人間の覚悟 (新潮新書 287)

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  • Amazon.co.jp ・本 (191ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106102875

感想・レビュー・書評

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  • [ 内容 ]
    そろそろ覚悟をきめなければならない。
    「覚悟」とはあきらめることであり、「明らかに究める」こと。
    希望でも、絶望でもなく、事実を真正面から受けとめることである。
    これから数十年は続くであろう下山の時代のなかで、国家にも、人の絆にも頼ることなく、人はどのように自分の人生と向き合えばいいのか。
    たとえこの先が地獄であっても、だれもが生き生きした人生を歩めるように、人間存在の根底から語られる全七章。

    [ 目次 ]
    第1章 時代を見すえる
    第2章 人生は憂鬱である
    第3章 下山の哲学を持つ
    第4章 日本人に洋魂は持てない
    第5章 他力の風にまかせること
    第6章 老いとは熟成である
    最終章 人間の覚悟

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    [ 参考となる書評 ]

  • 2011年3月11日に地震が起こった後、本当に多くのことを考えました。
    その中の一つにこの日本という国に残っていて本当にいいのだろうか、ということでした。
    この本を読んでさらに覚悟を決めた気がします。

    実は、自分がこの本を手に取ったのも運命めいたものを感じていました。
    というのも、ちょうど本気で海外に移住を考えようかと思っていたところだったからです。

    この本は「国が信用できない、政府が信用できない」なんて思うな、そもそも信じる対象ではない、と実体験を交えて語り、結局は決めなければならない、と教えてくれました。
    そして、どちらに転んでも生きていくということは「罪」を背負って生きていくであり
    それ以外の選択肢はないということだと教えてくれました。

    引用からですが「何かを信じる、というのは何かを選択することに他なりません。
    そして選択したら異議ははさまず、証明がなくてもそのことを信じていくしかないわけです。仏教にしてもキリスト教にしても、宗教には非合理性が伴いますが、それを新しい科学や物理学を引いて説明するのは無駄なことだと思います。そうした理論や理屈を超えた次元に、非合理ゆえに我信ず、という信仰があるのであって、信じることに証明は不要なのです(P124)という言葉が強く突き刺さりました。

  • 五木寛之さんの三冊目。日本人・経済に警鐘を鳴らし続けてきている。「鬱の時代」まさしく今はそれに、あてはまると思う。「覚悟」とはあきらめることであり、「明らかに究める」こと。希望でも、絶望でもなく、事実を真正面から受け止める事である。「覚悟」を決める大切さ、「老いる」ことの自覚。人間は「死」と言う病のキャリアで、いつ発症するかわからない、そんな考え方ができるんだと再認識し、納得できました。ボランティアは「石もて追われる」までやれ。
    「子供を叱るな、昨日の自分。年寄りを笑うな、明日の自分」重過ぎる言葉で、肝に銘じます。

  • 一日一日を感謝して生きること
    生きてるだけで素晴らしい
    そこには壮大な営みがある
    あきらめる 明らかに見極める
    生きることははかない
    業を背負って生きる 悪人
    けして楽なものではない

  • ちょうど、地震や津波、原発問題で心が揺れているこの時期に、タイムリーな本でした。めぐりあわせ。今回のことで、生き方に悩む人はぜひ一度読んでみてください。

    「それ以来、私は、地震や津波が来たりして政府が『動くな』と言ったら、すぐに逃げるつもりですし、逆に逃げろと言ったら動くまいと思っています。どれだけ国を愛していても、政治のシステムが民衆を最優先するとは考えませんし、たとえば新型インフルエンザは心配ない、と言われたら逆だろうと考える。」

    「・・生き延びて、引き揚げてこられた人間は全部悪人なのだ、そういう意識は一生、自分の中から消えることはありません。こうして生きている自分も悪人なのだと覚悟しています。」

    最近読んできた仏教の本とも重なり、『全てのものは無常である』という考えが根底にあります。でも、難しい語り口ではなく、実例を交えながら説明してあるのでわかりやすいです。

  • 覚悟とは、現実をしっかり見極める、うけとめるという著者の考えも理解した。
    そのうえで自分のしたいように生きていきたいと思った。

    また、ボケた老人に尊厳はあるのかという問いに対する著者の答えは、新しい発見につながった。

     なにかのせいにせず自己責任で生きていくのは時として、自己否定につながってしまうときもあるのではないかと思う。けど他人のせいにもしない。ようは天命だと思ってうけとめるのがいい と自分と交えて結論づけた。

  • 「覚悟」とは「諦める」こと。
    「諦める」とは「明らかに究める」こと。
    つまり総じて「覚悟」とは、希望でも、絶望でもなく、事実を真正面から受けとめることであるという。
    なるほど。お見事!

  • 五木寛之著作で初めて読んだ本。「老い」に対するマイナスイメージの払拭のきっかけになった。前半に各国の鬱に対する様々な精神的文化が取り上げられており、韓国の「恨息」(ハンスム)、ロシアの「トスカ」がとても面白い。著者の経験からなる内容は説得力があるが、終始暗い話なので読後はもやもや感もある。仏教的な教えや先の精神文化はとても深いのですべてを参考にせずとも、部分的に考え方としてに取り入れて行きたい。

  • 年の功といいますか、悟りの境地といいますか、
    「なるほどそういう見方もあるのか」と、何度も感心しました。

    流れには逆らえないのか。

    覚悟とはあきらめることであり、「明らかに究める」ことであるという著者の言葉は
    どこか悲しげな声に聞こえました。

  • 戦後の復興期を躁の時代といい、バブル崩壊以降のこの停滞期を鬱の時代と表現する。確かにそうかもしれない。そして「覚悟」を決める時期であると続く。覚悟とはあきらめることであり「明らかに極めること」。事実を真正面から受け止めること。ただ、今一つピンとこない。著者の主張の本質にたどり着いていないからかもしれないが、「枯れたように生きること」と感じた。それはなんだか違うような気がする。

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著者プロフィール

1932年、福岡県生まれ。作家。生後まもなく朝鮮半島に渡り幼少期を送る。戦後、北朝鮮平壌より引き揚げる。52年に上京し、早稲田大学文学部ロシア文学科入学。57年中退後、編集者、作詞家、ルポライターなどを経て、66年『さらばモスクワ愚連隊』で小説現代新人賞、67年『蒼ざめた馬を見よ』で直木賞、76年『青春の門筑豊篇』ほかで吉川英治文学賞、2010年『親鸞』で毎日出版文化賞特別賞受賞。ほかの代表作に『風の王国』『大河の一滴』『蓮如』『百寺巡礼』『生きるヒント』『折れない言葉』などがある。2022年より日本藝術院会員。

「2023年 『新・地図のない旅 Ⅱ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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