黄色い家 (単行本)

著者 :
  • 中央公論新社
3.85
  • (445)
  • (747)
  • (476)
  • (97)
  • (16)
本棚登録 : 10340
感想 : 766
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (608ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120056284

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み

  • 花の気持ちわかる。すごく共感できた。
    周りが分かってくれない、周りの無能感
    そしてその周りのひとからみた花
    これはリアルにあるある

    いろんな人や考え方があるし、ズレから
    道を踏み外してとんでもないことにも
    なるんだなと
    罪の意識がどんどん薄くなるというのも
    ほんとにリアルだなと感じた

    本で客観的に自分がみて、考えるものがありました。

  • 刊行当初から読みたくて、いよいよ単行本で手に入れたので読んでみた。
    とにかくしんどい物語でした。
    幼い頃から父の居場所は不明、ホステスの母親とボロボロの”清風荘”に住んでいる主人公の花が、ある日いきなり家にいた母親の友達の黄美子と出会う。
    とにかく金は人を狂わせるなぉと。
    この世の闇は、頭が悪いだけで悪人でない人を利用するんだなぁと。
    花、蘭、桃子、黄美子の4人で、スナックをやったり、カード詐欺をやらされたりと、目まぐるしく進んでいく。
    実家の清風荘では”トロスケ”にお金を盗まれるし、スナックでようやく安定したと思えば借金を抱えた母親に無心されたり、とにかくお金による悲劇に巻き込まれてしまう花が可哀想。
    そんな中、生活が苦しくなっていく時期に他の3人は全然真剣に向き合おうとしないし、自分だけが今後を心配しているという状況は、読んでいてこちらまで胸が不安で苦しくなりました。
    それにより追い詰められた花は他3人に奴隷にしたかのような行動は、人が狂ったら恐ろしいと思いました。
    第一章で想像する黄美子と、読み終えた後で思い浮かぶ黄美子で、ここまで全く異なる人物像となるのも凄い。

  • 幼少期から恵まれずに育った花が最も多感な青春時代に直面した、金と仕事の話。資本主義では金は多く持ってる人の中でぐるぐると周り、持ってない側の人が成り上がることの難しさをこれでもってほど教わった気がする。目を背けたくなるほどのダメダメ具合は『夜が明ける』と同様のものがあると思った。

    黄美子さんがいろいろできないことがあるところ、以前『ケーキの切れない非行少年たち』を読んだことを思い出した。そもそも状況を「認知」して、「判断」、「行動」する、という当たり前ができない人は思っているより多いんだよなぁ。

    がーっと書くところはあえて改行せず感情がまとまってないことを表す、大胆に改行するところはする(映水との会話のシーン)という文体で、花の思考が整理されていない様子を表していたように感じた、母との会話のシーンもすごく読みづらかったけど何故かイメージは容易にできた。

    ----------
    それは多分結婚とか親とか家族でも同じことで、それがどんな関係であったってその金を稼いだやつはそれが自分の金であるということをぜったいに忘れないし、金のある自分が自分よりも金のないやつに自分の金を使わせてやっているんだと心のどこかで思っているはずなのだ。

  • 生育環境によって、こんな人生になることもあるのかなと考えさせられた物語。普通に教育受けて、仕事に就いて、家庭を持つって普通だけど、必然ではないんだろうね。幸せってなんだろうな。

  • これ…川上さんの創作なんですよね?実際にあった事件を基に…とかじゃないんだよね???
    すごすぎて途中胃を痛めながら読みました。圧巻の600頁超。ラスト賛否あるのかもしれないけどわたしはすごく好き、記憶が呼び覚まされ、共依存というか…コロナ禍で孤独ななかわたししかいないんだが強く出ちゃってる感じ、好きです。
    記憶に蓋をして、それが開かれてからの回想なんだけど凄まじかった。また読みたいかって言われたらノーだけど、この時代にこれを読めてよかったです

  • 黄色は幸せの色だ。
    冬が終わり、春を連れてくる幸せの色だ。そんな黄色に守られていたはずの家の、苦しみに震える。
    ただただ、幸せになりたかっただけなのに。ただただ大好きな人たちと一緒に暮らしたかっただけなのに。
    15歳で家を出た花。毒母のもと、絶望の中で生きていた自分に優しさをくれた黄美子と、初めて友だちになった蘭と桃子。四人で毎日一生懸命お金を稼いで暮らしていたはずなのに。
    どうしていつもうまく行かないのだろう。
    持つ者と持たざる者、騙す者と騙される者、そして、逃げ出せる者と逃げ出せない者。
    花がすがった一本の細い糸。自分を掬い上げてくれた黄色い糸。その糸の先にはいつも黄美子がいた。いや、いると思い続けていた花の、その必死の思いが切ない。
    生きるために犯罪に手を染める。いけないことだとわかっていても現実味のない、その犯罪に麻痺していく花の心。人はこうも軽々と悪の坂を転げ落ちていくものなのかと思う一方で、「悪」の意味を深く考える。
    誰のための悪。何のための悪。
    大好きな人を、仲間を必死に守ろうとしたが故の「悪」。
    花はどこで間違えたのだろうか。どこからやり直せば幸せになれたのだろうか。
    誰の子どもとして生まれたのか、誰に育てられたのか、によって人の運命が決まる残酷さ。
    黄色は幸せの色。そう思っていたけれど、この小説を読んでから、どうしても黄色の後ろにある影を思わずにはいられない。
    花の人生を変えた黄美子とは、いったいどういう人だったのだろう。とらえどころのない黄美子のカケラが読み終わってからも自分の中に澱の様に残っている。

