日本の風俗嬢 (新潮新書 581)

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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106105814

感想・レビュー・書評

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  • コロナ前の性風俗業界は既に壊滅的と言い得る状態だったようだ。もはや、店も風俗嬢も簡単に儲かる商売ではなくなっている。貧困女性のセーフティネットとしての機能は死んだ。参入規制がなくなり、競合が急激に増えて、価格相場が下がり、全体の平均利益は激減しつつ、内部で二極化する。我が業界の話を聞いてるようだ。どこの業界も同じだなとつくづく思う。自由競争が生むのはほぼ全員に近い敗者と一握りの勝者であり、最終的には独占に行き着く。最も深刻なのは中間層が存在しな得なくなることだ。そこそこの値段でそこそこのサービスを提供してそこそこの利益を出し続けることができない。経営者も風俗嬢も同様に。これでコロナが来たわけだから、今はどうなっているのか。資本力のある会社の寡占が進んでいるのではなかろうか。全国的な業界地図があればぜひ確認してみたい。おそらく、筆者も指摘するように、日本の風俗嬢の一部は今後海外市場に活路を見出すだろう。ビザの問題はさておき、売春自体が合法な国でクリーンに売春ビジネスに身を投じた方が安全で儲かると思う。最後に、ホワイトハンズとGAPの代表にもインタビューしており、この辺時代を感じる。いつもながら、前者の青臭い法律論と後者の徹底的な現実主義の対比がとても鮮やかである。やはりホワイトハンズとは組めないなぁ。

  • 風俗ライターを皮切りに貧困・介護・超高齢社会などをテーマに社会に斬り込むフリーライターが、 ホテヘル・デリヘル・ピンクサロンなどの表風俗から「ちょんの間」・「本サロ」・そして「大陸系デリ」と呼ばれる裏風俗まで、その実態を追いながらそこで働く女性たちをレポートする。経済的な理由で「泣く泣く」風俗に身を落としたと言われたのは戦後からバブル崩壊の1990年頃までで、今ではごく普通の一般女性が明るく「ポジティブ」に働く世界であり、高学歴・高スペックのいわゆる「勝ち組」の女性も少なくない。現代日本の風俗嬢たちのリアルがそこにある。



  • 先日、ナインティナインの岡村氏が失言で叩かれてましたね。

    さて、もはや風俗産業がセーフティネットの時代では無くなったようだ。
    春を鬻ぐお仕事。それが現代では高級取の職業ではなくなってきているという。

  • 女性の貧困の一端を垣間見た気がする、闇は深い

  • 面白かった。
    私が特に知りたい部分に関して書いてあったわけではなかったが、
    それでも十分に面白かった。
    現在の風俗業界の状況を述べながら、単純な過去にこんなことがあって風俗を
    とかではなくもっとシビアに
    単純に女性がこういった仕事を始めれば稼げるというわけではないことを、
    数字などを並べながらつづっている。
    また、働く女性に関してもよくあるような
    こんな過去があり、どうしようもなくなり、働き出したや
    人身売買まがいの事で働いている
    というような世界ではなく(そういったことがないわけではないことも例を挙げて述べている)
    今の風俗嬢というのがもっとハードルが低くこの仕事を選んで働いている
    ということを述べている。
    私はそういった業界で働いているわけでもないので、
    実際のところはわからないが、おそらく今の時代はこの本で述べている方が近しいのだろう。

    風俗とは社会の中でどう扱うべきなのかは難しい。
    単純に働いている女性の安全を保障という意味では、
    どんどん悪い方向に向かっていると思う。
    ただ、どうしてもこういった話は、触れちゃいけないや関わるべきではないという思いが、
    あるのだろう。
    開沼博の本にあるようにどんどん見えない部分に追いやられていき、
    みんなの見えないところに潜っていく。
    また、商売としては、そういった潜ってしまっている部分があるので、
    統一的に業界として向上ということもできずにじり貧になっているんだろう。
    結果、女性に対して払われる対価もへり、安全や保障も少なくなっていく。
    どうしてもある程度はその存在を認めていくのが望ましい姿だと思う。

    この本でも書かれていたことだが、
    風俗嬢の業務環境をよくするのを阻害しているものの一つに
    女性の人権を守るというような団体の存在があるようだ。
    具体的にそれがらみの情報に触れていないが漠然とそんな思いを私も抱いている。
    最近会ったホステスとしてのバイト歴があった女性がアナウンサーの内定を取り消されたように
    夜の仕事というのはグレーであり、白か黒のどちらかを選べと言われれば、
    人前での発言は黒として発言しなければならないような見方なのだろう。

