騙されてたまるか 調査報道の裏側 (新潮新書)

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  • 新潮社
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感想 : 77
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106106255

感想・レビュー・書評

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  • 2/11くらいに読了。7/10点。
    「殺人犯はそこにいる」で既に清水潔を知っていたので、点数はその分下がる。相変わらずというか何というか、とにかく狂っている人(最大の賛辞)。
    しばしば警察より早く的確に問題点を洗い出しているのは脅威としか言えない。もう何かとにかく凄い人なのです。

    ただ、知っているネタが結構あったのでそれで7点。内容自体は普通に面白い。これ、報道の教科書でいいよもう。

  • 途中で返却。今ひとつ自分にはあってないかも。

  • 一人のジャーナリストがこれだけ真実に迫れるのに、調査権を持ち人材も多い警察が間違った結論に到達したり、何も解決できなかったり・・この差は一体どこからくるのか?

    本書で感じたのは、失点を恐れる警察組織の問題、ベテラン刑事の勘頼みの思い込み、証言や聞き込みなどの細かな事実の上での事件全体の構図を見直すという謙虚でかつ基本的な行動ができていないという結論に至ります。

    それにしても、桶川ストーカー事件での埼玉県上尾警察署の酷さは恐ろしいくらいです。
    被害者からのストーカー行為の告訴を無視したあげく、書類の改ざん、マスコミへの情報操作など目に余りますが、今でもYouTubeで見られる刑事2課長の笑いながらの記者会見、これは助けを求めていた女性を守れず自分たちの失態で殺された状況を考えれば、さらし首の刑でしょう。

    さらに、著者の清水さんは、足利事件の冤罪で菅谷氏の釈放にも主導的な役割を果たしており、独自の地道な捜査で真犯人にもたどり着いていたのですが、逮捕の方は時効の壁に阻まれました。(その真犯人も警察はノーマークだったというのですから驚きです)

    そんなこともあって、彼や協力者たちの尽力で2010年に死刑判決相当の事件では時効が撤廃されることになりました。

    さらに、北海道図書館職員が行方不明になったのを、事件性がないという警察に、状況から違和感を感じた清水氏が調査をした結果、殺人事件だとわかった・・など清水氏の調査能力は警察署員が束に立ってもかなわないという活躍ぶりですが、これは逆に言えば、警察上層部に清水氏のような事件の青写真を描ける人物が存在しないために、潤沢な人手を勘違いの方向に振り向けて時間と労力だけを食いつぶして、結局は事件が解決しないという流れではないかと想像します。

    つまり、現場の指揮官、おそらく課長クラスの人事に問題があるという風にも考えられます。

    一言で言えば、住民のためになっていない警察組織の弊害こそが諸悪の根源で、ここにメスを入れない限り、上層部を見ながら仕事するだけの使えない警察官が跋扈し続けることでしょう。

  • 清水さんは間違いない。尊敬しています。

  •  一昨年の力作『殺人犯はここにいる』で読者の度肝を抜いた日本テレビ報道局記者が、これまでかかわった調査報道から生まれたエピソードを綴った本。「記者人生の集大成」(本の惹句)であり、「ベスト・オブ清水潔」ともいうべき一冊だ。

     『殺人犯はここにいる』で追った「足利事件」(菅家利和さんの冤罪事件)や、著者のもう一つの代表作『桶川ストーカー殺人事件 遺言』の舞台裏についても、それぞれ一章を割いて紹介している。
     ほかにも、故郷のブラジルに逃げた強盗殺人犯を現地まで追いつめていく話など、どの章のエピソードも執念の追跡ぶりがすさまじい。真実を追い求めるためにここまで徹底的に取材するジャーナリストが、ほかにいるだろうか。著者の記者魂やよし。

     エピソード集として読んでもバツグンに面白いし、体験的・実践的ジャーナリズム論としても読みごたえがある。

     最終章の「命さえ奪った発表報道――太平洋戦争」だけはやや異質で、戦時中の「大本営発表」に翻弄された一組の男女(婚約者が特攻隊員となり、結婚を目前にして戦死する)の悲恋を追ったもの。
     これは元々ドキュメンタリー番組のための取材だが、のちにテレビドラマ化・マンガ化もされたという。それもうなずけるドラマティックな話で、涙なしに読めない。

