- Amazon.co.jp ・本 (218ページ)
- / ISBN・EAN: 9784103529613
作品紹介・あらすじ
噓をつかない。裏切らない。ぼくは具体的なだれかを思って、本をつくる。それしかできない。転職活動で50社連続不採用、従兄の死をきっかけに33歳でひとり出版社を起業した。編集未経験から手探りの本づくり、苦手な営業をとおして肌で触れた書店の現場。たったひとりで全部やる、小さな仕事だからできること。大量生産・大量消費以前のやりかたを現代に蘇らせる「夏葉社」の10年が伝える、これからの働き方と本の未来。
感想・レビュー・書評
-
良い意味で真面目で、とても魅力的な方だなと感じた。
教科書の営業も出版社の起業もその後も、信念を持ってやっておられる。
また、その中で関わる方に尊敬と愛情を持って接しておられる。
そしてなんとなくやさしさをほわんと感じるような文章で、読みながら自分の周りの大切な人にも思いを馳せてしまった。
仕事や子育てのモチベーションが上がった。
なんのために、誰のために、自分はどうしたいのか。
それらを考えながら日々生活したいと、強く感じた。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
仕事が辛いタイミングで読みました。
綺麗ごとだけで、生きてはいけないけど
でも、誠実に丁寧に誰かの役に立つ仕事が
少しでも出来たら、それ以上ないな と思いました。
まだ諦めないで、もう少しやれると思わせてくれました。 -
ところどころで、泣きそうに。
本が好きで、本に助けられ、本に楽しませてもらい、本に教わった経験がある人なら、同様にきゅーんとするのではないかしら。
転職活動に失敗し続け、ひとり出版社をすることになった著者が、これまでの経緯や本と本にまつわる人々について書いてあります。そんな内容でなぜ涙腺に訴えかけてくるのかというと、普遍的な人の弱さや本の持つ力、価値、本の世界を旅した人が味わう感覚を丁寧に描いてくれているから。
「だれかになろうとしないこと」
「自分の頭と身体と経験のすべてを使うことができる仕事をしたい。」
単に本についてだけではなく、これからをどんな風に、何を大切に生きていきたいのかを僕はこうやってきたよ、と語ることで、読者にも自問する機会をくれる良書。
夏葉社さんの本も読んでみよう。-
sonica00さん、はじめまして(^^♪
フォローして下さりありがとうございます。
私もつい最近この本を読んだばかりです。
soni...sonica00さん、はじめまして(^^♪
フォローして下さりありがとうございます。
私もつい最近この本を読んだばかりです。
sonica00さんと同じく、切実さに打たれて何度も泣きました。
夏葉社さんの本は内容も装丁もとても良いですよね。
また素敵な本についてお話できたら嬉しいです。どうぞよろしく。2020/08/09 -
初めまして。コメントありがとうございます。とても素敵な本に巡り会えて、読んでいる間も、メモしている時間も、幸せでした。
仕事についてと本に...初めまして。コメントありがとうございます。とても素敵な本に巡り会えて、読んでいる間も、メモしている時間も、幸せでした。
仕事についてと本について、そうそう、と共感できるところが多々あり、言語化してくれてありがとうという気持ちになりました。
夏葉社さんの本も手に取ってみたいです。
