警官の血 下巻

著者 :
  • 新潮社
3.82
  • (82)
  • (157)
  • (137)
  • (8)
  • (0)
本棚登録 : 726
感想 : 111
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (381ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784104555062

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 戦後から平成の現代まで、これは大河的な警察官の親子3代の物語。
    上下巻のボリュームも去ることながら、
    相変わらず佐々木譲の描く世界は、濃厚でずっしり重いです。

    祖父・安城清二は戦後混迷期、町の派出所勤務。
    父親・民雄は高度経済成長期、学生運動のスパイに。
    息子・和也は裏社会と繋がりをもつ警官の内偵職に。

    その時代で社会のあり方が違えば犯罪も違ってきます。
    親子3代それぞれが、時代に必要とされた警官だったのかもしれませんが、
    決して幸せな人生であったわけでもなく、
    警察官であるがゆえの苦悩と葛藤を抱えて生きていたということ。
    息子に想いが伝わらず家族を傷つけ、結果すれ違いの道を歩むことになっても、
    でも最後にきちんと道が交わるところに、
    ドラマとしての物語の質を感じました。

    初代清二の話は、著者が当時の風俗や文化をしっかり勉強した上で、
    物語を作っているのが良く分かります。
    二代目の民雄の話が読んでいて一番苦しかったです。
    潜入捜査で精神に異常をきたす姿は、読むに耐えませんでした。
    終盤明らかにされる恋人の末路も、とても切ないです。
    三代目和也の代になると犯罪も巧妙化して、特に時代性が感じられます。
    暴力団、薬物、警察身内の内部問題。特に麻薬に関しては秀逸。

    親と子。同じ警官でも全く違う別物。
    例え子が親を憎もうと、進むべき道は同じであったことに、
    それは警官の血が、そうさせたのでしょうか。

  • 3代に渡る警察官の、3代に渡る謎解き。
    読んでいる方は最初の警察学校での給料泥棒の時に犯人がわかってしまったが…
    3代にわたらせた意図が今ひとつ。
    そこまで遠大にした割には、なるほど、という終わりでもない。
    それぞれのエピソードはおもしろく、昭和史の事件を辿るような構成になっていてそこは楽しめたのだが…

  • 警察小説 長編の下巻。親子三代にわたる警官。清二の謎の死と男娼殺人2件の真相を追う。予想通り清二の同期がカギを握っていた。クライマックスはどんでん返しもなく、淡々としていた ミステリーというよりは、警察の視点を通した戦後の時代を描写した作品。

  • ははーん。犯人そこか。

    というか、それをそっちに利用するのか。


    また時間あるときにDVD借りて観よ。

  • そして、下巻。
    孫の代まで順番に話が進んでいきます。
    やっぱり、民雄の世代の話が一番おもしろいなあ。

    犯人はやっぱり、という感じであまりどんでん返しはありませんが、それでも読後感は苦くてでも読んでよかったかな、と。
    これはオススメです。

  • 今更ながら力作ですね、三代に渡っての警察官の話、民雄の章が一番好みでした。謎解きはメインでなく,歴史や親子の記憶のつながり等が,この長い物語に厚みを与えています。

  • 組織に振り回される。小さい石ころで大きく転ぶ。立て直そうとしても中々立て直せない。それでも頑張る。よく分かるんやけど、ラストへの持って行き方が二代目、三代目あまり気持ちよくないなぁ。こういうのがリアルなのかな。

  • 昭和のはじめから高度成長期を経て
    成熟した昭和が終わって平成の時代。
    父と子の物語と思って読み始めたのですが、
    なんと孫まで3代に渡る長いときの流れが
    時代を映しながら描かれていました。
    平成の時代、加賀美のやり方には、ちょっと内容は違うけど
    むか~し観た北野武の映画【その男、凶暴につき】を
    思い出したりして。

    白か黒か、なんてはっきり分けられるものではないけれど
    警察官の正義をどう考えるか、著者の意見に共感しつつ
    読後感は悪くありませんでした。

  • 3代の警察官を描くことで戦後の日本史を辿るという試みはなかなか面白い。 それぞれのエピソードは面白いのだが
    ある事件の謎を3代にわたって解こうとするという メインプロットとの乖離が問題だ。 つまり大河小説としては成功しているとは思うが、 ミステリ趣向とのミックスは今イチ。 良書だとは思うが、これが「このミス」1位ってのはどうなのかな?

  • 親子3代に亘る物語の後半。
    民雄編と和也編が収録されている。

    祖父・父の後を追って、警官になった和也。
    内偵業務を通じる中で、祖父と父の死の真相にたどり着く。
    人間と警官との境界線を巡る安城一族の物語が終わった。
    全編暗いトーンながら、読み応えがある正統派警察小説だった。

    読者誰しもが一番期待している死の真相。
    もちろん、最終的にはたどり着くが、
    その前段がやや冗長としている点が残念。
    ハードで800Pにも及ぶ大作だが、もっとスリム化できると思う。

    しかし、最後に描かれる和也の成長した姿は、
    まるで親のように和也の成長をみてきた読者にとっては、
    うれしくもあり、悲しくもあり・・・

全111件中 21 - 30件を表示

著者プロフィール

1950年北海道生まれ。79年「鉄騎兵、跳んだ」でオール讀物新人賞を受賞しデビュー。90年『エトロフ発緊急電』で山本周五郎賞、日本推理作家協会賞を、2002年『武揚伝』で新田次郎文学賞、10年『廃墟に乞う』で直木賞、16年に日本ミステリー文学大賞を受賞。他に『抵抗都市』『帝国の弔砲』など著書多数。

「2022年 『闇の聖域』 で使われていた紹介文から引用しています。」

佐々木譲の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×