  • 調査報道、あまり聞き覚えのない言葉かもしれない。
    ドキュメンタリーだけが持つ真実の重み。
    被害者や遺族、関係者の心の叫びが聞こえて来ます。

    桶川ストーカー殺人事件、
    冤罪・足利事件、
    箱館ハイジャック事件、などなど
    筆者が携わる事件は、非常に多岐にわたる。

    様々な事件を通して、真実が浮かび上がる。
    そこには、人間の本当の姿が、...

    何が筆者をそこまで突き動かすのか?
    やはり、そこには、悲しむに沈む人々を救いたい、という真摯な気持ちがあるのではないか。

    最後の太平洋戦争の大本営発表の話。
    伊達智恵子さんと穴澤利夫さんの話には、涙が止まりませんでした。

    ぜひ一度読むべき本と思います。



  •  おかしいものをおかしいって伝えるのは、難しい。気づいたら孤立無援になってたりする。
     おかしいと思うことなんか山ほどある。これをおかしいと言わなかったら、自分が自分でなくなってしまうと思うようなことだってある。そんなのを仕方ない仕方ないってつぶやきながら飲み込む自分になるなんて、昔の自分には教えられない。大事な部分を削りすぎて、誇りも消えそうだ。
     清水さんの本は、まぶしい。
     この人に会ったこともないのに、この人の記事は信頼できると感じる。
     この本は、調査報道の裏側を書いた本だけど、それはそのまま、信頼を得るために必要なことは何かってことだ。
     ひとつずつ、やってみようと思う。せめて自分くらい自分を信頼してやりたい。

  • 真実を見極め、司法を恐れず、真犯人を追い詰めていく姿はまさに現代の必殺仕事人。
    犯人が検挙されたところで失われた命が戻るわけではないが、命を奪われた上にありもしない悪評を言いふらされて、犯人は野放し、こんなことが許されるわけがない。
    マスコミなんてくだらないものだと思っていたが、中にはこういう卓越した調査をされている方もいるのだ。
    もっとも、最近の彼はどうも思想が偏りがちになってきたようで残念なのだが、この本は一見の価値あり。

  • 清水さんの本は2冊ほど読んでいたので伝えたいであろうメッセージは重複しているものも多かった。ただ、事件の取材ごとに章が組まれていたので、知らなかった事件・出来事の概要を知ることができたのは良かった。
    以下印象に残った箇所。

    時効が存在する理由:
    本気で公訴時効を潰してやりたくなった。
    私は不条理を報じ続けた。
    当初は周囲の感心も薄かった。「法律だから仕方ない」中略。
    しかし法律とは人間が人間のために作ったものだろう。「おかしい」と思えば帰ればいいし、必要なら追加、不要ならば削除すればいい。日本の刑事訴訟法は百年以上、ほとんど変わっていなかった。さらに先進国の多くは、重大事件に時効はなく、あってもすでに廃止されていた。

    おわりに:
    人が正確な判断を行うには、まずは精度の高い情報を持つことが必須だ。そしてそれを分析し、最後に「正しい」とか「おかしい」とか判断することになる。
    →清水さんの本を読んでつくづく感じたのはメディアを鵜呑みにせず自ら情報を集めることが大切。情報化社会になって理解をしていたものの、ようやく腑に落ちた気がする。

  • 東2法経図・開架 070.4A/Sh49d//K

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著者プロフィール

昭和23年生。皇學館大学学事顧問、名誉教授。博士(法律学)。
主な著書に、式内社研究会編纂『式内社調査報告』全25巻(共編著、皇学館大学出版部、昭和51~平成2年)、『類聚符宣抄の研究』(国書刊行会、昭和57年)、『新校 本朝月令』神道資料叢刊八(皇學館大學神道研究所、平成14年)。

「2020年 『神武天皇論』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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