頭の悪い日本語 (新潮新書)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106105685

感想・レビュー・書評

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  • タイトルといい、主に学者の誤用例を実名であげていることといい、挑発的な一冊。当たり障りのないバカ丁寧な物言いが世にあふれているなかで、あえてこういう書き方をするのが著者のスタイルなのだろう。

    明らかな誤用から、なんだかイヤだと思うものまでたくさんの言葉があげられているが、それほど新味はないし、掘り下げてあるわけでもないのが物足りない。

    その中で、そうなの!と思ったのが、サリンジャーの「ライ麦畑でつかまえて」について。すごく好きな日本語タイトルなんだけど、「キャッチャー」なんだから(わざとだろうけど)誤訳だと思ってきたが、これは「捕手」って意味じゃなく、動詞に「er」をつけて名詞化する用法だそうな。知らなかったなあ。

  • 文章を書いたり、話したりしていると「この言葉の使い方は
    これでいいのか?」と感じることがしばしばある。

    日本語って難しいよね。だって、「日本」と書いても読みが
    「ニホン」だったり「ニッポン」だったりするのだし、『日本
    書紀』は「ニホンショキ」なのに、『続日本紀』になると
    「ショクニホンギ」になって「キ」が濁るんだもの。

    電話オペレーターの仕事をしていた時は「鑑みて」を「考える」
    と同義語で使っている同僚がいてイラっとしたしな。

    言葉の使い方が気になる。だから本書も日本語の誤用例集かと思っ
    たのだが、言葉に関するエッセイ・雑学といった感じかな。

    誤用しやすい言葉もいくつか取り上げられているのだが、取り上げ
    らている言葉に対しての著者の好き嫌い、そして言葉を使う人への
    個人攻撃なので、読み手側も好き嫌いがはっきりするのではないか
    と感じた。

    個人攻撃の部分はさらっと読み流して、雑学として受け取った方が
    いいかもしれない。

    一時、雑誌などで盛んに「勝ち組」「負け組」という言葉が使われて
    いたが元々の使われ方や、埼玉県熊谷市は「くまがや」ではなく
    「くまがい」が正しいとかは他でも読んだ気がする。

    私が気になっているのは「天皇陛下」に対して「皇后さま」と言う
    テレビの呼称。「天皇陛下」と呼ぶなら「皇后陛下」だろう思うの
    だが、NHKさえ「皇后さま」って言うんだよな。

    また、政治家がよく口にする「粛々と」も気になるし、「ダイバー
    シティ」「レガシー」などの外来語も気になると言うか気に障る。
    「多様性」「遺産」でいいじゃないか。

    いずれにしろ、やっぱり日本語は難しいと思うのよ。言葉は時代と
    共に変わっていく。「全然」論争のような例もあるから、間違いと
    されていた使い方でも時を経ると正しい使い方になることもあるの
    だからね。

  • 「顧みて他を言う」⇒関係ないことを言って誤魔化す。「泰山鳴動鼠一匹」正しくは大山。古代ローマのホラティウスの警句である。「ぬきんでる」は「擢んでる」と書く。「青田刈り」は正しくは「青田買い」。「根気強い」は「根気よく」と「粘り強く」を混ぜこぜになった言葉。「博打を打つ」は「博奕を打つ」の誤り。「存じ上げない」の対象は人。「破瓜」は処女が破れるのではなく八+八で女性の十六歳。あるいは八×八で男性の64歳のこと。宅急便はヤマト運輸の商標であり一般名詞は宅配便。「田吾作椋十」=「張三李四」。オクラは英語でイクラはロシア語・・・・・・・。おもしろすぎる。

  • 作者の本を初めて読んだ。色々な言葉を間違ってるやら嫌いやら評していて面白い。
    最初は、高学歴のいけすかないおっさんだなと思って読んでいたけど、読んでるうちにだんだん好ましく思えてきた。
    「○○と言っている奴は誰だ、出てきて私と決闘せよ」とかチャーミング。

  • 頭が悪い状況は、放置しておけない。

  •  「家父長制社会の功罪」というタイトルの文があり、へえ功はどう書かれてあるのだろうと手に取ったら罪しか書いてないという「功罪」の間違いの指摘が笑った。

     その他、個人的に西部邁のエピソード登場をまとめる。
     芳紀の項目で、四十九歳の西部邁が大学を辞めるとき、「私のような老人を」と言っていたところ。
     ヘゲモニーの項目で、ドイツ語であるのに英語だと思って「ヘゲモニック」などと書いたのが西部邁。
     テキストクリティークの項目で、本当は写本から適切な本文をつくっていく本文校訂の意味だが、西部邁は栗本慎一郎との対談で「中沢くんには専門がないと言う人がいたけど、テキストクリティック、つまり人の書いたものを読んで批評するというのが専門だ」と言っていたところ。
     西部邁が次々と男性パートナー?を乗り換えていく所とか、英語と日本語がめちゃくちゃに混じって読みにくい文章についてとか、いっぱい書けそうなので、西部論やって欲しいと思った。弟子筋ですら誰もやってないので。

  • 「けりをつける」の意味は知っていても「けり」が何かを考えたことがありませんでした。
    鳬(けり。「ケリリ」と鳴く鳥)だそうです。助動詞の「けり」と音が同じために当てられたとのこと。
    年をとると流行語以外で新しく言葉を知る機会は減ってくるので、この本で新しい知識を得られたのは楽しいことでした。

  • 日ごろ使っている言葉も、それが「当たり前」と思って考えない事も多いですが、著書を読んでみると色々と間違われている言葉も。それを使う本人も聞く相手も、気付かないという事が一番怖いと事は間違いないと。当たり前と思っている言葉を振り返るに良い一冊。

  • 小谷野敦さんの新著ということで衝動買い。しかし、小谷野節は弱めか。
    なかなか雑学的・ウンチク的参考にはなった。

著者プロフィール

小谷野 敦(こやの・あつし):1962年茨城県生まれ。東京大学文学部大学院比較文学比較文化専攻博士課程修了、学術博士。大阪大学助教授、東大非常勤講師などを経て、作家、文筆家。著書に『もてない男』『宗教に関心がなければいけないのか』『大相撲40年史』(ちくま新書)、『聖母のいない国』(河出文庫、サントリー学芸賞受賞)、『現代文学論争』(筑摩選書)、『谷崎潤一郎伝』『里見弴伝』『久米正雄伝』『川端康成伝』(以上、中央公論新社)ほか多数。小説に『悲望』(幻冬舎文庫)、『母子寮前』(文藝春秋)など。

「2023年 『直木賞をとれなかった名作たち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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