成城大学という明治時代の学園を思い出させる長閑な環境で、「三四郎」を教えていたことを語るこの人はきっと三四郎の世界との共通点を読者にも意識させたいのだろう。現代の大学生の生態を感じさせる前半、そして後半はゼミ生たちの「三四郎」理解の論文の紹介など飽かせない。学生たちが深く「三四郎と美彇子」の関係を理解しているのには驚いた。この作品を読み込むだけで、教育史のみならず日本史全般、心理学など幅広い学びができる格好の作品なのだ。「冷たいようだが、大学のレポートは人間としての君たちを知ろうとは思っていない。知りたいのは、君たちの思考である。「私は~思う」ではなく、「~は~である」という形式の文が求められる。」という学生への指導の言葉は大賛成である。このような鍛え方で、2年と4年のギャップを語っていることは興味深い。20歳前後の2年間の伸びしろの大きさを物語っている。「オンデマンド授業」への著者の厳しい批判は正にその通り。学生との触れ合いを実践している著者だからこそ迫力がある主張だ。