- Amazon.co.jp ・本 (122ページ)
- / ISBN・EAN: 9784103370710
感想・レビュー・書評
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リアル。淡々と戦場が描かれて、情景はなるべく浮かばないように読むのが大変。これはもっと世に読まれるべきだ。
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戦地でのある兵士の姿。
次々斃れてゆく仲間。ある者は敵兵の銃弾で、またある者は病によって。
野戦病舎での暮らし、地元民との交流、ささやかな愉しみ。描かれるのは、兵士というより、ごく普通の青年の日々。「普通」でないのは、そこが戦地であるということ。
数千、数万の兵士達にも、それぞれに出自があって想いがある。当たり前だけど、こうして描かれるとそれを一段と強く感じる。 -
指の骨 戦地にて、苛まれゆく心
2015/3/4付日本経済新聞 夕刊
話題の小説だ。戦争を知らない世代が描く「戦争小説」として、注目された。第152回芥川賞候補にもなった。
とにかく描写が巧(うま)い。小説を構成している要素は様々あるが、文章力に申し分がなく、描写や比喩が卓越していれば、それは純粋な意味で、すぐれた小説なのではないか。そんな気にさえなった。
太平洋戦争末期。「赤道のやや下に浮かぶ、巨大な島。その島から南東に伸びる細長い半島」。ここが小説の舞台だ。主人公は怪我(けが)をし、野戦病院に入り、そこを出て、さまよい歩く。丁寧な心理描写が嫌味にならない程度に書き込まれる。主人公は、戦争への疑問に苛(さいな)まれ、徐々に気力を失っていく。
この小説をめぐって様々な議論がこれから起こるだろう。すでに賛否両論、ある。戦後70年という区切りの年にリリースされるという時期的符合も拍車をかけるだろう。
戦争を描くこととは何か、何を描けば戦争を描いたことになるのか。原初的とも言える問いに、この小説は私たちを立ち返らせる。それだけの力を持った小説であることだけは確かである。
(陣野俊史) -
良かった。
故郷の日本から遠く離れた場所で、死んでいく様子が妙にリアルに伝わってくる。 -
[これは戦争なのだ、これも戦争なのだ]そしてこれが戦争なのだと思う。あの時の日本軍の戦争なんだ…。実際に戦って亡くなった人よりも餓死で亡くなった戦死者が6割にものぼるという現実。
一兵卒の目から淡々と紡がれた何かもかもが欠乏している戦地での有り様は戦うことよりも生きること生き残ることの惨たらしさをまざまざと見せつけてくる。
祖父は南方に出征しマラリアに罹って内地に送り返された。今にして思えばそれはとても幸運なことだったんだな。もっともっと話を聞いておけば良かった。 -
読めば知ることも感じることもできるけれど、
実感したくはない世界のこと。
誰にもこんなことが起きて欲しくない。
淡々と読んでいたのに、最後閉じたら、涙が出ました。 -
淡々とした、ただ淡々とした、ある男の戦記。
派手な戦闘シーンはない。エンタメ的なストーリーもない。周りの男たちが一人また一人と怪我や病気で死んでいく日常の風景の描写が続く。
「果たしてこれは戦争だろうか」「これは戦争なのだ」「これも戦争なのだ」
感情を抑えた徹底した観察描写が効果的な小品。
戦争物としてはどうしても古処誠二さんと比べてしまうため見劣りがしてしまう。この作品に興味を持ったら、ぜひ古処さんの「接近」や「ルール」も読んで欲しい。 -
戦争ってなんなんだろう?使い古された言葉なのかもしれないが……この話には戦闘など殆ど出てこない。南方に出征された祖先の方々に心からの感謝と哀悼の意を表します。
日本軍は本当に人を大事にしなかった。葉書一枚でくる兵隊は馬よりも安いと言われた。悲しいけど日本人の本質がそこにある気がする。 -
あいみょんが薦めてた1冊。この物語には前線とはまた違った戦争が切り取られてました。