こちらこそどうぞよろしくお願いいたします^^2020/08/09
-
-
読書愛、書店愛に溢れた一冊でした。ところどころに自分自身を指摘されてるような文章に出会ってドキッとさせられたり、そうなんです!とうなづかされたり。本に出てくる夏葉社の書籍を読みたくなりました。良い本に出会えてました。
-
ノウハウだのハウトゥーだのといったビジネス本はすべて捨てて(1冊も持ってないけど)、この本を読めばいい。読書とは、仕事とは、時代とは、にとどまらず、生きるとは、について、大切にしたいこと、忘れてはいけないことがやさしく書いてある。著者の意向には合わないかもだけど、中学校あたりの国語の教科書に採用してほしい。
ちょっとの邪念や欲も、時には受け入れながら笑い飛ばしながら、そういう類の人たちにも理解を示しながら、自分は自分の道をゆく。これ、と決めたものや人には、精一杯の愛情を注ぐ。そのためならなんでもする。そんなふうに生きていきたい。人生迷子になったときは、この本を読み返したい。 -
ひとり出版社を立ち上げた方の、本と、つながっているさまざまな人々への想いが真摯に込められたエッセイでした。
きっと厳しい出来事もたくさんあったでしょうが、それには深く触れずに、良い本、素敵な本、埋もれてしまった本を届けたいという強い思いで行動しつづける姿をうらやましく、そして理想的な仕事に対するスタンスなように思いました。
私はなにより、この方が人と人との関係、きちんと相手に自分の想いを伝える、そしてつながりを持つ、そういったことに純粋であることがすごいな、このようにありたいな、と感じました。
本を売る立場の方ですから、ネットやSNSと共存していけるところ、いけないところも含めて、頷けるところも多くありました。
電車で本を広げる人が少なくなっているのは確かだとしても、だからといって本がなくなるわけではなく、必ず読み手は存在している。そのまだ見ぬ読み手のために、きっとこれからも愛を込めて作られる本が、わたしにも素敵な出会いとなったら嬉しいな、とそう思いました。 -
「『古くてあたらしい仕事』って、どういうことなんだろう??」
そんな疑問が頭から離れなくなり、読み始めました。
タイトルと奈良時代の書家のような表紙絵、一瞬だけ谷崎潤一郎と読み間違えそうになる著者名から、「これは小説なのかな??」と勘違いして開きました。すいません。
この本は小説でも詩集でもなく、1冊のエッセイです。
著者は、ひとり出版社の夏葉社を立ち上げた島田潤一郎さんです。
「古くてあたらしい仕事」という本は、ざっくり言ってしまえば「仕事」について書かれた本なのですが、しかしながら仕事のノウハウを書いた本ではありません。
ここに書かれているのは、島田さんが夏葉社を始めた理由、夏葉社として仕事をしていくなかで島田さんが得た仕事の本質・本や本屋の存在とはなんなのか、です。
素朴で説明臭くなく、淡々とした文章が、読んだ端からすっと心になじんでいきます。
さて本の紹介途中ですが、ここでわたしの子どものころのことを、少しだけお話をします。
わたしは子どもの頃、放課後になると町の図書室に通っていました。
田舎の町なので、学校が終わってもナカノイイ友だちの家は遠すぎて遊べず、三世代同居できょうだいもいたけれど、家に帰っても特にやることもない小学校時代でした。
両親も共働きで、あまりかまってもらった記憶も、正直ありません。
そんな環境のなかで、わたしはなぜ、図書室に入り浸っていたのか?
