キレイゴトぬきの農業論 (新潮新書)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106105388

感想・レビュー・書評

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  • モノ×文脈=価値

  • 安全だからではなく、美味しいから有機農業を行う。
    合理性と効率を否定してはいけない。

  • 有機農業とは、、、とモヤモヤ思っていたものが言語化されている。分かりやすい。第1~3章は一般人へ、第4~7章は農家としての思い。


    「有機農業三つの神話」の勘違い
    1、有機だから安全
    ・適正に農薬を使った普通の農産物”も”同程度に安全
    ・安全=客観的なもの、安心=主観的なもの
    ・力を借りるべき生き物を減らしてしまうので農薬を使わない、という選択(安全とか、環境に良いから、ではない)

    2、有機だから美味しい
    ・野菜の味を決める三つの要素=旬、品種、鮮度

    3、有機だから環境に良い
    ・環境保全型農業=有機農業ではない
    ・有機農業という方法が、”あらゆる側面”において環境負荷が少ない、ということではない


    有機農業とは「生き物の仕組みを活かす農業」
    有機野菜と一般の野菜の違いは「健康」かどうか…有機だと病気や虫に弱い個体は淘汰される

    旬が消えた&昔の野菜は美味しかった
    →美味しい野菜三つの要素「旬、品種、鮮度」を満たさない野菜が出回っている
    →栽培技術・輸送技術・品種改良が進んで、周年栽培が可能になったことが理由
    →出荷量の少ない時期に生産するか=いかに旬を外して作るかが生産者の腕の見せ所!=上手な農家ほど美味しくない野菜を作っている

  • 読みやすかった。書くの上手!
    まともで素直で、納得できる意見だった。
    そして、やりたいことをやろうとしている新規就農者の足をひっぱらないで。挑戦させて。多様性を認めて。改革をさせて。と言っていた。
    これを阻むことに何のいいことがあるだろう?

  • 明快な文章で、筆者の主張がよくわかる。
    農家の哲学が示されていて、筆者の野菜を食べたい気持ちにさせられる。

  • 2013年10月15日3刷、並、久米書店
    2016年1月20日伊勢BF

  • 分かり易い説明だった。
    農薬が危険かどうかの問題については「もし仮にある農薬が基準値の上限まで残留している野菜を毎日平均の100倍以上食べても動物実験で健康にに影響が出ない範囲に収まる」と言っている。農薬を使ってるから危険、使ってないから安全という事ではない。
    虫が喰っている野菜は弱い野菜。その前に農薬を使って虫を防除することで弱い野菜が市場に出回る可能性があることが、農薬の問題点。
    野菜の美味しさは、栽培時期(旬)、品種、鮮度だという。
    年中色々な野菜が帰る環境だけど、出来るだけ野菜の旬を意識して買い物をしようと思う。

  • ニッチ産業としての居場所をみつけた著者の農園だということですが、ちゃんとニーズを生んでやっているので、単なる隙間産業ではないのではないか。土地の力を活かし、旬を守り、品種を選び、鮮度を大切にするというこの三要素を堅守することで、慣行農家の作物よりもおいしいものを作っていくというのが、大きな方針で、はた目には、セレブという意味ではないけれど、野菜による贅沢を提案するようなビジネスになっているように読みました。
    まぁ、なんていうか、農業論といわれていますけれど、軸はたぶん有機栽培なのですが、それでもあまり中心軸を感じないいろいろなトピックを正面から紹介したり論じたりという性格の本ではないかなと思いました。マクロにもミクロにも農業を語っているのですが、200ページに収まっているコンパクトな読み応えのある読みものでした。

  • 脱サラして有機野菜を多品目で作っている農家15年選手の方が、2013年に出した本。311直後の放射能騒ぎが起こった時のこともふくめ、ぶっちゃけて書いた感じの本。ぶっちゃけてというか、思ってることを正直に書いた本という感じかな。

    有機野菜=安全、美味しいみたいなイメージがまだあるとは思いますが、有機だから安全、安心、美味しい、じゃないんだよ、ってことを皮切りに、野菜の変化と性質、著者のような小規模農家のやり方、事業としての農家とその未来などが書かれています。

    農家が野菜を作っているのは知ってるけど、実際イメージしきれない部分が多いんですよね。そういう意味で現場の声が読めてよかった。ちなみにこの人は冒頭に書いたように脱サラ組なので新参者ポジションから見たその話し。相続でやって来ている農家に言わせたらまた違うのでしょう。

    農家の既得権益についてよく知らなかったのですが、それについて知ることができました。たしかに今の状態では成長路線はイメージしにくいですね…。

    とりとめないけどそんな感じ。
    食に関して意識が芽生えつつある人が読むとよいのではないかと思う。勿論、農業に興味がある人も。

  • <畑に論理を持ち込んだ久松農園の今後に期待>
    ◆この本を読んで、野菜の有機非有機よりも、旬と鮮度にこだわる様になった。新鮮な有機野菜は高いから、見切り品のを買うとか、愚かな行為なのかも知れない。

    ◆要約。野菜の味は、旬、品種、鮮度で決まる。農薬とか化学肥料とか、役所が厳しく規制していて(ある農薬が残留基準上限に達しており、それを一生涯毎日、国民平均の100倍食べても動物実験上では影響がないレベル)今やそんなに危険ではない。それに、コメ作りの初期の雑草除去のために紙マルチと呼ばれる有機栽培法があるが、これは他の栽培方法と比べて突出して二酸化炭素排出量が大きく、必ずしも有機農業が環境に優しいとも言えない。有機が美味しい、安全、環境に優しいと妄信するのは論理的に妥当ではない。
    ただ、有機野菜は「健康」ではあると思われる。理由は、畑の生物多様性が確保されている事と、不健康な野菜は虫に食われたり天候の影響を受けてダメになってしまうから。

著者プロフィール

株式会社久松農園 代表取締役。1970年茨城県生まれ。1994年慶応義塾大学経済学部卒業後、帝人株式会社入社。工業用繊維の輸出営業に従事。1998年農業研修を経て、独立就農。現在は7名のスタッフと共に、年間50品目以上の旬の有機野菜を栽培し、契約消費者と都内の飲食店に直接販売。ソーシャル時代の新しい有機農業を展開している。自治体や小売店と連携し、補助金に頼らないで生き残れる小規模独立型の農業者の育成にも力を入れる。著書に『キレイゴトぬきの農業論』(新潮新書)がある。

「2014年 『小さくて強い農業をつくる』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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