日本政治の対立軸: 93年以降の政界再編の中で (中公新書 1501)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (241ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121015013

作品紹介・あらすじ

戦後日本の最大の争点であった防衛問題は、冷戦の終結・五五年体制の崩壊とともに政党間の対立軸としての意味を失った。90年代最大の課題であった「政治改革」は政策不在の状況で追求されたのである。その中にあって唯一の明確な政策パッケージは80年代の中曽根行革の流れを継ぐ「新自由主義」であるが、これに対抗する一貫した議論は未だ存在しえていない。細川護煕、小沢一郎、橋本龍太郎等の政策を分析し現代政治の課題を問う。

感想・レビュー・書評

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  • いや細かくて難しい。

  • 再読です。橋本行革の部分を読む。時代の気分と橋本首相の理念が一致していなかったそうです。橋本首相はリベラルであり、それに対して、時代の気分は自由主義的です。それが、橋本首相の失敗の原因だそうです。

  • 現・同志社女子大学現代社会学部教授で(前・京大法学部)の大嶽秀夫による、55年体制崩壊後の政策対立軸変化と橋本行革評価についての論考。『再軍備とナショナリズム』『戦後政治と政治学』『日本型ポピュリズム』などの著作で知られている。

    【構成】
    前書き
    第1部 政界再編の中の政策対立軸
     第1章 55年体制下における政策対立
    第1節 戦後日本政治の基本対立軸としての防衛問題
    第2節 1955年体制下での新党の誕生と従来の対立軸への対応
    第3節 利益政治と利益政治批判
     第2章 政界再編の中の対立軸
    第1節 新保守主義による対立軸再編の試み(1)-1970年代と80年代
    第2節 新保守主義による対立軸再編の試み(2)-小沢一郎と新生党
    第3節 新保守主義による対立軸再編の試み(3)-細川護煕と日本新党
    第4節 第三極としての「リベラル」
     第3章 「第二」の政党-90年代に登場した2つの「民主党」
    第1節 「民主党」をとりまく背景
    第2節 党をつくる政治過程
    第3節 「民主党」の特徴
    第4節 「政治改革」の時代の「民主党」
    第2部 平成不況の中の橋本行革
     第4章 1990年代中期における日本の経済社会
    第1節 世界的な新自由主義の流れの中の日本
    第2節 日本における新自由主義的改革の逆説的帰結
    第3節 90年代の大競争時代における日本経済
    第4節 90年代日本におけるリストラの遅れ
     第5章 「橋本行革」の登場、展開、挫折
    第1節 ネオ・リベラルな風潮の中の橋本龍太郎
    第2節 橋本行革の登場と展開(1)-日本版金融ビッグバン
    第3節 橋本行革の登場と展開(2)-省庁再編
    結語

    上記の通り、本書は2部構成となっており、前半が民主党設立に至るまでの政界再編過程と各党の政治的立ち位置の確認、後半が1996年から1998年の橋本政権下で実行された「橋本行革」実行の背景分析と評価を行っている。

     55年体制崩壊前後において、かつて保革が華々しく論戦を繰り広げた防衛問題が、政治対立の争点ではなくなり、新保守主義を掲げる新党が乱立し、新保守主義における政策立案が争点化するかに見えた。自民党の政権復帰と社会党の解体という政界再編の中で、野党の離合集散の末に2つの「民主党」が誕生することになった。
     この激しい政界再編の動きの中で有権者は既存の政党=成熟したプロ政治家に対する忌避感・不信感から、市民派が持つアマチュアリズムに「刷新」の期待をする傾向を筆者は指摘する。本書の言葉を借りれば、それは「遊び志向」での政権選択である。
     そして、新進党解党後の野党の寄り合い所帯である民主党がこの市民派アマチュアリズム・イメージを押し出しながら曖昧な「リベラル」を標榜することになったが、党の政策理念としては分裂気味であった。

     一方、1993年の下野から社会党を利用しながら政権与党に返り咲いた自民党においても、国民・マスコミが抱く自民党-官僚に対する不信感を払拭するべく、議員の政策立案能力の向上と官僚機構改革を志向した。

     しかし、「橋本行革」に対する著者の評価は辛い。首相のリーダーシップの取り方(外交イニシアティブの問題など)、政策実行のマネジメント能力、政策理念の国民への説明姿勢などが欠如していると言うのである。加えて、90年代の長引く不況の影響で極度に不健全化している財政の再建こそ、「橋本行革」の真の目的であったはずであったが、結局のところ省庁再編は「人員削減」という痛みをほとんど伴わず、本質的な行政効率化に寄与したかは疑わしいとされている。