  • 『黄色い家』―罪と生きる若い女性たちの物語

    『黄色い家』は、川上未映子氏が送る、惣菜店で働く花と、過去に共に疑似家族のように暮らした黄美子を中心に展開するクライム・サスペンスです。読売文学賞小説賞を受賞したこの作品は、若い女性たちが生き抜くためにカード犯罪に手を染める過程と、その後の人生を描いています。犯罪を犯すことと、悪人であることは必ずしも等価ではない――この物語は、読者にそんな深い問いを投げかけます。

    作品は、十七歳の夏に「黄色い家」で共同生活を送る少女たちの、危ういバランスの上に成り立っていた日々と、ある女性の死をきっかけにした共同生活の崩壊を通じて、人が罪を犯す理由に焦点を当てています。彼女たちの物語は、懸命に生きることと、その過程で犯してしまう間違いについて、読者に考えさせるものがあります。

    『黄色い家』を読むと、犯罪に手を染めた若い女性たちの背景には、それぞれに複雑な事情があり、彼女たちが社会の枠からはみ出してしまう歯がゆさやつらさが浮かび上がってきます。川上未映子氏は、これらの登場人物の内面を丁寧に描き出し、彼女たちの行動に対する世間の視線をも問い直します。

    2024年の本屋大賞ノミネート作品の中でも際立つ存在の『黄色い家』は、クライム・サスペンスという枠を超えて、人間の心の奥深さを探る作品です。この物語は、罪と向き合い、そこから学ぶことの重要性を示しています。本屋大賞の発表が待ち遠しい読者も多いでしょう。『黄色い家』は、罪と生きることの意味を考えさせる、力強いメッセージを持った作品です。

  • ミステリーでもなく、どんでん返しもない。わくわく楽しい話でもない。どちらかといえば、モヤモヤしっぱなし。
    それでも惹き込まれた。

    所謂底辺、恵まれない家庭環境で育った花ちゃん。頭の回転は早いし努力家。真面目で、思慮深い。一生懸命なのに報われない。どこが間違ってたんだろう。権力!?を持つと変わるのかな。


    キレイ事をいえば、どんな家庭環境でも、希望を忘れず誠実に頑張れば幸せになれる。
    だけど、正しい方向に導いてくれる人って必要なのかも。その方法の存在すら知らないと何も出来ない。救いを求めることすら出来ない。切ないな。

    これ、花ちゃん目線で読んでるから鬱状態も自分ごとのように堪えるけど、桃子や蘭目線だと全く違うだろうな。蘭が案外1番まともな感覚かのかも。

    はっきりしない終わり方、普段は苦手だけど、これはこれで余韻がいい。花ちゃんの事、忘れてるし一緒に行かないって返事、失笑。
    深く考えすぎちゃう人は、大変だな。

    何がどうしても、詐欺は正義にはなり得ない。ただ、小説だしね。
    ヴィヴさんの『世の中、出来るやつがぜんぶやることになってんだから、考えたって無駄』『苦労も出来ない馬鹿よかまし』よくも悪くも妙に引っかかった。

  • 黄美子と主人公花の描写が鋭く黄色への執着が意味深でお金への執着がリアルでした。大長編500ページごえの傑作をあなたも堪能して下さい。

  • 読みながら胸が痛くなったけど、逞しく生きていく主人公、花の行く果てを知りたくて完読。

    生活環境に難ある花。
    黄美子に出会い、スナック『れもん』を開店し明るいと思われた未来に向かってがむしゃらに生きる花。

    だが、れもんを続けられなくなりイケナイ仕事にも手を染めてるのに犯罪だとも分からず、ひたすらお金を貯めるために奔走する姿がどうにも切なくなる。

    黄色=金運
    黄美子と友人と住み始めた『家』黄色い物コーナーを作り、崇める?とことか、明るい未来を信じていたんだなと思うとね…

    川上未映子さんの他の作品も読みたくなりました。

全766件中 81 - 90件を表示

著者プロフィール

大阪府生まれ。2007年、デビュー小説『わたくし率イン 歯ー、または世界』で第1回早稲田大学坪内逍遥大賞奨励賞受賞。2008年、『乳と卵』で第138回芥川賞を受賞。2009年、詩集『先端で、さすわ さされるわ そらええわ』で第14回中原中也賞受賞。2010年、『ヘヴン』で平成21年度芸術選奨文部科学大臣新人賞、第20回紫式部文学賞受賞。2013年、詩集『水瓶』で第43回高見順賞受賞。短編集『愛の夢とか』で第49回谷崎潤一郎賞受賞。2016年、『あこがれ』で渡辺淳一文学賞受賞。「マリーの愛の証明」にてGranta Best of Young Japanese Novelists 2016に選出。2019年、長編『夏物語』で第73回毎日出版文化賞受賞。他に『すべて真夜中の恋人たち』や村上春樹との共著『みみずくは黄昏に飛びたつ』など著書多数。その作品は世界40カ国以上で刊行されている。

「2021年 『水瓶』 で使われていた紹介文から引用しています。」

川上未映子の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×