  • 社会

  • 風俗を専門とするフリーライターによる、日本の風俗嬢に関する調査や取材結果をまとめたもの。本著者の本は以前にも読んだことがあるが、よく取材をしているし、客観的な視点に立ってよくまとめられていると思う。風俗嬢は高スペック化しており、普通の女性ではなかなか稼げない業界となっており、今後ますます二極化が進みそうな現状がよく理解できた。著者が作った性風俗店の採用偏差値は、とてもよくできていると思う。
    「(風俗嬢の意識)自分の才能や技術に対して、男性客が安くはないお金を払ってくれている。誰にも頼らずに生きているのだから、私は平均的な女性と比べても勝っている。むしろ上層にいる、という意識すら見られる」p18
    「日本の風俗嬢は合法、非合法に関係なく、風俗店や客に選ばれた女性しか就けない特別な職業になりつつある」p23
    「デリバリーヘルスが該当する無店舗型第一号の17,204店は圧倒的な数だと言っていいだろう。セブンイレブンの店舗数16,450件(2014.4)を凌駕する数値で、供給過多、増えすぎている業態である」p36
    「(大学生ソープ嬢インタビュー)授業のある平日は2本、土日は3〜4本くらいですね。ヘルスの時は月収30〜40万円、ソープの今はたぶん50万円くらいかな。四年生になったら時間を公務員試験の勉強にあてたいから、貯金をしようと思って先月から福原のソープに転職した。稼ぐには、単価の高いソープの方が合理的ですから。風俗の仕事はそれなりに楽しいし、全然苦痛じゃないです」p117
    「大手企業に就職したいとか、総合職の試験を受けて国家公務員になるとか、目的があるとアルバイトに長い時間を割くわけにはいかないんですね。千葉駅近くに大きな風俗店があるし、たくさんの女子学生が風俗に走るのは自然の流れだと思う」p118
    「供給過剰なので、雇用する性風俗店と客による女性の選別が始まる。容姿を中心とした外見スペックだけでなく、接客サービス業なので技術、育ちや性格や知性などを含めたコミュニケーション能力が加味されて、性風俗がセイフティーネットではなくなり、選ばれた女性が就く職業になってしまった」p139
    「そもそも風俗業界で稼げるということは、競争に勝った者だけに許される特権なのだ」p140
    「裸になりさえすれば生活できる、という時代は完全に終わっている。だから店も風俗嬢も講習料を投資してでも意識や技術を磨き、どうやって客をさらに満足させて自分のファンになってもらうかということを考えている」p178
    「スカウトマンたちは日々女性に声をかけているが、AV女優や、高級ソープ嬢などになれる女性を捕まえるのは夢のような話で、料金が安めのキャバクラやデリヘルへの紹介を重ねるのが普通である」p205
    「人気AV女優や売れっ子風俗嬢など稼ぐ女性ほど「彼氏はスカウトマン」という人が多い」p207
    「上納している暴力団の力でスカウト活動ができる範囲が決まり、許可のない者が女性に声をかけることは許されない」p208

  •  同じ著者が2年前に出した『職業としてのAV女優』の続編というか、風俗嬢編である。刊行は8月で、いま私の手元にある本は10月発行の9刷(!)。売れているのだ。

     著者は性風俗業界の取材を長年つづけてきたライターだから、さすがに現状にくわしいし、そのうえ本書のためにも丹念な取材を重ねている。

     『職業としてのAV女優』は、AV女優に求められるスペックがどんどん高くなり、その一方で業界の不況が進んでいる現状を明かして衝撃的だった。一部のハイスペックな女性を除けば、AV女優は普通のOLより稼げない仕事になっているというのだ。

     本書で明かされた日本の風俗嬢たちの現状も、それとよく似ている。風俗嬢の「偏差値」は上がり、一方では業界の供給過剰・低価格化競争が進み、低スペックな女性はそもそも風俗店に採用されないし、ハードルの低い底辺店に勤務しても、OL並みかそれ以下の収入しか得られないという。

    《風俗嬢は超高収入で消費と遊びが好き、というのは、過去の栄光に基づいた時代錯誤の認識である。経営者が女性から搾取して暴利を貪っているというのも同様だ。》

     第三章「激増する一般女性たち」と、第四章「風俗嬢の資格と収入」が、とくに面白い。ここでいう「資格」とは、容姿や能力(知性やコミニュケーションスキルなど)のことである。

    《供給過剰なので、雇用する性風俗店と客による女性の選別が始まる。容姿を中心とした外見スペックだけではなく、接客サービス業なので技術、育ちや性格や知性なども含めたコミュニケーション能力が加味されて、性風俗がセーフティネットではなくなり、選ばれた女性が就く職業になってしまった。
    (中略)
     貧困に悩んで最後の手段として覚悟をしても、そこに食い込めるだけの外見スペックと能力を持っていなければ門前払いとなる。》

    《カラダを売りたくても売れない層が大量に現れたのは、おそらく歴史的に現在が初めてではないか。》

     「性風俗業界には軽度の知的障害を持った女性が大量に流入している」という話が、少し前にNHKのニュース番組「おはよう日本」でも取り上げられ、話題をまいたが、著者はそれを否定する。

    《一般女性でさえ底辺に近い店を含めても約半数が門前払いとなっている厳しい現状である。従ってそのような雇用は店側にメリットがない。》

     軽度知的障害をもつ風俗嬢がいないわけではないが、噂されるほど多くはないだろう、というのだ。このくだりは「なるほど」と思った。

     風俗業界についての先入観を次々と覆され、目からウロコが落ちまくる本。

  • レビュー省略

  • 貧乏学生なんかには絶好のアルバイトで、しかし生計を立てていかねばならない人たちにとっては過酷な仕事となっている現状がよくわかる。

    僕の年齢的なものかもしれないけど、最後の方で識者が言っていた「風俗もごく普通の仕事として社会に認められる」ってのはそうとう実現難しいだろうなあという印象。徐々に「普通」には近づいてくるんだろうけど、完全に「普通」になるのには相当の時間が必要であると思う。

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著者プロフィール

1972年生まれ。ノンフィクションライター。AV女優や風俗、介護などの現場をフィールドワークとして取材・執筆を続ける。貧困化する日本の現実を可視化するために、さまざまな過酷な現場の話にひたすら耳を傾け続けている。『東京貧困女子。』(東洋経済新報社)はニュース本屋大賞ノンフィクション本大賞ノミネートされた。著書に『新型コロナと貧困女子』(宝島新書)、『日本の貧困女子』(SB新書)、『職業としてのAV女優』『ルポ中年童貞』(幻冬舎新書)など多数がある。また『名前のない女たち』シリーズは劇場映画化もされている。

「2020年 『日本が壊れる前に』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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