     特に前半の「民主党」出現とその特徴については、2009年現在の政権与党となった民主党にもそれが引き継がれているだけに、「新保守主義」思想による改革路線がどのように修正されていくのか考える上で本書の内容は参考になるだろう。

  • ▼日本は2大政党制と言えるのだろうか。(新生)民主党の台頭後、政権交代も実現し、自由民主党との攻防は続く。しかし、ここで勘違いしてはならないのが、小泉政権時代の自民党が「小さな政府」を標榜したために、その対抗軸としての民主=リベラルのイメージが強く打つ出されることとなった。
    ▼しかし、リベラルといってもそれが経済の話となれば、それは市場自由主義であって「小さな政府」を肯定すものである。その点では、旧来の自民党は「大きな政府」を体現していた時期もあり、行政の分野ではスリム化を推し進めたものの、こちらが「保守」と呼ばれる実態である。
    ▼負担を減らし効率を上げることを目指すことを「悪」と言いたいのではない。だが、減らされた分の負担を「誰か」が肩代わりしなければいけないことを、私たちは自覚しなければならない。結局、この制度を確立はおろか模索もしないまま来てしまったために、現在の福祉政策は窮地に立たされている。
    ▼その変革の最初のチャンスは90年代であった。しかし、90年代とはまた、政治のプロフェッショナルへの離反の時期でもあった。もちろん、その雰囲気を作り出してしまった政治家にも責任はあるが、それを選んできた私たち自身の責任も小さくないと言わざるを得ない。このような流れの中、次のチャンスで「選択する」ことができるのは私たち自身でしかない。

  • 少し古いが、90年代の新党発生と解党は、主義・主張ではなく、議員の離散集合によって行われていた。そこには理念の違いではなく、感情的な好き嫌いで、離散集合が行われていたという指摘である。

    これは選挙民である国民のレベルが低いのか、今後は政策面での対立軸をうみだすことが必要であると指摘している。

  • 最近は「対立軸」がはっきりとしていないと書かれてますが、「対立軸」だけではなく、比較するもの自体が、はっきりとしていないような気がしますが。政治については、本来50年、100年を見越しての政策論議、政略構想が必要と思われるのに、現在は1年先も見越してはないのではないか。場当たり的な気がしてなりません。政治だけではなく、教育や企業まあ社会全般に渡って感じられるのですが、私だけでしょうか。

  • 105円購入2011-11-09

  • 1980年代以降の日本の政治史を分かりやすく解訳した本。書かれた時代は古いが、2011年の政治状況を読み解く際にも役立つ。

  • 60年代から90年代までの日本の政治の流れとその背景を簡潔に説明している。今の民主党の姿や政治姿勢、それに稚拙な発言を繰り返す政治家のレベルやモラルの低下の要因も理解できしまう。また、前大阪府知事の橋本氏の人気の裏側も読めてしまう。日本の政治の入門書としては良い内容です。

  • [ 内容 ]
    戦後日本の最大の争点であった防衛問題は、冷戦の終結・五五年体制の崩壊とともに政党間の対立軸としての意味を失った。
    90年代最大の課題であった「政治改革」は政策不在の状況で追求されたのである。
    その中にあって唯一の明確な政策パッケージは80年代の中曽根行革の流れを継ぐ「新自由主義」であるが、これに対抗する一貫した議論は未だ存在しえていない。
    細川護煕、小沢一郎、橋本龍太郎等の政策を分析し現代政治の課題を問う。

    [ 目次 ]
    第1部 政界再編の中の政策対立軸(55年体制下における政策対立 政界再編の中の対立軸 「第二」の政党―90年代に登場した二つの「民主党」)
    第2部 平成不況の中の橋本行革(1990年代中期における日本の経済社会 「橋本行革」の登場、展開、挫折)

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著者プロフィール

東北大学名誉教授、京都大学名誉教授。『現代日本の政治権力経済権力』(三一書房、1979年。増補新版1996年)、『アデナウアーと吉田茂』(中央公論社、1986年)、『自由主義的改革の時代──1980年代前期の日本政治』(中央公論社、1994年)、『戦後政治と政治学』(東京大学出版会、1994年)、『日本型ポピュリズム──政治への期待と幻滅』(中公新書、2003年)、『新左翼の遺産──ニューレフトからポストモダンへ』(東京大学出版会、2007年)など著書多数。

「2021年 『日本政治研究事始め』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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