの人のそれぞれの生き方、ところどころ心に刺さるエピソードがあり、自分と主人公が重なると入り込めるかも知れない。

  • 面白かった。クセがなくて読みやすい。
    特に、シングルマザーのお話が良かった。博物館に行きたくなった。
    参考文献の量がとても多くて、非常に丁寧に調べて取材して、この作品が書き上げられだのだということを実感。

    ただ正直に言うと、1年後にはおそらく内容を忘れていると思う。
    最近は人の傷みをテーマにしたものが多くて、どこかで読んだことがあるような雰囲気。
    現代社会における生きづらさ、苦しさ、虚無感。
    そんなものを抱えている人たちが、誰かに、何かに出会い、少しでも前へ歩き出す勇気をもらう。
    この作品がつまらないとかではなくて、たまたまこの本を読む前に立て続けに同じようなテーマの本を読んでしまっていたから、どこかで読んだことがおるなと感じてしまったんだと思う。

    ただ、そういったテーマのものが話題になるということは、それに共感し、勇気をもらう人たちが多くいるということで、自分の中にある弱さと向き合いながらみんな生きてるんだよね。

  • 自分の人生に迷いや不安を抱いている人たちが前を向くまでの短編集。どの話も最後はほっこりします。
    全ての話に科学の知識が絡んできますが、説明は丁寧で分かりやすかったと思います。科学と言えば難しい、いかに幻想的な現象でも現実的に解き明かすというイメージがあります。悪くいえば浪漫とは逆の存在。
    これらの物語で語られる科学はロマンチックではないけれど、聞いていて何だか夢のある話だと感じざるをえませんでした。
    私は題名にもなっている八月の銀の雪が1番好きです。グエンの「なんで自分たちの住む星の中のことを知りたくならないのか、内側がどうなっているのか、気にならないのか」という言葉が刺さりました。何でもかんでも実用的なことに繋げようとするのは、現代日本の良くない傾向だと思います。科学の知識を実用的なことに生かすことは良いことでしょうが、生かせなかったらその研究に意味や価値がないと断言するのは間違っています。誰も辿り着けなかった謎の解明が無意味なんてことは絶対ないです。

  • 【あらすじ】
    耳を澄ませていよう。地球の奥底で、大切な何かが静かに降り積もる音に――。不愛想で手際が悪い――。コンビニのベトナム人店員グエンが、就活連敗中の理系大学生、堀川に見せた真の姿とは(「八月の銀の雪」)。会社を辞め、一人旅をしていた辰朗は、凧を揚げる初老の男に出会う。その父親が太平洋戦争に従軍した気象技術者だったことを知り……(「十万年の西風」)。科学の揺るぎない真実が、傷ついた心に希望の灯りをともす全5篇。

    ・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆

    科学ってすごい…と思える短編集です。科学がすごというか、例え日の目を浴びない分野であっても、科学に深く関わっている人がすごい。そんな人になりたいと思ってしまいます。
    どの話にも共通するのが「科学」です。この本を読むと、人間が何百年かかっても解き明かせないような無限の世界が広がっていること、そして、ありきたりな言葉ではありますが、人間のちっぽけさを思い知らされます。日々の悩みが「地球レベルで見たらどうでもいい」と感じるレベルです。

    最近、YouTubeで生物や地理、宇宙などに関する解説動画をよく見ているのですが、知らないことを知れるってすごく楽しいですし、その分野が好きで日々研鑽している人がこの世のどこかにいると考えるとワクワクしてきます。自分自身も好きなことに対してそうありたいのですが、中途半端で歯痒いです。一生かけても解き明かせない・調べ尽くせないことを追い続ける…人生において、そういう一面があっても良いなと思いました。

  • 思いがけない人との出会いによって、人生か好転していく。何気ない日常が描かれている。
    人との出会いを大切にしたい。

  • 初めましての伊与原新さん。本屋大賞ノミネートおめでとうございます。装丁がとても美しくてノミネートされる前から気になってました。

    「科学の揺るぎない真実が傷ついた心に希望の灯りをともす」五つの短編集です。

    自然科学を題材に取り入れたお話で、科学と聞くとちょっと身構えてしまうけれど、文体はとても優しく読みやすかったです。

    伊与原さんはプロフィールによると、神戸大学理学部卒業後、東京大学大学院理学系研究科で地球惑星科学を専攻し、博士課程修了…だそうで、地球惑星科学って、初めて聞きました。でもすごくおもしろそう。

    表題作『八月の銀の雪』は就活がうまく行かない大学生とベトナム人のコンビニ店員さんのお話。地球の内核に降る銀の雪ってめっちゃ素敵。やっぱり何か一つのことに打ち込んでいる人の話は好きです。

    あと『玻璃を拾う』も人付き合いは不器用だけど譲れない好きなもののある人、好きです。珪藻アート、検索しちゃいました。『珪藻美術館』という本があるらしく、見てみたくなりました。

    他にもシングルマザーとクジラ、夢をあきらめた不動産屋と伝書鳩、原発の下請け会社を辞めた男と凧と風船爆弾、などなど。

    科学が苦手な私にも興味深くわかりやすく書かれていて、今まで知らなかったことが知れる楽しさがありました。そしてどのお話もみんな読み終わった後には背筋を伸ばして前を向いて歩いていこう、と思えます。

    伊与原さんの『月まで三キロ』も今度読もうと思います。

  • 興味深いお話。出会う繋がりがない人と出会い、人生が好転していくのが面白い。ひとはひとりじゃなく出会った人で変わっていく。
    珪素のガラスを見たくなる。女心が動く様を男性がかいているのも面白い。

  • ー私たちに見えない世界が見せてくれるもの。

    《あらすじ》
    就活に全然うまくいかない堀川は、ゼミの班長だった清田とたまたま会い、胡散臭い話を持ちかけられる。そんな中、全然仕事のできない外国人のコンビニ店員グエンとひょんなことから話すようになり、彼女の本当の姿が見えてくる……。他にも、自己肯定のできないシングルマザー、役者の夢を諦めた中年男性、サバサバした女性という殻を被るアラサー、原発の下請け企業を辞職した男、、、。各5編からなる短編集。

    《感想》
    タイトルから予想していた内容とは異なって、それぞれの話が科学と密接に関わっていて、読んでいて面白いです。
    ストーリーとしては、「玻璃を拾う」が好きですが、科学の話としては、やはりタイトルになっている「八月の銀の月」が面白かったです。
    地球のコアまで2900キロなのも、改めて聞くとすごいし、でも人間は月まで行ってるのにボーリングは最深12キロって、、、地殻を越えられてないのか!いやそりゃそうか!って思いました。
    宇宙より何より地球が1番未知の惑星なのかも!と思ったらすごくワクワクしてきました。
    こんなふうに科学のことや、自分たちの身の回りのことを知るのは楽しいです。

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著者プロフィール

1972年、大阪府生まれ。神戸大学理学部卒業後、東京大学大学院理学系研究科で地球惑星科学を専攻し、博士課程修了。2010年、『お台場アイランドベイビー』で第30回横溝正史ミステリ大賞を受賞し、デビュー。19年、『月まで三キロ』で第38回新田次郎文学賞を受賞。20年刊の『八月の銀の雪』が第164回直木三十五賞候補、第34回山本周五郎賞候補となり、2021年本屋大賞で6位に入賞する。近著に『オオルリ流星群』がある。

「2023年 『東大に名探偵はいない』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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