木洩れ日に泳ぐ魚

著者 :
  • 中央公論新社
3.22
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本棚登録 : 1840
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  • Amazon.co.jp ・本 (263ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120038518

感想・レビュー・書評

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  • 引っ越し前夜。この夜を最後に別れる2人の男女は、1年前の登山で事故死した男性の死について話し始める。あれは本当に事故死だったのか?

    話が進むにつれて出てくる新たな事実と、そのたびになんども変化する「真相」。
    最後にふたりの「関係」の行き着く先は。

    二転三転して上書きされる物語の最後にたどりつく「真相」が、結局は推測の域を出ないのがちょっと残念。だけど、そこにたどり着いたときに女性に起こる大きな「変化」がこの話の最大のクライマックス。

    それはそうとして…
    文庫本の表紙を見て「この本読んだことある気がする」と思って、読み始めて「やっぱり読んだことある気がする」と思ったけど、結局細かいことは覚えていなくて、最後まで「どうなるのだろう??」と思いながらあっという間に読んだ。

    読んだっぽい本をすっかり忘れているのって、得しているのか、損しているのか。

  • ページをめくるたびに感じる不穏な空気に劇的な展開を予想していたので、平穏な展開に拍子抜けしてしまった。ただし登りはきつめだが、下りはジェットコースターのように謎が解けていくのが気持ちいい。
    男性が一枚の写真について語り始め、最後は女性がまた一枚の写真について語る。まるで糸を手繰るように男女の視点が入れ代わり、止まった記憶が甦ってゆく。そのたびに距離感が近づいたり離れたりする様を眺めるのが楽しい。

  • 千浩と千明。二人は一緒に住んでいた。そして今日が最後の日。引っ越し業が荷物を持って行って、後は千明のスーツケースだけ。そのスーツケースを挟んで、二人は、今日は長い夜になるだろと思っていた。お互い、あのことを相手から聞き出したいから。二人は離れ離れに育ち、ある時兄妹だと知った。二卵性双生児。大学の時に出会い、そして兄妹だからと、親を説得して一緒にアパートで生活をしてきた。それが明日から、別々の道を行く。その前に、あの時の出来事を…。

  • さほど長くない小説なのに
    数年間の出来事や体験がぎっしり。
    最初から最後まで目が離せない一冊でした。

  • まずお互いの立ち位置さえ曖昧でお互いに疑心暗鬼な男女が引っ越し前夜、蓋をしていた記憶を辿ることで自分を見つめ直し謎が解き明かされていくモヤっとした物語。

    気になったフレーズ

    穏やかな生活、地に足のついた、常識的な生活。それが果てしのない檻に思えた。どこまでも続く、優しさと常識という柔らかい縄に絡め取られた、見えない檻。

    障害があるからこそ燃え上がる恋。障害が障害でなかったと知った途端これほどまでに気持ちが冷めるとは。

    私が彼を好きだったのは、彼が私を好きだったから。私は私を好いてくれる彼が好きだったのであって、彼を好きだったから付き合っていたわけではなかった。
    ただ好いている方は相手が自分の好意に真に応えているのかそうでないかを瞬時に見破るもの。
    なるほど心中というのはある意味の成就。それぞれの命をもって子孫を残すことを否定するのだから。

  • 読み進むにつれて謎が解明されていく話でした。舞台みたいで、読みやすくて一気に読んでしまいました。

  • わずかひと晩の時間の流れの中で、こんなにもひとの感情の移り変わりを描いていく作品。
    読み始めはヒロ目線で読んでいたが後半になればなるほどアキ目線に移っていく。
    物語が真相に近づくにつれ、予想だにしなかったことがどんどんと溢れてきて物語を加速していく

  • 描写や表現力がすごいなと感じたけれど、とにかく暗い。陰鬱になるお話だった。

  • 話は全く異なるけど映画メメントをなんとなく思い出した。
    くらい部屋の一角のスポットライトから徐々に明かりが広がり、全体像が見えてくる感じ。
    一度さらされた姿を見てしまうと、見えなかった時に感じていた姿は別物だったと気づく。

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著者プロフィール

1964年宮城県生まれ。92年『六番目の小夜子』で、「日本ファンタジーノベル大賞」の最終候補作となり、デビュー。2005年『夜のピクニック』で「吉川英治文学新人賞」および「本屋大賞」、06年『ユージニア』で「日本推理作家協会賞」、07年『中庭の出来事』で「山本周五郎賞」、17年『蜜蜂と遠雷』で「直木賞」「本屋大賞」を受賞する。その他著書に、『ブラック・ベルベット』『なんとかしなくちゃ。青雲編』『鈍色幻視行』等がある。

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