333のテッペン

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 344
感想 : 55
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  • Amazon.co.jp ・本 (285ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784104525041

感想・レビュー・書評

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  • ミステリかと思って読み始めたら、そうじゃなかった。メタ的な描写と主人公の自己分析がなんだかライトノベルっぽい。さらっと読むのにほどよい感じでした。

  • “その声は明らかに上機嫌で、明らかに失調していた。「あの、頼みがあります」
    「頼みじゃなくて脅迫だろ」
    「助けてほしいんです。勇気を下さい」
    「それならCDショップに駆けこみな」
    「音楽聞いたって勇気なんか出ません」
    「だったらアンパンマンを観るといい」
    「今日一日だけ……いえ、ほんの数時間だけでいいんです。僕には勇気が必要なんです。勇気を下さい」
    「待て。どうしてオレに頼むんだ。応援団長にでも見えたか」
    「まさか。でも異常には見えますけどね」予期せぬ言葉が背後で響く。「隠しているつもりでしょうが、そっちこそ、だだ漏れですよ。解る人には解っちゃいますね。同類なのが解っちゃいますね」
    「ストーリーが読めた……。ことをやりとげる勇気とアドバイスを、同類からいただこうって魂胆かい」
    自分の声とは思えなかった。
    他人の声とも思えなかった。”

    「333」「444」「555」は「Story Seller」で読んだので「666」だけ読むなど。
    この作風が本当好みだ。

    “思いがけないタイミングで思いがけない声が聞こえ、思考が乱反射を起こす。
    いきなり人影が飛び出した。
    だからオレは極めて自然に心霊現象を疑ったが……いや、疑うことはない。疑うまでもない。
    オレの知り合いだ。
    外に舞い戻ってからできた、オレの知り合いだ。
    そいつはこの近辺では有名なお嬢様学校のセーラー服を着ていたが、身長が酷く低いため、私服であったら確実に中学生と誤解していただろう。そうした残念な部分はともかく、怜悧な瞳がとても良く目立っていて、かつてのオレがこの少女を見つけていたら……見つけたとしても、殺させない。
    オレが殺させない。
    もう誰も殺さないと決めたから、殺させない。
    オレは右手の拳を握り、ついでに多くの問題も握り、まとめて潰した。
    簡単でしたね。
    「どうしてお前がいるんだ」
    「だって私、探偵ですよ」
    赤井は二つの瞳をオレに向けると、年の割にはなかなか優雅な微笑を形成した。”

  • たぶん主人公の理性は、彼の表情に裏切られている。
    でも物語は主人公の視点で進むから、確かめる術はない。

  • 333の東京タワーからはじまり、666のスカイツリーへと続く。
    妙な探偵がやってきて事件を解決(?)していきますが、本当は事件にいつもまとわりつかれる主人公が一番の問題なのです。
    彼にとっては檻の中の生活かもしれませんが、それでも最初の事件から1年後には6グラムほど気持ちが軽くなったというのは、大きな変化かもしれません。

  • 東京を舞台にした過去に罪を犯した男と探偵の少女が事件に巻き込まれて行く連作短編です。
    主人公の普通な生活を望む生き方が非常に共感でき、会話や探偵の少女と交わす所謂探偵論の様なものが一癖あって面白く読むことが出来ました。
    物語全体に漂う不穏当な空気と軽妙な語り口のギャップにはまってしまいました。

  • 伊藤氏の著書はこれが初めてです。
    ジャンルとしてはミステリーなのだと思いますが、これはミステリーとしてはどうなんだろうかというようなミステリーで、でもこういうミステリーの扱い方もアリといえばアリかとも思いました。
    が、その扱い方がやや大雑把だなとは思いました。
    また、主人公である土江田の謎めいた過去やキャラクター性が物語が進むにつれて明かされていくのですが、その過去もキャラクター性もありきたりな、あるいはいまひとつな感じがしました。このあたりも大雑把に感じました。
    物語の展開は速く、さくさくと読み進めてはいけましたが、その割りに文章は読みやすい文章というわけでも無く、言葉遊びのようなものは西尾氏と比べるとまったく振り切っていないので始終中途半端だなぁという印象でした。言葉遊び以外でもなんだかまどろっこしく感じてしまう文章で面倒くさいなぁと思いながら読んでいました。
    キャラ読みする人には良いかもしれません。あるいはキャラ読みする人でも浅いキャラクターかもしれません。
    この状態からもう一歩二歩と練ればもっと読める物語になったのではという印象です。

  • 東京タワーのテッペンでの殺人って、どうなんだろう?と素朴な疑問から読んだ一冊。
    読んでしまえば、そんなものか…程度のトリック。
    全体的に主人公の主観が多く、かなり読みにくいし、トリックもなるほど!と思えるものは一つもなく、かなり残念。

  • 【収録作品】
    「333のテッペン」過去を消し、東京タワー内の売店で働く、オレ・土江田。その東京タワーのてっぺんで人の死体が発見される。
    「444のイッペン」東京ビッグサイトで行われるペット博の設営アルバイトをすることにした土江田。その会場から、集められていた444匹の犬がいなくなる。
    「555のコッペン」新幹線に乗るため東京駅に来た土江田。喫茶店で偶然相席になった女性から意外な物を見せられて唖然とする。
    「666のワッペン」東京スカイツリーを見上げながら、ある作業をする男を見守る土江田。その作業とは・・・・

    土江田の更生は成功したのか、それとも・・・・ 素直に読むと社会になじみつつあるように見えるのだが、各話が一応の「解決」を見せた後に残る「真相は何か」がわからないところに不気味な感じを受ける。

  • 正確には、3・5くらい。
    正月なので、少し甘くしてみた。

    主人公のスタンスが◎かつ、ゆやたんらしくていい。
    自分的に久しぶりに、ミステリを逆手に取って遊んでいる話を読みました。
    けっこうそういうの、好きなんだよなあ(笑)

  • 普通への尋常でない憧れを持つ。
    前の短編ではどんな人物なのか想像することしかできなかったけど、
    今回の話で何となくだけど掴めた気がする。

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著者プロフィール

1952年北海道釧路市生まれ。
1974年に北海道教育大学札幌分校特設美術課程卒業(美学・美術史専攻)。1976年に北海道教育庁北海道新美術館建設準備室の学芸員、翌年には北海道立近代美術館学芸員となる。1985年北海道立旭川美術館学芸課長。1990年からは北海道立近代美術館に戻り、2004年同館学芸副館長。2012年から2022年まで札幌芸術の森美術館館長を務める。この間、それぞれの美術館で数多くの北海道ゆかりの作家の個展や現代美術展を企画開催。
現在、AICA国際美術評論家連盟会員、北海道芸術学会会員、北海道美術館学芸員研究協議会会員。また旭川市中原悌二郎賞、札幌市本郷新記念札幌彫刻賞、ニセコ町有島武郎青少年公募絵画展、北海道陶芸展などの審査員を務める。

「2023年 『北の美術の箱舟』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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