天才と分裂病の進化論

  • 新潮社
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感想 : 15
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  • Amazon.co.jp ・本 (295ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784105419011

作品紹介・あらすじ

人類が知性を獲得したメカニズムとはなにか?進化の過程で分裂病が果たしてきた役割とは?天才を創り出す脳の神秘と可能性を、英国分裂病協会顧問の著者が大胆に解き明かすサイエンス・ノンフィクション。

感想・レビュー・書評

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  • アダムとイブの狂気。非常に興味深い。
    精神分裂病は、世界のどの人種でも発生率がほぼ同じ。このことから著者は、人種が分離する前に人類に現れた病気に違いないと推論する。
    また精神分裂病は、人類に偉大な貢献をした芸術家や科学者の家系に現れることが多い。
    この二点の進化論、天才という観点からの仮説。

  • 統合失調症と人の進化を脂質の代謝から見る視点は斬新だった

  • 1

  • 675円購入2013-12-18

  • 人類が人種分化以前から持つ、広く分布している分裂病・双極性障害・うつ病・読字障害の遺伝子は、脂肪でできた脳の生化学的反応の差を生じる。人類に創造性や暴力をもたらしたが、現代の食事や環境では、ひどい精神障害を発症することもある。

    神の声、死者の存在、見えないものの影。それこそが現生人類、壮大です。

  •  環境への適応変化に応じて突然変異をくり返し、種は進化していく。私のような素人としてはそんな説明をされれば、「はぁなるほど」と簡単に納得してしまう。しかし、それに疑問を呈する学派もあって、イギリスの分裂病協会医学顧問をつとめたデイヴィッド・ホロビンの『天才と分裂病の進化論』(2001 新潮社)もそうした本である。一部では「トンデモ本」の評価もあるようだが、私は随分とおもしろく読んだ。
     環境因子だけでは進化につながる遺伝的反応をうみだすことはできない、と本書は主張する。環境因子にできることは「あらかじめ存在している突然変異、特定の環境に有利な遺伝子的反応を選択することである。」
     つまり、はじめに突然変異があり、それが環境への適応に好都合な家系の繁栄をもたらした、という説明である。そしてホロビンは人類の進化の契機として、精神分裂病(統合失調症)の出現に注目する。人類が進化するにあたって、現状に満足しない分裂病気質の個体たちが生態に跳躍的な変化をもたらした(現代人はそれを「天才」と呼ぶ)というのである。さらに突然変異の発端として、動物の骨髄を餌としたことからはじまる脂肪分の摂取をあげている。ようするに、ホモ・サピエンス(人類)はあぶらを喰いだしてから、統合失調症患者と天才の両方を産みだし、進化の冒険をはじめたらしい。

     「分裂病は社会のあらゆる階層の、あらゆる能力を持つ人々を冒す。しかし、偉大で善良、優秀で裕福な家系、野心的で知識のある創造的な家系にきわめて高い頻度で出現するように思われる。これは幻想だろうか。実際、何か関係があるのだろうか。」
     著者はそう設問をかかげ、進化論を精神分裂病と結びつけて議論を展開していく。

     唐突な連想だが、上のような議論で語られる発狂・分裂・突然変異・進化の作動を、映画の映像-音を用いて体現する映画作家がいる。黒沢清である。黒沢映画の多くで、ひとりの狂人(天才)が冒頭に現れて、自殺したり暗殺されたり、拘束されたりと、現世秩序の抜本的変化に着手する前に破滅する。しかし、彼の遺志を受け継ぎ、超人的な指令を聞き分け、現世秩序の抜本的変化を実行にうつす代行者が現れる。彼は前任者の思考、言動を徐々に体得し、善悪を超えた超-存在と化すのだ。そんな代行的な超-存在を、黒沢は役所広司、オダギリジョーらに託してきた。その伝で言うと役所やオダギリは、率先して動物の骨髄にしゃぶりついた初期ホモ・サピエンスの末裔ということになる。
     科学的無知を映画の比喩でごまかしたようで気恥ずかしいが、黒沢清を念頭におきながら本書を読むと、理解がどんどん進む。

  • ISBN-13: 978-4105419011

  • 684夜

  • 統合失調症(本書に合わせて以下、分裂病)を持つ遺伝子によって人類が劇的な進化すなわち知性を獲得したという仮説を展開した本。天才と何とかは紙一重というのも単なる俗説とは言えないようだ。人類は栄養状態の向上、特に脂肪の摂取によって遺伝子の突然変異を誘引し、その結果まれに生まれる天才が人類を飛躍的に進化させた。成功者の親類には分裂病患者が多い。分裂病は複数の遺伝子によって遺伝する。その遺伝子すべてを持っていても必ず発祥するわけではない。
    本書によると分裂病はエンコサペンタエン酸(キルナール)で改善する可能性があるらしい。魚を食べよう。

  • 分裂病。脳(心)に負荷がかかるシステム。
    負荷が大きすぎると壊れてしまうが、適度な負荷は成長につながる。

  • なんで分裂病があるのか
    現代人に多い訳じゃない。食生活で重症化しているだけだって!
    ド素人でも結構、納得することが書いてある。

    オメガ3EPA って必要なんだね。

  • 非常におもしろい仮説です!

  • 数ページ進化論についての文章が有って、それが今まで進化論に対して疑問だった部分の答えにピッタリ合ってで非常にすっきりした。その部分だけで五つ星。

  • 手にとった時はもう少し奇を衒った様なものを想像していたが、立派な化学の本でした。先史人類に発生した分裂病的性質が、食生活の変化や遺伝によって、現在でいう「分裂病」に、さらに産業革命以降の食生活により症状が深刻化したという。著者は考古学的な資料と科学的な知識に基づいて仮説を立て、臨床実験でも成果を上げたそうで、将来「統合失調症」が治せるだけでなく、本書ではさらに踏み込んで「破壊的な症状だけを抑え、クリエイティブな面を残す事が出来るかも知れない」と希望を持っている。科学は進歩している。それもこの病気と同じく脳の働きなんだなぁ。言葉は難しかったけど、読み甲斐があった。

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