怒り(下)

著者 :
  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (254ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120045875

感想・レビュー・書評

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  • 人を「信じる」ことをテーマに、4つの視点から同時に進行する物語は、微かな光だけを残して哀しい結末に終わる。
    うーん、なんてやり切れないストーリーなんだ。哀しすぎる。

    ミステリー仕立てで進んだ割りには肝心の犯人の動機や心情、人物背景などがわからないままで、正直消化不良なのだが、しかしそれを補って余りある語りのうまさには参る。
    それほど多くを描いているわけではないのに、気づけば登場人物たちの切ないやりきれない思いにどっぷり浸かり涙していた。吉田氏の、この過不足のない絶妙な語りにはいつもしてやられる。

    そして実は一番嬉しかったのは、上巻からさほど間をおかずに下巻がきたこと!
    話忘れてなくてヨカッタ〜。やれやれ。

  • 下巻です。
    (かなりネタバレしちゃいます)
    同時進行で関連性のない3つの話が進み(刑事の話も合わせれば4つか)、それぞれに身元の知れない余所者が登場します。
    一人は娘の婚約者として、一人はゲイの恋人として、一人はペンションの従業員として。

    その余所者を、それぞれ彼と親しい人たちが指名手配中の殺人犯かと疑い、苦しんだり悩んだりするお話で、ミステリというよりは、人を信じることの難しさ、みたいなものに焦点に当てています。
    それはそれでいいんですけど、ミステリに走らず重いテーマに挑戦するなら、もうちょっと文章力を磨いた方がいいかも・・・なんて思ってしまいました。
    読みやすいとも言えるのかもしれませんが、テーマに対して筆が稚拙で軽い印象でアンバランスな印象を受けました。

    それから、読み手としては、この3つの話は何かしらリンクしているだろうと凝った構成を期待したし、それ以上に誰が犯人か気にしながら読んでいるのですから、最後殺人の動機や背景位はきっちり描いて欲しかったです。(結局3つの話は何の関連性もなし)

    著者の向いてる方向性と違うのは分かるけど、いろんな面で中途半端な印象が強かったな。

  • 信じていながら、疑わざるを得ない状況…。 被害者でも加害者でもない。 しかし事件の周辺にいる人々の中に生まれる、痛み、怒り。 下巻から物語へ一気に引き込まれた。 『悪人』以上だった。

  • 上下巻を一気に読みました。
    吉田さん、すごいです。
    事件の真相がわからないままなのがスッキリしませんが、最近読んだ本の中では一番です。
    悲しいけれど、読後感は良かったです。

  • 怒りにはすごいエネルギーがあるのだ。
    辰哉はその怒りのエネルギーを爆発させてしまった。
    どうしてでも泉を守ってあげたかったのだということはわかるけれど、これはあんまりな結末。

  • こんな繋げ方、絡ませ方、予想外。最後まで一気だった。面白すぎた。

  • 今日からジメっとしてきたなw

    ってな事で吉田修一の『怒り 下巻』

    上巻での3人の殺人犯の容疑者のその後…。 ⁡
    ⁡⁡
    ⁡読み進めるうちに段々と犯人を追い詰める錯覚が起こる感じw

    3つの容疑者の点が線に繋がって行くのかと思いきや!

    3つの怒りの感情と言うのか、怒りにも色々な怒りが有るなぁと勝手に感じた。

    悔しい怒り
    悲しい怒り
    後悔の怒り
    意志を貫き通す怒り
    信じきれなかった怒り
    信じて貰えなかった怒り

    ソースなイカリ
    長介ないかりや(笑)

    終盤からのドバッーとした、それぞれの感情の洪水が何とも切ない怒りに…。 ⁡
    ⁡⁡
    ⁡ええ本じゃった。

    2015年36冊目

  • 映画化されているが観ていない状態で
    キャストだけ頭に浮かべ、読み進めた。

    上下分かれているが先が気になり、
    あっというまに読み終える。

    自分の大切な人が殺人犯に似ている。
    信じたい、、
    しかし確固たる自信がない。結果疑う。

    自分自身素性が分からない相手と
    あまり知り合うこともないような狭い世界で
    生きており、作中登場人物のような葛藤を
    したことはこれまでにない。

    しかし自分であっても疑ってしまうのだろうな、
    自分の自信のなさが出てしまうのだろうな
    と考えさせられた。
    並びに、信じていた人の自分の全く知らない
    生々しい一面を見てしまうと
    この怒りは抑えられるのだろうかとも
    思わされた。

    一度疑い出すと、今までの様々なことを
    深読みし、自分の中で勝手に創り出し
    負のスパイラルに陥る。
    しかし、安易に信じて傷つきたくもない。
    信じることの難しさを考えさせられる。

    吉田さんの別の作品もまた読んでみたい。
    また、映画も観て見たい。

  • 「2015本屋大賞 6位」
    九州産業大学図書館 蔵書検索(OPAC)へ↓
    https://leaf.kyusan-u.ac.jp/opac/volume/1155930

  • この小説を読む前にとても生々しい夢を見た。それは、私にとって身近なひとが人殺しをする夢で、夢の中で、なぜ私は彼に優しくできなかったのだろう、とひどく後悔していた。彼の薄暗さに近づく勇気がなくて、よく知りもしないままに、なんとなく怖いなぁという思いで、その人の心に触れることができずにいた。心に触れる勇気があれば、そんなことは起きなかったのではないか、と思っていた。

    小説を読んだあと、人が抱える影と向き合うというところで、田代と愛子と洋平の物語が自分の見た夢と少し重なった。影に対する妄想が膨らむほどに、その人の真実に近づくのは難しくなる。でも、一度、田代を信じきれずに裏切ってしまった体験が、愛子と洋平に何が何でも自分たちの幸せを信じて生きようというスイッチを押させたような気がして、この3人の物語が強く私の中に残った。

    誰にも見せていないような影を抱えながら、人はどのように生きようとするのかということと向き合う小説だった。私がこの小説に惹かれて手に取ったのも、誰よりも私自身の中にある人には見せてこなかった自分の影に触れてあげたいからなのではないかと思った。

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著者プロフィール

1968年長崎県生まれ。法政大学経営学部卒業。1997年『最後の息子』で「文學界新人賞」を受賞し、デビュー。2002年『パーク・ライフ』で「芥川賞」を受賞。07年『悪人』で「毎日出版文化賞」、10年『横道世之介』で「柴田錬三郎」、19年『国宝』で「芸術選奨文部科学大臣賞」「中央公論文芸賞」を受賞する。その他著書に、『パレード』『悪人』『さよなら渓谷』『路』『怒り』『森は知っている』『太陽は動かない』『湖の女たち』等がある。

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