太宰治の辞書

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (215ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784104066100

感想・レビュー・書評

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  • 2015年に出版されたときにすぐに購入し、「花火」を読み終えたところで、本を閉じ、そのままずっと本棚に立てたままにしていました。
    芥川龍之介が最も好きな作家です。読書感想文とかレポート、卒論、修論と芥川を対象にしてきました。作品の中では「蜜柑」「舞踏会」がお気に入り。そんな私には「花火」の面白さ、この上ないものでした。そして、おそらく、この後の《私》シリーズはないだろう、最終巻だろうという雰囲気に残り2編、読み終えてしまうのがもったいなくて、ずっと置いたままになりました。
    その本を読み終えました。ずっと温めていた思いが、やはり間違いでなかったと実感しました。
    作品論、評伝、それを小説の形で発表してくれたようです。端正なお話、というイメージを持ちました。
    品の良い語り口がとても安心できましたし、懐かしい人々との再会がとても嬉しい。
    登場人物だけではなく、かつてお世話になった太宰研究の先生のお名前にも触れることができ、生前の姿がよみがえるようでした。
    小説が出来上がっていく過程、そして読者によって育っていく過程を共に歩むことができたように思います。
    円紫師匠の落語を聞きたく思います。
    読み終わってしまったのが、楽しい思い出とともに大きな寂しさを連れてくる稀有な小説です。

  • 魅力的な物語に出会うと、本を閉じたあとも、その世界が続いていて、どこかで登場人物に出会えるような気がすることがあります。
    このシリーズは、まさにそんな幸せな体験ができた作品のひとつです。
    前作「朝霧」が、1998年刊行、私が読んだのは、2002年くらい。それから十数年、同窓会で卒業以来の再会をはたした気分になります。
    登場人物の年齢の重ね方が自然で、本当に懐かしい気分に浸れました。
    主人公「私」や円紫師匠、正ちゃん以外の登場人物とも再会したい。ぜひ、今度はもっと近いうちに。

  • 懐かしいヒロインに再会。40代になっても、初々しい文学少女ぶりはそのままに。嘗ては配偶者を旦那様と呼ぶことに抵抗ないと言っていた人が、夫を連れ合いと呼んでいる。ここにも時の流れ。学生時代の女子仲良し三人組が皆結婚生活が順調とは真相を現代の風潮からすれば奇跡。女性作家なら、誰か一人は未婚か離婚経験者に設定するだろう。あの輝かしいお姉様は今どうしているのか。主人公の夫は『朝霧』に出ていたあの人?太宰は新潮文庫版のを殆ど読破したな。最近明治大正昭和の日本文学を手に取る機会がめっきり減った。久し振りに読んでみようかな。大宰では『晩年』所収の「道化の華」や「女の決闘」とかが好き。

  • こういう小説を、ゆっくり静かに読むよろこび、というのもあるなと思う。

    うしろに付いている出版案内が、参考文献目録そのものになっているという。。。うまく出来ている。

  • 一番共感したのは、正ちゃんのセリフで、本を貸すときに若い頃ならちゃんと返せよって言ったけど、この歳になると友達の家に自分の本がずっと置いてあるのも悪くない、って話。言われてみればそうかも。
    とりあえず「私」の「今」を知ることが出来ただけで感無量。そしてこのラストは大胆。まさに「軽み」。
    それにしてもこれは、太宰治の「女学生」を読みたくなるなあ。

  • 円紫さんシリーズは、
    多くの文学好きの人生を変えてきた本だと思う。
    本をめぐる旅の面白さを教えてくれるから。

    僕も、卒業論文を武者小路実篤にしたのは、
    「六の宮の姫君」を読んだからに他ならない。
    作家論に基づいて、作品を記した背景を追って、
    当時の作家の姿を見る楽しみを教えてくれました。

    この、「太宰治の辞書」も、同じ系統。
    いわゆる書誌学ミステリーに分類される作品です。

    シリーズ5作目の「朝霧」から作中時間も現実時間も20年近く経ち、
    成長し、母となってもなお。文学を愛し作家を愛す主人公「私」が、太宰治の作品を追う道筋が描かれています。
    物語の形式を取った論文ともいえるこの作品。
    ただ、「私」が物語を通してみる世界、感じる気持ちが如実にこちらにも伝わるところは、まぎれもなく物語。
    作中に出てくる小説や詩を読み、寄り道しながらゆっくりと読み進める。

    この作品は、そうやって楽しんでも面白いかもしれません。

  • 2015 07 11

    円紫さんと私シリーズ
    何年ぶりか
    女子大生だった私も中学生の男の子のお母さん。
    出版社にお勤めです。

    文学の謎を解く旅。
    芥川、太宰、三島そして朔太郎
    読んでみたくなります。

  • 小説の中に出てくるワードを調べてゆくミステリー?らしい。
    主に太宰治の作品から出てきているので、手元にあった太宰治の女生徒を見返してしまった。
    どうもこの本はむかーし昔のシリーズの続編という見方が多い。
    でも、そんなこと知らなくても読める。
    逆に過去の作品に興味を持ったので、図書館で借りてきてしまった。

  • 最初は、引用が多く、難しくてつまらないなって思った。
    もう完全に別シリーズになったようで、「私」が図書館に行くと人が変わる。普段は今までのわく知ってる私なのに、図書館に行くと北村薫になる。
    でも女生徒の、正ちゃんとの会話あたりからすごく良くて、最後までおもしろいままで終わった。
    これまでのシリーズのままだった。今までのを経てそれでこれがおもしろかった。この本を書いてくれてよかった。

  • これは久しぶりに読み終えたくないと思った作品。
    三島、芥川、太宰にまつわる文学の旅、もっともっと読んでいたいと思った。
    かくいうわたしはこのお三方の作品ってほとんど読んでいないのだけど、代表作やせめてこの本に出てきた作品だけでも読んでみたいと思った。
    図書館で借りて読んだ本だったけど、買ってまた読みたい。

著者プロフィール

1949年埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。大学時代はミステリ・クラブに所属。母校埼玉県立春日部高校で国語を教えるかたわら、89年、「覆面作家」として『空飛ぶ馬』でデビュー。91年『夜の蝉』で日本推理作家協会賞を受賞。著作に『ニッポン硬貨の謎』(本格ミステリ大賞評論・研究部門受賞)『鷺と雪』(直木三十五賞受賞)などがある。読書家として知られ、評論やエッセイ、アンソロジーなど幅広い分野で活躍を続けている。2016年日本ミステリー文学大賞受賞。

「2021年 『盤上の敵 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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