- Amazon.co.jp ・本 (301ページ)
- / ISBN・EAN: 9784120047176
作品紹介・あらすじ
その朝、双子の老姉妹が手に手をとり崖から飛んだ。葬儀のため集まった家族は、武家屋敷の床下から四体の遺骨とある秘密を掘り起こす…怒涛のカタルシスを呼ぶ、淫靡で切ない長篇ミステリー。
感想・レビュー・書評
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家族の秘密と言うには事が大き過ぎる。
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2015.9.9.読了。人喰いと呼ばれる一人の男から始まった家。人喰いは元下級武士の養子となり、そしてその地を治める藩の家老だった男を罠にはめ、その家を乗っ取る。人喰いは五十坂(いさか)と名乗っていた。その子孫の代となり公一郎の父親の代になった時は、商才があった人喰いの財産はほぼなくなりなんとか残った土地や家を食いつぶして成り立つ家になっていた。公一郎にはワガママ放題に育って瑠璃子という妹がおり、悪賢い瑠璃子の罠におち、公一郎はのちの妻、そして双子の娘、蝶子、蘭子と数奇な運命に導かれていく。話は、公一郎の時代とその娘、蘭子が七十を越え突然、自殺した時代を交互に行き来しながら、五十坂家の様々な人々の視点から五十坂家の呪われたというべき百年を振り返り謎をあぶり出していく。
凄く、面白かった。ページを繰る手が止まらなかった。最初、白骨が出てくる場面で誰が殺されたのかはわかっていたが、最後の場面が物悲しく、心に染み入る感じだった。新聞の書評ではイヤミスと紹介されていたが、イヤミスとは思わなかった。事件の目撃者とならざるを得なかった子供が大きすぎる秘密を抱え、それからようやく解放される場面に思わず涙が出た。 -
古い武家屋敷の双子の老姉妹、床下の秘密、人食いと呼ばれた一家の物語。読後感悪し。ごめんなさい、私はこれダメです。
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2021/01/17
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相関図とにらめっこ。
現在の由羽と過去の公一郎、璃理子、二葉の視点から、人喰いの子孫と言われる五十坂家の秘密が明らかに。
ミステリ的にはどの殺人が起きて、誰が殺したのかは明らかだけど、全体的に漂う五十坂家のドロドロした感じの話が面白かった。 -
人はだれでも、生まれながらに不幸を背負っている。
誰かにわかってもらいたいと願い、けれども誰かのことを100パーセント理解するなんて、いくら頑張ってもあり得ない。
ある朝、双子の老姉妹が揃って崖から身を投げた。葬儀と遺品整理のために集まった親族は
屋敷の床下から複数の遺体を見つけ掘り起こした。誰の遺体なのか、この一族に何があったのか…?
読んでいる間ずっと『鬼畜の家』という言葉が頭にありました。(作者も内容も違いますが)
綺麗な終わり方だけど、怖いものは怖い。 -
2018.02.12 図書館
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出だしが面白かっただけに、内容的にはちょっと物足りなかったかな。
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「人喰い」と言われた人物の子孫の物語。
人を騙し、おとしいれ、殺人を犯した人間。
言葉とは行為そのものを指すことがあるが、比喩的に使われることもしばしばある。
五十坂家の人々は「人喰い」の呪いを自らにかけ、自ら進んで「人喰い」になっていったのではないだろうか。
二葉は人と違うことについて語っている。
「生まれつき人と違うってことは、死ぬまで孤独を抱えて生きるってことだからね。(中略)そんな風に生まれてしまったら、孤独と折りあいをつけて生きていくしかないんだからね」(228頁)
その言葉は「人と違う」子を持つものとして理解できるような気がする。
しかし二葉は「どうせ僕たちは人喰いの子孫だ」とし、「グロテスクに生きていくしかないのだろう」と考える。
それは違うだろう、と私は反論したい。
人が皆互いを100パーセント理解できないという不幸を抱えて生きているのなら、皆どこかグロテスクな存在であり、それは人喰いか否か、呪いかどうかに限られたものではない。
生きている間は互いを理解しあえない、だから死ぬ。
それが「愛」とは到底思えない。
むしろその対極にあるものではないか。
全知全能の神がいるのなら、どうして神はこんなに欠陥だらけの愚かな「人間」を作りたもうた?
それは、「愛」が互いを理解できないところを出発点としているからではないか。
不完全だから、愛を求め、与えるために人は生きているんじゃないのかな。
違うかな、二葉。
どうかその口で、答えておくれ。