「古くてあたらしい仕事」を読んで、その理由に気づきました。
わたしは、さびしかったのです。
友だちと離れる寂しさ、夜おそくならないと帰ってこない親と会えない寂しさ、ひとりでいる寂しさ。
本を読んでいる時間が、その間に流れる時間が、大きかった寂しさをどうにか自分で抱えられるくらい小さくしてくれたから、生きていられたのです。家に帰れたのです。
うつを癒すためにもまた、わたしは本を必要としました。
うつ症状が良くなるのをただ待つだけだった「苦痛の時間」は、「本を読む時間」に変わりました。
読書で過ぎていく時間そのものが、うつの症状を少しずつ、小さなものへと変えてくれたのです。
そして、いろんな本を通してみた世界は、少しずつわたしの固定観念をゆるめてくれました。
だから、本は必要なのです。
本そのものも、本を読むという時間も、生きるために必要なのです。
かなしみやしんどさ、つらくて悲しい気持ちを、本を読む時間そのものが癒してくれます。
そればかりか、その気持ちにばかりとらわれている自分に、「こっちの角度から起こったことを見てみない?」と、本がそっと、指さしてくれるのです。
そうした本は、なにも新しい本ばかりではありません。
今に染まって抜け出せなくなってしまった自分に、古い本があたらしい目線を与えてくれ
ることも、多々あるのです。
夏葉社の初出版本は、絶版なっていた本の復刻だったそうです。
古いはずの本が、あたらしくなって、誰の手にも触れられるようになる。
そしてその古くてあたらしい本が、誰かの人生を癒やし、新しい角度から光をともす1冊になる。
夏葉社のそうした「古くてあたらしい仕事」は、確かに目立たない仕事かもしれません。
でっかく世の中を変える仕事ではないかもしれません。
でも、夏葉社の出版した本が、今もどこかで誰かの人生にとって忘れない1冊になっているかもしれない…
そう考えると、これはなんてすごい仕事なんだろうと、思いました。
巻末には、夏葉社から出版された本が何冊か紹介されています。
また「古くてあたらしい仕事」のなかには、どうしてその本を出版することになったのかが、紹介されている本もあります。
「古いのにあたらしい仕事」を読み終わったときには、きっとあなたもわたしと同じく、夏葉社の本を探していると思います。 -
あしたから出版社 を先に読んで、2冊目。
何の涙かわからないけどよく泣いた。
人に必要とされること。それは大人数にではなくて、わたしの個人的な周りの人たち、に必要とされることが仕事なんやと思えた。
あと、島田さんの本や作家さんやその周りの人をリスペクトする気持ちや、自分や周りの人を「かけがえのない人」と書いて大切にする気持ちが本当に伝わってきて、
わたしは、ご飯行ったりお喋りしたりで人と一緒に過ごす時間って有り難くて大切でかけがえのないものなんやと思い出すことができた -
これは島田さんによる「私小説」ではないか、と私は思いました。精興社の字体も、雰囲気にあっていて。
内容はたった一人で出版社を始めることになった経緯と、その後の仕事の進め方についてですが、その心の裡にあるものがあまりある思いになって溢れ出す。シンプルだけれど、選ばれたことばを使って、こう表現されると、美しいかたちを持った私小説に思えてしまうのです。(じっさい、小説家を目指していた方だった)
「仕事とは何か」を前半のほとんどを使って考えている件は作者の苦悩を感じるけれど、仕事でお金をもらうことも自分にとって必要だが、誰か他の人のために働く、ということが重要だった、という結論にたどり着きます。
後半の、和田誠さんや、庄野潤三さんのご家族とのエピソードは、島田さんが仕事を依頼する時の、丁寧な手紙を想像させます。仕事への取り組み方が真摯であったからこそ、実現したのでしょう。
だんだんなくなっていく町の書店。その一方、若い人たちがコンセプトを持って書店を開いていく。あたらしい本屋さんの形が見えてきました。
本は美しいもの。良い本は形に残していかなくてはならない、という島田さんのおもいにも、共感する人たちが増えているのでしょう。
地方の郡部に住む私は、本を買うときはネット書店を頼りがちです。これを読むと、時間やガソリン代がかかっても、町の本屋さんに受け取りに行くべきなのかな・・・と思ったり。
地方にいたら、ありがたいのは図書館です。ここならたくさんの本が棚に並んでいるのを見ることができます。(書店と違い、借りられた本は並んでないことがネックですが)ネットを使えば、読みたい本を予約することもできます。
この本も思いがけず、いつも行く小さな図書館の棚に並んでいるのを見つけました。並んだ本の中から、一冊の本を見つけ出す喜び。出会い。こういう本を、買っていてくれたんだ、という司書さんの選書の目のありがたさ。本が並んでいるという光景を、失いたくはありません。
自宅に本を増やしたくない私は、買った本は、読んだ後、ほとんどを寄贈しています。でも年に一度くらい、自分が手放したくない、と思える本を、寄贈してみようかなと思いました。手始めに、石川直樹さんの写真集を。