戦後史の解放I 歴史認識とは何か: 日露戦争からアジア太平洋戦争まで (新潮選書)

著者 :
  • 新潮社
3.99
  • (26)
  • (34)
  • (19)
  • (4)
  • (0)
本棚登録 : 401
感想 : 44
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (314ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106037740

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 比較的史実に基づいて書いているように見えるが、数字的根拠は明確ではなく、基本、戦中の日本悪のナラティブである。
    加えて尾張守姿勢で少し残念な書籍となっている。

  • 「世界史の中の日本史」というこの本の主張は大滝詠一の分母分子論・ポップス普動説を思い起こさせるなぁ。


    <blockquote>本書のタイトルが「歴史認識とは何か」となっているのは、本書の主たる目的が既にいくつもある近現代の通史に新しい一冊を加えることではなく、あくまでも日本人が抱える歴史認識の泉源を探ることだからである。(P.281 あとがき)
    </blockquote>

  •  太平洋戦争前、リベラルな天皇と富国強兵の軍隊、特に維新を守りたい海軍の猛々しさ。
     本書では日本の戦争の問題点を、平和に向かうグローバルな潮流を感じ取れなかったという点に見ている。今でいうところのガラパゴス。

     象徴天皇になる前は天皇はとってもリベラルだった。天皇の権力が剥奪された理由は、ファッショの危険性があったからとか独裁がダメだからとかじゃなくて、天皇を冠にすることで正当性を維持しながら色々やらかすのが日本だから。国のトップとしての戦争責任はあるかもしれないけれど、戦犯からは除外されていた。
     
     思想が偏っていたって政治を動かせるような影響力を持つ人はほとんどいないので、正しい歴史認識が必要な理由はあまりない。実際は影響力の源泉はその偏りだったりするし。むしろまともな認識を持たない方が実行力は高まる。
     国と国ではなく、私とあなたのレベルで考えた場合、思想が偏っていたってそれを口にできる人はほとんどいない。その程度にはマジョリティは臆病である。

  • ★★★☆☆

    細谷雄一を知ったのは、モーリー・ロバートソンのニコニコ生放送に出演していたのがきっかけ。

    安保法案可決直前だったこともあって、なかなか白熱した対談で面白かった。

    本書は、著者が日本における安全保障関連の議論のちぐはぐさを整理し落ち着かせるために打ったトランキライザーだ。

    安全保障は世界情勢とのバランスで語られるべきものであるにもかかわらず、日本では言語の壁もあってか、どうしても国内事情が優先され、世界の潮流を見ないままで議論が進んでしまう。

    著者は、本書において、英米や欧州が近代史をどう見ているか、そのステレオタイプを提示してくれる。

    国際連盟の無力さを白日のもとに晒したのが日本だという指摘や、ベルギーが中立を宣言したことで逆に占領されてしまった点などは、今でも教訓として十分機能する。

    英米欧の基本的な歴史認識を知ることは、彼らが話をする際に前提としている知識を知ることだ。

    それを知らずにいると、ひとつひとつの言葉にどんな含意があるのかわからないので、とても表面的な話しかできないし、時に頓珍漢な間違いを犯すことにもなる。

    もちろん厳密にいえば、歴史認識は個人個人によって異なるものだけれど、本書によって深い議論というトンネルの、そのとば口に立てるのだから読んでおく意味は大いにある。


    ひとつ気になったのは、ソ連に関する記述がほとんどないこと。

    第二次大戦は最終的にはスターリンにとって非常に都合のいい結果に落ち着いたと思うののだが、まさかそれが偶然の産物ということはないだろう。

    その辺を詮索すると英米欧の人たちにとって都合が悪いから書かれなかったのだとすると、彼らのステレオタイプを理解する上ではますます都合がいいと思うのだが、それは考えすぎだろうか。

  • 多くの優れた研究者により蓄積されてきた個々の研究成果をもとに、世界史と日本史を統合、大きな流れの中で描く。非専門家によるイデオロギー的な歴史がベストセラーになり、国際的には通用しない論理ではなく。

    確かに、わかりやすいシンプルな悪者、もしくは正義、では不十分であることはわかるけれど、歴史的にきちんとしようとすると、あっちこっちが様々、深く知らず考えずに迷走って感じ。

著者プロフィール

慶應義塾大学法学部教授、東京財団政策研究所 研究主幹。
1971 年生まれ、慶應義塾大学大学院法学研究科後期博士課程単位取得退学、博士(法学)。国際政治、イギリス外交史。主要著作:『外交による平和──アンソニー・イーデンと二十世紀の国際政治』(有斐閣、2005 年)、『迷走するイギリス── EU 離脱と欧州の危機』(慶應義塾大学出版会、2016 年)ほか。

「2024年 『民主主義は甦るのか?』 で使われていた紹介文から引用しています。」

細谷雄一の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×