- Amazon.co.jp ・本 (343ページ)
- / ISBN・EAN: 9784103903031
感想・レビュー・書評
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どうして音楽室には、バッハ・ヘンデル・ベートーヴェンなどドイツ人のいかめしい顔ばっかが並んでいたんだろう。
どうしてクラッシック音楽のコンサートは、燕尾服を着たつまんなそうな顔した人たちが演奏するのをしゃちこばって聴かなくちゃならないんだろう。
どうしてクラッシック曲は、なに長調だのソナタなんとか形式だの、七面倒くさい物指しが多いんだろう。
どうしてクラッシックの演奏会には、今だに18世紀とか19世紀に作られた曲ばっかが並び、しかも「現代曲」は面白くないんだろう。
どうしてクラッシックの評論家は、大時代的な表現で些末な演奏の違いを指摘してふんぞり返っているんだろう。
こんなような「クラッシックの素朴な謎」にかなり明快な答えを与えてくれる本。
18世紀、音楽先進国だったイタリアの歴史を、はるかに遅れた後進コンプレックス国ドイツ(のシューマン辺りから)が、持ち前の法則好きとクソ真面目さで黒塗りし、現在に至るという話である。で、日本(明治以来の権威主義)はそのドイツに続いたと。
まあドイツ音楽そのものをそうこき下ろしたもんでもないっしょと思う一方、クラッシック音楽の命脈は既に尽きかけているんだ、という指摘には大いに同感である。
また、18世紀からのヨーロッパの音楽地図が興味深いし、各音楽家がどういう境遇でなにを考えていたかも、下手な伝記よりも活き活きと伝えてくれる。天才モーツァルトの晩年が悲惨だった理由、ベートーヴェンが「オレの音符は一音たりとも改変するな」と言った理由もよくわかる。
(学生時代に、「ベートーヴェンの音符は四分音符なら四分音符ぶん、書いてある通りきちんと鳴らすべし」と言われたもんだけど、ルーツはそれだったんだな)
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僕が師事していたN教授が薦めてくれた専門書。とりあえず、驚きの連続。