- Amazon.co.jp ・本 (257ページ)
- / ISBN・EAN: 9784103719014
感想・レビュー・書評
-
(2014.03.02読了)(2014.02.21借入)
【日本の古典の周辺】
「水底の歌」梅原猛著、を読んだので、ついでに人麿についての本を読んでみようと、図書館の蔵書検索システムで検索してみたら、この本がヒットしたので、借りてきました。
『万葉集』は、万葉仮名と呼ばれるものですべて綴られています。万葉仮名とは、漢字を片仮名代わりに使用したものです。したがって、漢字は、意味を表さず、音のみを表しています。とはいえ、そのような使い方をされているのは、万葉集全20巻の後半部分といわれます。柿本人麿の歌が含まれている最初の方の巻では、ある程度漢字の意味も考えた上での使い方もあるようです。
この本は、韓国での音や中国での元の意味などを調査しながら、初期の万葉集の歌を読み解いてみるとどうなるかを試みたものです。
そうすると、語呂合わせの意味しかなさそうだった、枕詞は、意味を持ったものになり、人麿の歌も表面上の内容とは、別の意味を暗示しているというふうなことが見えてくるというのです。
とんでも本として、楽しむ読み方もあると思いますが、まじめに付き合うには、韓国語を勉強しないと、いけないのではないでしょうか。
逆から行けば、韓国語を学んでいる人にお勧めの本かもしれません。
万葉集を読むときは、通常、漢字かな交じり文に訓み下されたもので読んでいるので、もとの万葉仮名での歌を見ることはありません。
どう訓み下したらいいのかわからず、いろんな訓み下しが行われている歌もあるようです。ひょっとして、和歌とは違う形式の歌も混じっているのではないでしょうか。
この本では、通説の訓み下し文は、そのままで、その裏に隠されている意味を解き明かそうとしています。是非、新しい訓みき下し文を提案してもらえないだろうかと思いながら読んだのですが、それはありませんでした。
収穫は、柿本人麿は、帰化人だという説があるということぐらいでしょうか。
【目次】
第一章 開かれた古墳・万葉集
第二章 枕詞が解けた
第三章 多言語を操る歌詠み
第四章 人麻呂は告発する
第五章 死のジグソーパズル
第六章 人麻呂の遺書
アガサからの手紙
後記
●『古事記』『日本書紀』(19頁)
自分たちの出自も、ことばも、何もかも、もとからこの日本で生まれたのだと主張するようになる。それが『古事記』『日本書紀』の編纂の目的だった。それ以前にもさまざまな文字の表現で、多くの文献が編まれていたに違いない。だから、新しく覇権を握った支配体制がまっ先に行ったのは、他の系統の出自をわずかでも暗示する文献をきれいに抹殺することだったろう。『古事記』『日本書紀』という支配者の文献が、現在最古ということ自体、この間いかに多くの証拠湮滅、焚書があったかを思わせる。
●枕詞(46頁)
枕詞イコール被枕詞
●人麻呂は安産の神(148頁)
ヒトマロ、ヒトマル、ヒトウマル(人産まる)という連想で、安産の神として祀られている
☆関連図書(既読)
「万葉集入門」久松潜一著、講談社現代新書、1965.02.16
「万葉集」坂口由美子著・角川書店編、角川ソフィア文庫、2001.11.25
「水底の歌(上)」梅原猛著、新潮文庫、1983.02.25
「水底の歌(下)」梅原猛著、新潮文庫、1983.02.25
「悲歌 大伴家持」田中阿里子著、徳間文庫、1991.04.15
(2014年3月5日・記)
(「BOOK」データベースより)amazon
人麻呂を韓国語・中国語で読むと…。そこには全く別の恐しい意味が隠されていた。―千有余年の封印を解いて今明らかにする歌聖の出自と死の謎。文学史を覆す衝撃の書。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「ことばあそび」というキーワードが当時の自分のニックネームというか枕詞と一致していて驚く。時代に「もし」はありえないが、もし、私の大学時代がバブル時代でなければ、もし私がその時このグループの存在を知っていたら、もしかしたら「私が」藤村由加だったかもしれない。
「枕詞」とか「かけことば」について、日本で教育を受けた人は知っていると思う。また、一つの漢字が全く別の意味を持っている、連想させるということもも日本語をある程度習熟している人々には理解されると思う。そういう「ことばあそび」が大好きだったし、自分で言うのもなんだが、正直、秀でていたと思う。
しかし「藤村由加」になり損ねた理由は15年経った今だからこそ判る。
(2004.9.25)