おめでとう

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (191ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784104412013

作品紹介・あらすじ

きんめ鯛を手土産に恋しいタマヨさんを訪ねる"あたし"の旅。終電の去った線路で、男を思いつつ口ずさむでたらめな歌。家庭をもつ身の二人が、鴨鍋をはさんでさしむかう冬の一日。ぽっかりあかるく深々せつない12の恋の物語。書下ろしをふくむ待望の最新短篇集。

感想・レビュー・書評

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  • 読んでいるといつの時代なのか分からなくなる。
    どこにいるのか分からなくなる。
    でも人は生きている。
    そしてよく分からない生き物だなあとただ漠然と思うのです。

  • さまざまな味わいの物語を集めた短編集。
    長さもテーマもまちまちで、この作家の持つ多面的特質を良くあらわしたものとなっている。
    終末の世界を想像させる表題作以外は、おおむね恋の物語だが、そのかたちや切り口もバラエティに富んでいる。

    過度にウェットにもドライにもならず、少しせつなくて、でもさらりとした女性の恋愛感情が良く描かれていて好もしい。

  • 帯に「ぽっかりあかるく深々せつない12の恋の物語」と書いてある。
    とりあえず、いつもより人間度の高い作品が多い。

    それでも、モモイさん(幽霊)に取りつかれて、困ってるんだかそうでないんだか自分でも定かではない私とか、木の上に棲みつき水かきができ、毛深くなって歯がとがって耳が立ってきた元恋人と、子どもの子どもの子どもの…千人ばかり子孫ができたころによりを戻して、子どもをつくる私とか、やっぱりちょっと人間度の低い人がいるのが川上作品らしい。

    恋愛小説は割と苦手だけど、めっきり体温の低そうな人たちの作り出す恋愛模様はなかなかに愉快。
    普通ここで修羅場でしょう、というところが非常に淡白で、あとから修羅場のタイミングを逃したことに気づくような人って、割と好きなのだ。

    5年前に振られた彼と再会して、ずっと好きでいつづけてた気がしていたのに実はもう見つめ合う気力が失せていたことに気づき、それでもどうしていいのかわからないまま試合終了後の野球場のベンチに元彼と並んで座っている。そんな「夜の子供」がすとんと心に落ちた。

    “私たちは、ゆうべのちらし寿司を朝の光の中で眺めているような気分で、互いの名を呼びあった。よく味はしみているけれど、ご飯一粒々々のつやはすでに失われている、ゆうべのちらし寿司。”

    とりとめのない一日を過ごす二人。
    それは決して日常ではない。
    とりとめのない会話。それを大切にいつくしむように味わう二人。
    だからこそ最後の「あのさ、俺さ、百五十年生きることにした」がしみてくる。
    「そのくらい生きてればさ、あなたといつも一緒にいられる機会もくるだろうしさ」
    息を吐いても、もう白くはならなかった。「冬一日」

    うまいな~。

  • 「いまだ覚めず」、「春の虫」、「天上大風」が好きだった。
    最初のほうの数話は名前がカタカナで書かれていたけど、後半の数話は名前が漢字で書かれていた。
    この作者さんの別の本でもカタカナが名前に使われていて、それがまた雰囲気を作っていたから、漢字が使われていたことに驚いた。

    同性愛の話が二話ほどあったけど、そういう話ってあまり読んだことがないから、少し不思議な感じ。

    表題作の「ありがとう」は、あまりよく理解出来なかったな。

    いくつになっても恋愛は出来るんだなぁ、と思うと勇気づけられる。
    私もおばあさんになっても恋愛したい…なんて。

  • 最後の短い「おめでとう」が好き。
    ぎゅっと掴まれるような、切ない。
    誰に宛てて?なにに対して?どんな気持ちで?
    とにかく、「おめでとう」って。

  • とても短いお話がたくさん収録されています。
    最後の「おめでとう」がとてもかわいくて泣けてきそうでした。

  • 別れたり裏切られたり、恋や恋人を失った後の話

    川上弘美は短編集より長編のほうが好き

  • (2002.10.07読了)(2002.10.06拝借)
    (「BOOK」データベースより)
    きんめ鯛を手土産に恋しいタマヨさんを訪ねる“あたし”の旅。終電の去った線路で、男を思いつつ口ずさむでたらめな歌。家庭をもつ身の二人が、鴨鍋をはさんでさしむかう冬の一日。ぽっかりあかるく深々せつない12の恋の物語。書下ろしをふくむ待望の最新短篇集。

    ☆川上弘美さんの本(既読)
    「あるようなないような」川上弘美著、中央公論新社、1999.11.07
    「いとしい」川上弘美著、幻冬舎文庫、2000.08.25
    「椰子・椰子」川上弘美著、新潮文庫、2001.05.01
    「センセイの鞄」川上弘美著、平凡社、2001.06.25
    「神様」川上弘美著、中公文庫、2001.10.25
    「パレード」川上弘美著、平凡社、2002.05.05
    「龍宮」川上弘美著、文芸春秋、2002.06.30
    「溺レる」川上弘美著、文春文庫、2002.09.10

  • 大人の恋愛物語。この方の選ぶ言葉に時々はっとさせられます。「冷たいのがすき」「おめでとう」が心に残りました。

  • いつもどこか現実的なことばかり見てきてマニュアル通りの思考をしがちになってしまった自分に繊細で温かい気持ちを思い出させてくれる作品でした。多くの女性はどこかにこのような気持を持ち合わせているのではないでしょうか。

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著者プロフィール

作家。
1958年東京生まれ。1994年「神様」で第1回パスカル短編文学新人賞を受賞しデビュー。この文学賞に応募したパソコン通信仲間に誘われ俳句をつくり始める。句集に『機嫌のいい犬』。小説「蛇を踏む」(芥川賞)『神様』(紫式部文学賞、Bunkamuraドゥマゴ文学賞)『溺レる』(伊藤整文学賞、女流文学賞)『センセイの鞄』(谷崎潤一郎賞)『真鶴』(芸術選奨文部科学大臣賞)『水声』(読売文学賞)『大きな鳥にさらわれないよう』(泉鏡花賞)などのほか著書多数。2019年紫綬褒章を受章。

「2020年 『わたしの好きな季語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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