物語 ストラスブールの歴史 - 国家の辺境、ヨーロッパの中核 (中公新書 2027)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (313ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121020277

作品紹介・あらすじ

世界遺産にも指定された旧市街をもつストラスブールは、ケルト人の集落に端を発し、ローマ→ゲルマーニア→フランク王国と西ヨーロッパの典型的な文明を経験した。その後、ドイツ、フランスによる争奪が繰り返されるなか、ルネサンス、市民革命、ナショナリズム、世界大戦など、ヨーロッパ史を象徴する出来事をすべて体現する。寛容と自由、排他主義と戦火-もっとも壮麗にヨーロッパ史を生きた都市の歴史を鮮やかに描く。

感想・レビュー・書評

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  • 図書館で借り読んだ本。
    ストラスブール、シュトラスブルク。
    フランス的、ドイツ的、
    ケルト的、ゲルマニア的。
    町のルーツとは、アイデンティとは。
    アルザス、エルザス。
    中央集権的、地方自治的。
    ライン川を中心に発展し、地理的に東西南北をつなぐ地域。
    現在は、EUの中心地のひとつ。
    新書でこのボリュームはすごい。

  • 新書にしては珍しくページ数が多め。
    それと物語の割には覚える項目が多いので
    難易度は高めとなっています。

    ドイツとフランス、イタリアと目まぐるしく支配された都市。
    そしてそのたびに順応していかねばならなかった苦労。
    もちろんそれはあの2つの大戦の時も例にもれませんでした。

    この本中にはユダヤ人が出てきます。
    ナチスが台頭する以前からやはりその職種ゆえに
    差別を受けていたようで都市のメインエリアに住むことは
    許されなく、滞在にも時間制限が設けられていたそうな。

    そしてWW2でも悲惨な状況となります。
    ある学術職に就いていた人もその一人で
    そういったたぐいのユダヤ人でないのにかかわらず
    戦況不利になったドイツ軍に銃殺されてしまいました。
    その詩が切ないんだよね…
    帰ってくることができなかったから…

    ただし、今はEUの議会がおかれている
    主要な都市ともなっています。
    (2つのうちの1つ)

  • ストラスブールは、現在はフランスの最東部、アルザス地域圏の首府。
    <a href="http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%A9%E3%82%B9%E3%83%96%E3%83%BC%E3%83%AB">Wikiの地図</a>をご覧いただければ分かる通り、本当に端っこです。

    現在は…と書きましたが、この街は独仏二大国の国境線が動くたびに両国の間で交互に領有されるという特異な歴史を有する。
    ストラスブールはフランス語読みですが、ドイツ語読みではシュトラースブルクという名も持ちます。

    982年 神聖ローマ帝国に帰属する司教都市シュトラースブルク成立
    1681年 ルイ14世に降伏、フランス領へ併合
    1871年 普仏戦争でのプロイセン勝利により、ドイツに併合
    1918年 第一次大戦の結果、フランスへ復帰
    1940年 ナチス侵攻、ドイツ占領
    1945年 第二次大戦終結、フランスへ解放

    南北に流れるライン川と東西の陸路が交わる交通の要衝ゆえに、早い時代から貿易・流通都市として商業が発達し、上述のように大国の狭間で翻弄される中で、言語・宗教が混じり合う独特の文化を育み、著者は「ヨーロッパ史の悲喜こもごもの、しかし豊かな色合いがまさしくフレスコ画のように沈着している」と表現します。

    そして、21世紀の今、この街には欧州議会・欧州評議会が置かれ、ヨーロッパ統合という大きなうねりの中で名実ともに大きな役割を担うようになっているのです。

    ストラスブールという街の歴史を辿ることで、数百年にわたり領地を巡って戦争を繰り返してきたヨーロッパの歴史を俯瞰することができる。
    同時に、諍いの歴史を超越してヨーロッパが一つになろうとしている、今という時代のダイナミズムを改めて実感できます。

    ストラスブールは、中世の早い時代から自治の体制を確立し、独仏の間を揺れ動く歴史に身を委ねながら、ドイツでもフランスでもない「アルザスの街」としてのアイデンティティを保ち続けてきました。
    そのことに何だか感動してしまいます。

  • 修学旅行の思い出に浸りたくて読んだ本。フランス国歌はここで誕生した。

  • 235||Uc

  • 一年以上かけて読みすすめ、実際ストラスブールに旅行しても読み終わらなかったヘタレぶり(翌々日のミュンヘンで読了)。もうちょっと近代についても言及して欲しかったかな。

  • ストラスブール。
    名前は聞いたことがあっても、どこかよくわからない方が
    多いと思う。
    フランスの端っこ、ドイツとの国境にある辺境の小都市だが、
    欧州全体から見ると中央部に位置し、
    EU議会の議場があり、本書の副題にあるように
    「ヨーロッパの中核」と言える、ユニークな都市である。
    ドーテの「最後の授業」の舞台となった、
    アルザス・ロレーヌ地方の都市、というと
    2大国の間で揺れ動いたストラスブールの歴史のイメージが
    湧く人もいるだろう。
    本書はそのストラスブールの、中世における都市形成から
    現代までの歴史を地域経済や2大国の政治状況・文化的対立等を
    中心に記している。
    で、新書の割には結構内容が詳細で、学術的側面が強い。
    都市の歴史の概略を知るにはちょっとマニアックな感じ。
    よくも悪くも学者の書いた本。

    あと、「国家の辺境、ヨーロッパの中核」って副題は
    言いえて妙であり、いい副題だと思う。

  • 特別に面白いということはありません。ストラスブルクの歴史を知りたい人には、必読書。

  • [ 内容 ]
    世界遺産にも指定された旧市街をもつストラスブールは、ケルト人の集落に端を発し、ローマ→ゲルマーニア→フランク王国と西ヨーロッパの典型的な文明を経験した。
    その後、ドイツ、フランスによる争奪が繰り返されるなか、ルネサンス、市民革命、ナショナリズム、世界大戦など、ヨーロッパ史を象徴する出来事をすべて体現する。
    寛容と自由、排他主義と戦火―もっとも壮麗にヨーロッパ史を生きた都市の歴史を鮮やかに描く。

    [ 目次 ]
    第1話 都市の起こり―ケルト人のまちから「シュトラースブルク」へ
    第2話 ドイツ的自由のなかの都市共和国―司教都市から神聖ローマ帝国自由都市へ(九八二~一六八一年)
    第3話 フランス的趣味、ドイツ的流儀―フランス王国自由都市の時代(一六八一~一七八九年)
    第4話 フランス国家のふところ―「マリアンヌ」とナポレオンの時代(一七八九~一八七一年)
    第5話 ドイツ「占領」と自治(喪失と再生)―「ライヒスラント」首都の時代(一八七一~一九一八年)
    第6話 揺れ動く魂―再フランス化と再々ドイツ化(一九一八~四五年)
    第7話 ドイツからの解放、ヨーロッパへの開放―再々フランス化の時代(一九四五年~)

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    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • 『物語 ストラスブールの歴史』(内田日出海、2009年、中公新書)

    フランス北東部に位置するアルザス地域のストラスブール。現在では、EUの欧州議会がおかれておりEUの政治都市となっているこの街の歴史はどのようなものであったのか。それはフランスとドイツの領有争いの歴史でもあった。

    本書は中世から現代までのストラスブールの歴史を詳細に記述している。

    (2009年11月26日)

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著者プロフィール

1953年、熊本に生まれる。早稲田大学政治経済学部卒業。経済学修士(早稲田大学)、歴史学博士(ストラスブール大学)。外務省専門調査員(在フランス日本国大使館)、成蹊大学経済学部教授を経て、現在、成蹊大学名誉教授。早稲田大学非常勤講師。
主要著書に『ヨーロッパ経済――過去からの照射』(共著、勁草書房)、『「ヨーロッパ」の歴史的再検討』(鈴木健夫編、早稲田大学出版部)、『物語ストラスブールの歴史――国家の辺境、ヨーロッパの中核』(中公新書)、『地域と超越』(谷澤毅・松村岳志との共編、春風社)、『国家の周縁』(田村愛理・川名隆史との共編、刀水書房)、『アルザス社会経済史』(刀水書房)ほか。

「2022年 『金と香辛料 中世における実業家の誕生』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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